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発展する中国華北地方農村の環境保全に関わる要因の調査(平成 27年度)
Investigation of the factors for the environmental protection in Rural areas of North China

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1416CD008
開始/終了年度
2014~2016年
キーワード(日本語)
環境保全,汚濁負荷,資源循環,農村地域,環境技術
キーワード(英語)
Environmental conservation, Pollutant load, Resource recycle, Rural area, Environmental technology

研究概要

BRICs 諸国は急速に経済規模を発展してきており、その産業構造だけではなく、社会の構造や環境も劇的に変化している。経済的発展を急ぐあまり、環境汚染も顕著であり、結局、よい意味でも悪い意味でも先進国が歩んだ道を追随しているかに見える。ただし、その変化の速度は日欧米よりも格段に短く(いわゆる圧縮型経済発展)、環境の汚染は多くの問題を起こしている。環境汚染は、はじめに都市部、そして都市周辺部に見られた。しかし、近年、タンパク源が魚から家畜の肉に変化してきたBRICs 諸国は畜産業が急速に発展してきており、畜産排水を源とする農村部の環境水質汚染も顕著である。畜産排水は窒素やリンを高濃度に含み、肥料としての利用価値も高く、農村における廃水の再利用ポテンシャルは高い。一方、河川や沿岸では養殖業が盛んに営まれ、それによる水質や土壌の汚染が顕在化している。食の安全・安心の観点から、食料の生産地である農村地域ではその環境を美しく保全する必要性が世界中で起こっている。先進国だけでは無く、途上国の農村も環境を美しく保たなければ、その商品価値は著しく低下する時代になってきている。農村地域において環境の保全は科学的な観点とランドスケープの観点の両方から見直されるべきである。「里山」のコンセプトは農村漁村における環境の保全と資源の循環に基づく、健全な食料生産環境の構築である。農村といえども、都市近郊農村の場合は工業廃水汚染に無縁とは言えない。豊富な人的資源を背景にあらゆる規模の工場が稼働している。環境保全に対する意識も薄弱であり、重金属等の有害物質が水系や土壌を汚染する場合がある。とくに、雨量が少ない地域(例えば中国の華北地域)では水を繰り返し使用する状況であるので、このような汚染された水を灌漑用水として利用している。その結果、深刻な土壌汚染が起こっている。
本研究は中国華北地域の農村を対象に、水と土壌環境の状況を調査し、農業、畜産業、水産業(養殖業)からの汚濁負荷の状況調査と将来予測を行う事により、適切な制度・技術の適用モデルを構築し、最終的には中国農村に地域における持続的発展モデルを提案するものである。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

本研究は中国華北地域の代表的大都市、天津市を対象とし、農村地域の環境状況を調査し、データベースを構築し、さらにそれを基礎に、持続的農村の発展モデルを構築する事を目的とする。
 具体的な研究項目を以下に示す。
1) 河川、湖沼、土壌の環境データの収集と調査
2) 農村系産業(畜産、農業、集落、加工業)からの汚染物排出量調査
3) 漁村系産業(養殖、水産、集落、加工業)からの汚染物排出量調査
4) その他の農村関連の事項(居住形態、就労形態、補助金など)の調査
5) 水・資源の循環的有効利用を基軸とした、中国農村開発モデルの構築
の5 種類のタスクに分けて調査を進める。調査に関しては連携する政府、大学に存在する基地の調査データの情報も得ながら、現地における測定を先方機関と協力して進めていく。汚染物質の排出量、
将来的な生産量の推移推計、農民(農村)の発展の施策などの観点から適切な環境技術配置の提案、農村の土地利用計画の提案などを持続可能性、資源再利用性、地球環境などの観点から、中国の農村の今後20 年程度の発展モデルを提案する。
 本研究はその期間を3年間に定め、年次ごとに3つのフェーズ(Phase)を設定する。25年は準備フェーズ(問題の再確認)、26年〜27年は調査フェーズ、27年はとりまとめフェーズとして年次活動を以下に示す。
平成26 年度 準備フェーズ
本フェーズは調査モデル地域の選定(天津市内の2地区程度を選定)、関係諸機関との調整(地区内の農村工作委員会との調整)、研究資源(中国側の研究費、実験室、機材、研究者、大学院生)の再確認、研究者や大学院生の環境測定に関するトレーニングを実施する。また、年度後半においては調査実施地域における地理情報の整備(既存のGIS 情報の現地調査に基づく更新)を行うと同時に、次年度以降に本格的な環境測定(主に炭素(COD 等)、窒素(アンモニア、硝酸、亜硝酸)、農薬類、金属類、その他有害有機物質)を行うに当たっての予備調査を行う。予備調査の目的は統計学的に意味のあるサンプル数を決定するための分散値を得るために行う。環境測定は水域(河川、湖沼、地下水、海水)、土壌を行う。
平成27 年度 調査フェーズ
本フェーズは1)汚染物質の濃度調査、排出源からの排出調査、排出源から水域や土壌までの経路(またその途中の変遷)、非汚染地域における変化等の環境調査、2)農村の職業形態、農村の新技術の受け入れ体制、制度的な状況等の社会経済学的調査、3)将来的な変化予測も含めた土地利用調査の3つの調査時区を中心に既存情報の整理と検証、現場における実測の二本立ての戦略をとり、現地機関と十分連携を取りつつ、調査を進める。
平成28 年度 調査・とりまとめフェーズ
本フェーズの中心活動はフェーズ1 と2 で得た環境調査、農村調査を元に、中国の農村発展のためのモデルを構築する事である。ひとりあたりの所得が増加すると、国の農業従事人口は減り、農業がしめる経済の割合も少なくなる事は世界各国の例を見ても明らかであり、中国も例に漏れない。本フェーズではより頻繁で長い期間の論議を日中で行い、1)環境、2)農業・水産業生産、3)資源管理、4)経済・政策の4つの軸で調査結果を解析し、将来的(20 年を想定)な予測(たとえば新しい環境技術・農作物生産技術の導入)も含めてとりまとめ、農村が発展していくための提言書の形でモデルを作成する。

今年度の研究概要

本年度では1)汚染物質の濃度調査、排出源から水域や土壌までの経路(またその途中の変遷)、非汚染地域における変化等の環境調査、2)農村の職業形態、農村の新技術の受け入れ体制、制度的な状況等の社会経済学的調査、3)将来的な変化予測も含めた土地利用調査の3つの調査時区を中心に既存情報の整理と検証、現場における実測等を行い、現地機関と十分連携を取りつつ、調査を進める予定である。

外部との連携

外部連携者

東京大学: 福士謙介 (研究代表者) 、森田茂紀、栗栖聖、松田浩敬、浦剣、卯田宗平、黒倉寿

東北大学: 李玉友

筑波大学: 張振亜

協力機関: 中国天津農学院、南開大学、天津農村工作委員会

備考

当課題は循環型社会研究プログラムPJ2「アジア地域に適した都市廃棄物の適正管理技術システムの構築」、政策対応型廃棄物管理研究「地域再生のための環境修復・循環技術と生活系液状廃棄物の適正処理技術システムの構築」にも関連

課題代表者

徐 開欽

担当者