ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

新しい環境トレーサーを用いた環境動態解析法の開発と計測(平成 27年度)
Precise measurement of chemical substances and isotope ratios for environmental chemodynamics research

研究課題コード
1115AA102
開始/終了年度
2011~2015年
キーワード(日本語)
VOC,海水循環,ハロカーボン,同位体,水銀,放射性炭素
キーワード(英語)
VOC, seawater circulation, halocarbon, isotope, mercury, radiocarbon

研究概要

<目的・目標>
気候変動や人間活動による自然生態系の変化を正しく検出し、その影響を予測することや有害物質の発生源、環境動態を解明することは、安全で快適な自然環境、生活環境を維持して行く上でたいへん重要である。そこで本研究では、生態系の変化を捉えるトレーサーの開発・実用化(サブテーマ1:気候変動影響を検出するためのトレーサーの開発と計測)と同位体存在度の変動を利用した化学物質などの環境動態解明を目指す計測技術の開発・高度化(サブテーマ2:同位体をトレーサーとした環境中化学物質の動態解析手法開発)を実施し、本研究プロジェクトで確立された計測技術を実際の環境分析へ応用して行く。
<全体計画>
(1)気候変動影響を検出するためのトレーサーの開発と計測
亜熱帯と亜寒帯の自然生態系変動をそれぞれ反映する波照間島と落石岬のモニタリングステーションにおいて、大気中自然起源VOCの高頻度観測を実施して、自然生態系に関係するシグナルのみを抽出し、その日変化・季節変動・長期トレンドの支配要因を解明すると共に、生態系トレーサーとして活用するために必要なプロセス研究を実施する。また、海水中に含まれる長寿命ハロカーボン類を同時定量する分析手法を確立し、各成分の海洋での鉛直分布、あるいは濃度比を数年から50年スケールの水塊トレーサーに応用し、海水流動研究に活用する。
(2)同位体をトレーサーとした環境中化学物質の動態解析手法開発
同位体計測技術をより多くの元素の同位体測定へと拡張して行くとともに、生物、土壌、水など様々な環境試料の分析に応用できる試料前処理法も含めたその高度化(高精度化、微量試料分析法開発など)を進める。特に、国際的な取り組みが進められている水銀の同位体高精度分析法の確立、自然・人為起源の様々な物質の発生源探索や動態解明のトレーサーとして注目される炭素の放射性同位体などの計測技術の高度化を推進することにより、化学物質や大気中粒子状物質などの動態解析への利用を目指した同位体計測法の技術基盤整備と体系化を図り、確立された計測技術を用いて実際の環境分析を行う。

今年度の研究概要

(1)気候変動影響を検出するためのトレーサーの開発と計測
昨年度開発した硫化カルボニル(COS)をコンタミネーションフリーでGC/MSへ導入可能な大気濃縮装置を用いてCOS計測システムの検証を行い、森林生態系と大気の間におけるCOSフラックスを測定する。また、これまでのデータ解析から、ハロカーボン類CFC-12/CFC-11比およびCFC-12/CFC-113比が日本海深層水塊の流動解析に有効であることが明らかとなってきたが、同時に測定されるSF6を加えてより詳細な日本海深層循環の解析を進める。さらに、海洋起源の大気中ジブロモメタンについて、波照間島および落石岬における観測データを用いて、発生量等の支配要因を解析すると共に海洋変動のトレーサーとしての価値を評価する。
(2)同位体をトレーサーとした環境中化学物質の動態解析手法開発
水銀同位体分別効果に関する知見を集約して整理することにより、これまでに本研究で得られたマグロの水銀同位体比のデータから、発生源による同位体比変動の影響や、その詳細が明らかとなっていない環境中における水銀の動態解析を進めて行く。また、放射性炭素同位体技術の応用により、大気汚染、地球温暖化、健康被害への影響が懸念されている粒子状物質に含まれる炭素系物質(人為・自然起源有機化合物等)の化石燃料・バイオマス起源寄与率などその発生起源解析を進め、環境中の炭素循環解明に貢献する。

課題代表者

荒巻 能史

  • 地球システム領域
    炭素循環研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(地球環境科学)
  • 化学,地学,水産学
portrait

担当者