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性染色体依存的な脳の性分化機構は環境因子の影響をうけるか?(平成 27年度)
Is sex chromosome-dependent brain sexual differentiation affected by environmental factors?

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1517CD008
開始/終了年度
2015~2017年
キーワード(日本語)
性分化,内分泌かく乱物質,脳
キーワード(英語)
sexual differentiation, endocrine disruptor, brain

研究概要

 ほ乳類や鳥類等の恒温動物では生殖腺のみならず「脳」も性分化することで内分泌・行動の雌雄差が形成される。従来、これらの動物では発達期に「性腺から分泌される性ホルモン」が脳に働くことで性特異的な構造・機能が形成されると考えられてきた。一方、近年我々が行った鳥類を用いた研究から「脳の性染色体」も脳の性差形成に重要な役割を果たすことが明らかになっている(Maekawa et al., Nature Communications, 2013)。本研究では、新規に見つかった「脳の性染色体」の影響に焦点を絞り、どのような仕組みで脳を性分化させるのか、遺伝子発現とエピジェネティクスに着目して分子基盤を解明する。また、環境因子が「性染色体依存的な脳の性分化」に影響を与える可能性を検討し、環境が生殖に影響を及ぼす新たな経路の発見を目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

本研究は孵化前のニワトリ胚を材料として、分子生物学的な手法を用いて新たな脳の性分化の仕組みを解き明かすとともに、その分子基盤が内分泌かく乱物質の有害性評価に利用可能であるかフィージビリティ・スタディを行う。本研究は以下の3つのサブテーマから構成される。
1. ニワトリ胚の視床下部において発現の性差を示す遺伝子群をDNAマイクロアレイと定量PCR法を用いて同定するとともに、薬物投与によって作製した性転換ニワトリを利用することで性染色体依存的に発現が変動する遺伝子群を抽出する。
2. 性染色体依存的な遺伝子発現と関連したDNAメチル化・ヒストン修飾を同定する。
3. エストロゲン様物質を投与した胚における遺伝子発現・エピジェネティック変化を検討することで、この性分化機構が環境因子によってどの程度影響を受けるのか明らかにする。

今年度の研究概要

【サブテーマ1】“性染色体依存的な脳の性分化”に伴う遺伝子発現変化の同定
 性染色体依存的に性分化する脳内の機構として、①排卵周期を制御する神経回路、および、②神経エストロゲン合成量、の2点が見つかっている。しかしながら、この2点が具体的に脳内のどんな分子基盤に立脚しているのか未解明である。【サブ1】では視床下部で発現に性差がある遺伝子を見つけ出し、その中から「性染色体依存的に変動する遺伝子群」を抽出する。

【サブ1-1】雌雄差を示す遺伝子発現変化の検出
 先行研究から“性染色体依存的な性分化”が既に完了していると考えられる孵卵開始後21日齢の雌雄のニワトリ胚の視床下部から抽出したRNAをサンプルとして、Agilent GeneSpring DNAマイクロアレイを用いて雌雄で異なる発現量を示す遺伝子の網羅的探索を行う。2度のランによる予備的検討結果として雌雄差を示す遺伝子を見いだしている。
 本研究では、DNAマイクロアレイのラン数をさらに2回追加する事で、より正確に雌雄差を示す遺伝子を同定する。また並行して蛍光リアルタイムPCR装置(LightCycler 480)を用いた定量PCRにより発現遺伝子を定量することでDNAマイクロアレイ の追試を行い、雌雄差を確定する。その際、特に排卵関連遺伝子(GnRH, GnIH等)、概日周期関連遺伝子、ステロイド合成酵素関連遺伝子に着目して検討し、①排卵制御神経回路、および、②神経エストロゲン合成の性差、との関連を探る。

【サブ1-2】雌雄差を示す遺伝子発現変化の個体発生解析
申請者が行った予備的研究から脳重量や視索前野の容積など形態学的雌雄差は孵卵開始後15日目より以前から存在することが推測されている。8〜20日目のニワトリ胚の視床下部での遺伝子発現変化を定量PCR法で解析することで、遺伝子発現と形態学的な雌雄差形成との関連を探る。

【サブ1-3】性転換動物を用いた性染色体依存的遺伝子発現変化の解析
 孵卵開始後5日目の胚にアロマターゼ阻害剤Fadrozole (0.1 mg)を投与することにより、雌型の性腺を雄型に性転換することが可能であり、「脳の性染色体」と「性腺の性」のミスマッチを誘導する事ができる。このような性転換ニワトリで脳内の神経エストロゲン合成量を測定するとともに、視床下部の遺伝子発現解析を行う。この一連の研究により、「発現に性差がある遺伝子群」を、「性腺からの性ホルモンに依存的に発現変動する遺伝子群」と「性染色体に依存的に発現変動する遺伝子群」の2群に分類することができる。

外部との連携

連携研究者:

北里大学 浜崎浩子先生【専門】発生学・神経科学 【役割】鳥類胚の脳における組織学的解析への助言

課題代表者

前川 文彦

  • 環境リスク・健康研究センター
    生体影響評価研究室
  • 主任研究員
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担当者

  • 佐野 一広
  • 川嶋 貴治生物・生態系環境研究センター