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マルチスケール大気質変化評価システムの構築と変化事例の解析(平成 27年度)
Development of evaluation system for multiscale air quality change and analysis of change events

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) S-12-1(1)
研究課題コード
1418BA002
開始/終了年度
2014~2018年
キーワード(日本語)
大気汚染,短寿命気候汚染物質,東アジア,化学輸送モデル
キーワード(英語)
Air pollution, SLCP, East Asia, Chemical transport model

研究概要

本研究は、環境研究総合推進費戦略的研究開発領域課題(S-12)「SLCPの環境影響評価と削減パスの探索による気候変動対策の推進」のテーマ1「大気質変化事例の構造解析と評価システムの構築」のサブテーマ1として実施するものである。
アジアでは、化石燃料やバイオマス燃料の燃焼などによって,大気汚染物質が大量に大気中に放出され、エアロゾル(粒子状物質:PM)やオゾンなどによる深刻な大気汚染を引き起こしている。また、アジア大陸で発生したエアロゾルやオゾンは、大陸の風下に位置する日本列島に運ばれ、日本の大気質に大きな影響を及ぼしている。一方、地球温暖化の観点では、短寿命気候汚染物質(SLCP)にはオゾン、エアロゾルが含まれており、その削減はCO2と比較して容易であり、また、短期間で効果が得られることから、SLCPの削減が急務であると考えられている。特に、アジアでは、オゾンやエアロゾルの前駆物質排出量が依然として増加しており、世界的にもSLCP排出削減が重要な地域となっている。
アジアにおいて大気汚染と地球温暖化による環境影響の緩和に対して有効なSLCP削減の効果的な対策メニューを示すために、過去の大気質変化イベントの定量的解析を通じて、SLCP削減の有効な対策を明らかにし、対策効果の定量的評価ツールを開発することを目標とする。そのために、全球・領域化学輸送モデル(CTM)をもとに、都市〜アジアスケールの大気質変化事例の解析や対策効果の事前・事後評価が可能なマルチスケール化学輸送モデルシステムを構築し、過去の大気質変化事例に適用して、排出量変化と大気質変化の定量関係を評価する。更に、他のサブテーマで構築される排出インベントリ(サブテーマ2)、排出量逆推計システム(サブテーマ3)と統合して「マルチスケール大気質変化評価システム」を構築し、地域大気質変化事例によって検証する。最終的に、このシステムを用いて、地域大気質変化事例の変化要因や対策効果を分析することによりSLCP対策の有効性を定量的に明らかにするとともに、テーマ2で作成されるSLCP削減シナリオによる大気汚染緩和効果を評価する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

国立環境研究所等で開発してきた化学輸送モデルCTM(全球化学気候モデルMIROC-ESM-CHEMと領域化学輸送モデルWRF/CMAQ)をもとに、都市〜アジアスケールの大気質変化事例の解析や対策効果の事前・事後評価が可能なマルチスケール化学輸送モデルシステムを構築する。本システムを国内とアジアにおける過去の大気質変化事例(短中期的な大気汚染対策、週末影響や長期休日影響、震災や経済変動の影響、大気環境改善のための社会実験などから抽出)に適用して、排出量変化と大気質変化の定量関係を評価する。更に、マルチスケール化学輸送モデルシステムと排出インベントリシステム(サブテーマ(2))、排出量逆推計システム(サブテーマ(3))を統合して「マルチスケール大気質変化評価システム」を構築し、地域大気質変化事例によって検証する。
 最終的に、地域スケールにおける代表的な大気質変化事例を対象に、観測データや社会経済データ、対策情報等を収集し、「マルチスケール大気質変化評価システム」を用いて大気質の変化要因や対策効果を定量的に分析することにより、SLCP対策の有効性を定量的に評価する。

【平成26年度】国内における過去の大気質変化事例を調査し、対象事例を選定して各種データを収集整理する。サブテ−マ2、3と連携して評価システムの準備・整備を進めるとともに、システムを構成する全球/東アジア/都市の各スケ−ルを対象とした化学輸送モデルを整備する。
【平成27年度】EI/CTM/IMを統合し、過去の大気質事例について再現可能な評価システムを構築する。このシステムを、平成26年度に選定した国内対象事例に適用し、サブテ−マ2、3と連携して、大気質の変化量や変化要因を解析する。この中でサブテーマ1は、マルチスケール化学輸送モデルを用いて、排出量変化と大気質変化の関係を定量化する。また、中国における過去の大気質変化事例を調査し、対象事例を選定して各種データを収集整理する。
【平成28年度】マルチスケール大気質変化評価システムを改良するとともに、平成25年度に選定した国内対象の未解析事例及び中国の1事例に適用し、サブテ−マ2、3と連携して、大気質の変化量や変化要因を解析する。この結果と前年度結果をもとに、対策効果を中間的に取りまとめる。また、国内・中国以外の過去の大気質変化事例を調査し、対象事例を選定して各種データを収集整理する。更に、テーマ2で作成される削減シナリオによる大気汚染緩和効果を評価する。
【平成29年度】追加事例(国内・中国以外の事例など)を対象とした大気質変化の構造解析を進めるともに、削減シナリオ(テーマ2で作成)による大気汚染緩和効果をテーマ2と連携して解析する。同時に、S-12全体で構築する統合評価システム及び簡易政策キットに組み込む大気質モジュールを設計する。
【平成30年度】前年度までに解析した大気質変化事例の解析結果をもとにSLCP対策の有効性を定量的に明らかにするとともに、テーマ2で作成されるSLCP削減シナリオによる大気汚染緩和効果を評価する。更に、S-12全体で構築する統合評価システム及び簡易政策キットの大気質モジュールを開発し、テーマ4に提供する。

今年度の研究概要

過去の大気質事例について再現可能な評価システムを構築する。このシステムを国内対象事例に適用し、サブテ−マ2、3と連携して、大気質の変化量や変化要因を解析する。この中でサブテーマ1は、マルチスケール化学輸送モデルを用いて、排出量変化と大気質変化の関係を定量化する。また、中国における過去の大気質変化事例を調査し、対象事例を選定して各種データを収集整理する。

外部との連携

S-12プロジェクトリーダー: 中島映至 (JAXA/EORC)

テーマ1リーダー: 大原利眞 (国立環境研究所)

サブテーマ2リーダー: 黒川純一 (アジア大気汚染研究センター)

サブテーマ3リーダー: 眞木貴史 (気象研究所)

テーマ2リーダー: 増井利彦 (国立環境研究所)

テーマ3リーダー: 竹村俊彦 (九州大学応用力学研究所)

課題代表者

大原 利眞

担当者