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水銀の全球多媒体モデル構築と海洋生物への移行予測に関する研究(平成 26年度)
Study on global multimedia fate and bioaccumulation to marine organisms of mercury

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 5-1405
研究課題コード
1416BA011
開始/終了年度
2014~2016年
キーワード(日本語)
水銀,多媒体モデル,全球モデル,生物移行,安定同位体
キーワード(英語)
mercury, multimedia model, global model, bioaccumulation, stable isotopes

研究概要

 水銀に関する水俣条約の採択により、各国で排出削減対策が講じられていくことになる。水銀は元素状、酸化態、有機水銀などの化学形態をとりながら、大気、海洋、陸域、底質など複数の環境媒体(多媒体)間を移動して例えば公衆への曝露経路となる遠洋魚に到達する可能性がある。したがって、多媒体間の包括的な環境動態と海洋生物への移行を明らかにすることのできるモデルが必要とされている。しかしながらこれまで、沿岸域を中心とする水域での環境動態や大気中での形態変化、また大気中の輸送モデルなどの研究は存在するものの、全球規模で輸送と多媒体の動態過程を包括的に扱うモデル化は遅れていた。本研究は、近年の超微量分析技術による遠洋観測と安定同位体分析による水銀形態の起源推定など新たな研究手法を導入し、これをPOPs(残留性有機汚染物質)研究によって実績のある全球多媒体モデル手法と融合することで、新たな水銀の全球多媒体モデル構築と海洋生物への移行予測に関する研究を行う。これによって、例えば排出量の削減による、環境の各媒体の濃度・存在量や 海洋生物中の濃度などの応答を予測可能な技術的手段を提供することを目指す。昨年に採択された水銀に関する水俣条約では、今後の排出削減対策の有効性を予測して科学的知見に基づく対策を進めることが課題となると考えられる。このために、水銀の排出と移行を全球、多媒体を包括して予測する科学的手法の確立は急務の課題である。本要求では、水銀の全球多媒体モデルと海洋生物への移行予測の研究を進めることによって国際的な行政課題にこたえることをめざして、具体的には4つのサブテーマから構成される研究課題を実施するものである。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

 本研究は4つのサブテーマによって研究を進め、最終年度には、各サブテーマにおける水銀の多媒体動態の素過程の知見、モデル要素の開発、観測データの蓄積の検討を統合して水銀の全球多媒体モデルと海洋生物への移行予測手法を構築し、モデルおよび予測手法として確立することを目指す。
(1)水銀の全球多媒体モデルおよび海洋生物移行モデルの構築(サブテーマ代表、国環研 鈴木規之)
 残留性有機汚染物質(POPs)を中心に開発した全球多媒体モデルFATEに水銀動態諸過程を導入して全球多媒体動態を記述するモデル(FATE-Hg)を構築する。また、サブテーマ(2)(3)(4)と密接に連携して 遠洋海域での生物移行モデルを開発して全球多媒体モデルに統合する。
(2)水銀の安定同位体分析による媒体間動態の検討(サブテーマ代表、国環研 柴田康行)
 安定同位体分析および形態別詳細分析により、大気−海洋また海洋−生物の媒体間動態過程を明らかにし、モデル構築の基礎データを求める。具体的には、水銀安定同位体の精密観測により多媒体環境また海産生物中の水銀の起源を明らかにし、多媒体動態モデルと生物移行モデルのプロセス記述の基礎を与えることを目標とする。
(3)遠洋・沿岸海域での水銀の動態観測と解析(サブテーマ代表、国水研 丸本幸治)
 遠洋・沿岸海域での水銀の大気−海洋間および生物動態データを取得しサブテーマ(1)の多媒体環境モデルおよび生物移行モデル構築・検証する基礎を確立する。具体的には、大気−海洋間のフラックス観測、沿岸域動態・生物移行の観測・実験を行うことにより、多媒体動態モデルの中の大気−海洋間および生物移行過程の記述の基礎を与えることを目標とする。
(4)大気中水銀の連続観測によるモデル検証(サブテーマ代表、新潟工科大 福崎紀夫)
 大気中形態別水銀の連続観測および沈着量調査を国内で実施し、モデルの大気検証データを得て、また観測手法を確立する。具体的には、データの少ない地域における形態別大気・沈着観測を進め、モデル予測結果の検証の基礎とする。

今年度の研究概要

サブテーマ(1)人為起源の全球排出量インベントリ、自然起源の排出量に関する文献調査を行い、水銀の形態変化の大気プロセスを現行FATEモデルに導入する。生物への移行動力学に設定する環境媒体の特性、水銀の化学形態、食物網構造情報を収集し、対象とする主要生物種を検討する。
サブテーマ(2)遠洋に生息する魚類の水銀同位体組成(d202Hg、D199Hg、D201Hg)を明らかにする。特に、大型魚類の高精度水銀同位体分析技術を確立し、魚類種間の水銀同位体組成の相違を明らかにして、海洋の鉛直構造に起因する水銀動態と生物移行過程プロセスを顕示する。
サブテーマ(3)研究対象海域を玄界灘とし、海面からの水銀放出フラックスと海水およびプランクトン、並びに堆積物中の形態別水銀の観測を実施することにより、大気/海面間水銀交換速度および水銀の形態変化、海洋生物の捕食ネットワークへの水銀移行過程に関する知見を得る。
サブテーマ(4)Tekran社製連続測定装置を用い新潟県柏崎市において大気中元素態水銀、酸化態水銀及び粒子状水銀濃度を初冬から初春に連続測定を行う。また、粗大粒径の粒子状水銀測定及び水銀の湿性着量の測定を行う。大気中水銀濃度、沈着量の文献値を収集する。

外部との連携

サブテーマ3、及び4は国立水俣病総合研究センター、及び新潟工科大学において実施されている。

関連する研究課題

課題代表者

鈴木 規之

  • 環境リスク・健康研究センター
  • センター長
  • 博士(工学)
  • 工学,化学,土木工学
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担当者