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藻場・干潟等浅海域と陸水域における生態系機能評価と生息環境修復に関する研究(平成 26年度)
A study on evaluation of ecological function and restoration in coastal marine and freshwater habitats

予算区分
AH 地環研
研究課題コード
1214AH003
開始/終了年度
2012~2014年
キーワード(日本語)
浅海域,藻場,干潟,生態系機能評価,生息環境修復,水草,流域
キーワード(英語)
shallow sea, Seagrass bed, Tidal flat, Ecological function evaluation, Habitat restoration, Aqutic plant, Basin

研究概要

現在我が国では閉鎖性海域中長期ビジョン(平成22年3月発表)を通じて望ましい水環境のあり方が提言され,同時に地域における里海創生支援を通じて,流域を含む里海総合管理が推進されている。また,生物多様性基本法において地域での生物多様性保全戦略の策定が規定されている。
 本研究は,干潟・藻場等浅海域から河川等陸水域に至る流域圏としての里海において,地方環境部局および地環研に求められている安全快適で良好な水辺環境の形成という目的のもと,生物多様性地域戦略に資する生態系機能解明と生息環境修復技術に関する調査や評価を実施するものである。具体的には,田園・農村から都市に至る各地方の所有する豊富な事例や多様な現場において,生態系機能評価に有効な共通手法の精査および実施と相対的評価による診断,それらに基づき多様な改善手法からの賢明な選択を通じて地域に応じた必要な処方箋を示す手順作りを目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

国立環境研究所と地環研等は以下のように研究を分担し,地環研等は国環研からの助言や研究成果を得て,また地環研間での積極的交流を進め,本課題を遂行する。

1.標準化研究
生態系機能評価に関する研究成果を生かし,干潟・藻場や塩性湿地,低湿地における生態系機能の評価手法の標準化を目指す。平成24年度以降は,各地環研等のフィールドを活用して一次生産と有機物分解に関する共通試験法の簡易標準化を開始する。また,底泥からの汚濁負荷の制御と生物生息環境の改善に対する底質改善技術の有効活用について検討する。浅海域の藻場優占種となることが多い海草アマモやコアマモと,生息場を共にする競合海藻アオサについては,前者が浅海域の自然再生対象種として,後者は浅海域で爆発的増殖をする汚染指標種および侵入水生植物であり,各生息地を持つ地環研と情報交換と合同調査を実施し,生存戦略の解明を引き続き行う。また対象湿地の水鳥による利用を研究対象とし,水鳥の水質への寄与を評価する手法の標準化を進める。

2.生物の生息環境修復に関する課題
(1)富栄養化により環境浄化機能を喪失した尼崎港内人工干潟において,底質酸化と貧酸素化対策等の平成23年度までに得られた成果を通じ,平成24年度は底質改善と生物機能の回復による環境修復への方策を検討する。
(2)英虞湾沿岸の休耕地に海水導入することにより干潟塩湿地の再生を目指し実施している里海創生事業に関連して,平成24年度以降は生物生産性の向上効果について検討を行う。
(3)「酸素透過性に優れた膜を利用した酸素供給技術」をはじめとする底質の酸化技術について,室内実験を通じて有効性を確認し,流域に存在する複数の現場を想定しての野外実証試験を行う。
(4)「湖水−底泥間の酸化還元環境と栄養塩類動態の検討」として,底泥中の酸化還元電位の律速因子の探索と栄養塩類溶出の応答を検討し,測定技術および評価手法に関する情報の共有を図る。

3.藻場構成種の生態学的特性、移植と大量増殖
(1)「海草アマモ実生苗床シートの量産とその移植技術」に関する地環研間での技術支援を実施,移植済みの試験藻場に対する追跡調査も継続する。あわせて上記苗床シート技術の海草コアマモへの応用を検討する。
(2)コアマモ種子の発芽特性と発芽後の成長に必要な条件検討を通じて,平成24年度は種子を用いた移植用苗生産による再生技術の開発を進める。
(3)栄養生殖による海草コアマモの大量増殖技術の開発に向けた,コアマモ適正生育条件の野外試験の検討を継続する。

最終的には,各地のNPO等が行う生物生息環境の改善を目的とした藻場・干潟等の再生活動を技術的に支援するため,住民参加型の効果的な評価手法を検討し,1の評価手法の簡便化・迅速化を目指す。

今年度の研究概要

藻場干潟流域圏における生態系機能の評価,すなわち場の健康診断として,可搬型多波長蛍光光度計を用いた生産力と有機物添加法を用いた分解力に関する手法の精査と評価を引き続き実施する。一方,生物環境の評価として場の種多様性,機能群的生物分類や有用種・希少種・外来種に対する生息地好適指数(HSI)の算出といった手法検討と評価をあわせて実施する。田園・農村から都市に至る地方の豊富な事例や多様な現場における診断結果は,今後の保全や修復計画に対して賢明な選択として生かされ,地域事情に応じた必要な処方箋を示す手順作りに資する。

外部との連携

共同研究機関:茨城県霞ケ浦環境科学センター 湖沼環境研究室、 (公財) 東京都環境公社 東京都環境科学研究所 調査研究科、横浜市環境科学研究所 調査研究・きれいな海づくり担当、川崎市公害研究所 水質研究担当、(公財)ひょうご環境創造協会 兵庫県環境研究センター 水環境科、岡山県環境保健センター 水質科、広島県立総合技術研究所保健環境センター 環境研究部、山口県環境保健センター 環境科学部、北九州市環境科学研究所、三重県水産研究所 鈴鹿水産研究室、広島県立総合技術研究所 水産海洋技術センター 水産研究部、(社)アーバンネイチャーマネジメントサービス谷津干潟自然観察センター、以下: 本年度オブザーバー参加:栃木県保健環境センター 水環境部、鳥取県生活環境部衛生環境研究所 水環境対策チーム

関連する研究課題
  • 0 : 生物・生態系環境研究分野における研究課題
  • 0 : 地域環境研究分野における研究課題

課題代表者

矢部 徹

  • 生物多様性領域
    生態系機能評価研究室
  • 主任研究員
  • 博士(理学)
  • 生物学
portrait

担当者

  • 中村 雅子
  • 有田 康一
  • 石井 裕一