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タイ王国トラート川河口マングローブ林における土壌生態学的研究(平成 27年度)
Dynamics of Soil organic matter in a mangrove forest on an estuary of the Trat River, eastern Thailand.

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1517CD015
開始/終了年度
2015~2017年
キーワード(日本語)
炭素循環,土壌圏炭素,マングローブ,土壌呼吸,溶存無機炭素
キーワード(英語)
Carbon cycle, Soil organic carbon, Mangrove, Soil respiration, dissolved inorganic carbon

研究概要

マングローブ林は、地球上の陸上生態系の中で最も巨大な炭素の貯蔵庫であるが、その炭素蓄積メカニズムは必ずしも明確ではない。その最大の原因は、潮汐と河川の流れによって上流の森林生態系や海洋生態系と水を介して繋がっており、炭素の動きが一般的な森林とは全く異なるためである。先行研究において、石垣島吹通川河口のマングローブ林を対象として、生態系生態学と土壌有機化学の連携によって、その土壌炭素プールの定量的評価と蓄積メカニズムの解明する「土壌生態学」的手法を創出した。本研究の目的は、熱帯マングローブ林にこの手法を適用し、巨大な炭素プールに対する流域全体の寄与 (山−川−海の連環) を明らかにすることである。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

熱帯マングローブ林SOCプールの蓄積メカニズム解明のため、以下の3つの計画を実施する。
1)土壌炭素の分解フラックスの定量
土壌呼吸の連続測定による、干潮時の土壌表面と満潮時の水表面からのCO2フラックスの定量。林内の土壌間隙水における溶存無機炭素(DIC)濃度の時間変動の測定に基づく、嫌気的分解呼吸のDICによる流出量の推定。
2)水を介した有機物の動態
河川水のサンプリングと土壌有機化学的な分析に基づいた、上流からの有機物流入量とマングローブ林からの有機物流出量の推定。また画像解析による大型有機物(葉リター)の流出量と補食量の推定
3)土壌炭素の起源と蓄積速度の推定
土壌サンプリングによるSOCプールの定量と、土壌有機化学およびδ13C・δ15N分析による起源の解析。また放射正炭素同位体比(Δ14C)に基づくSOCプール内の炭素滞留時間(ターンオーバー)と蓄積速度の推定。

今年度の研究概要

先行研究で実施した亜熱帯(石垣島)マングローブ林と熱帯(タイ)マングローブ林との比較研究を行う。
1)土壌炭素の分解フラックスの定量
先行研究の結果を踏まえて、新たにマングローブ用の自動開閉式チャンバーとバッテリー駆動連続測定システムを開発し、潮位変動を含めた2−3日程度の土壌呼吸の自動連続測定を試みる。この結果から、干潮時の土壌表面と満潮時の水表面からのCO2フラックスの定量を行う。
2)水を介した炭素の動態
河口から上流部の広葉樹林域までの複数箇所で水をサンプリングして、溶存有機物( POC, DOC)の量や質と、季節や潮位との関係を解析する。さらに水文学的な手法によりマングローブ流域への入水路、マングローブ林内、河口域に水位計を設置すると共に、水位ー流量曲線を作成して年間の水流出量を推定する。これらのデータを基礎としてマングローブ生態系へのPOC・DOCの流入量年間フラックスの定量的評価を行う。
3)土壌炭素の起源と蓄積速度の推定
林内の20カ所程度で深さ1mまで土壌を採取し、仮比重測定と元素分析計を用いた炭素濃度測定から土壌炭素プールの定量的評価を行う。また、土壌への炭素蓄積プロセスを調べるため、核実験起源の14Cを指標にプール内炭素の滞留時間と蓄積速度の推定結果と比較検討する。

外部との連携

研究代表者:岐阜大学大塚俊之教授

その他連携先:神戸大学、琉球大、滋賀県立大、タイ・チュラロンコン大学

課題代表者

近藤 美由紀

  • 環境リスク・健康領域
    計測化学研究室
  • 主任研究員
  • 博士(農学)
  • 化学,生物学,農学
portrait

担当者