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森林生態系の窒素循環高度化の為の同位体予測モデルの構築(平成 28年度)
Developing a process oriented model for nitrogen isotope in forest ecosystem

予算区分
ZZ 個別名を記載 クリタ水・環境科学振興財団 国内研究助成
研究課題コード
1516ZZ001
開始/終了年度
2015~2016年
キーワード(日本語)
窒素循環
キーワード(英語)
N cycling

研究概要

 産業革命以後、化石燃料の燃焼や化学合成肥料の利用の増加によって、環境中における反応性窒素が増加しており、その量は全陸域で産業革命前のおよそ二倍となった。過剰な反応性窒素は温室効果ガスである一酸化二窒素の発生、地下水の硝酸性窒素汚染や閉鎖性の水域の富栄養化や生物多様性の低下等の種々の環境問題を引き起こす原因である。2009年のNature誌に紹介されたJohan Rockströmらの提唱したPlantary boundary(地球システムの限界点)で取り上げられた9つの主たる人為影響の中でも、反応性窒素は緊急性を要する問題として取り上げられ、Future Earthと呼ばれる国際プログラムの中で問題解決にむけて研究と社会の両面で推進すべき課題であると認識されている。
 
 日本の森林生態系においても化石燃料由来の窒素降下物の増加と長年蓄積によって、流域全体の窒素負荷の増大に寄与していると考えられている。茨城県の筑波山においては、これまでに化石燃料由来の人為起源の窒素降下物はおよそ1770 kg-N/haの硝酸態窒素として負荷が推定されている(Takamatsu et al., 2010 in Science in Total Environment)。また、対象流域では平水時の河川水は1985 年間平均が 1.5 mg-N L-1 であったのに対し、2010 年は 1.9 mg-N L-1と有意な増加を観測されており、窒素降下物量そのものが増加していないにも関わらず小集水域13地点の内8地点が2.0 mg-N L-1を超えるようになっている(国環研研究プロジェクト報告, 2014)。著者らの研究グループでは生態系モデルVISIT(Inatomi and Ito, 2012 in Ecosystems)を用い、本流域における窒素循環の森林生態系の窒素のマスバランス評価に現在取り組んでいる。また本サイトでは、河川流出水中の硝酸の窒素・酸素同位体の測定が行われており、観測ベースのメカニズム解明を進めているところである。一方で、プロセスモデルにおける同位体予測は限られたモデルでしか実装されておらず(e.g., van Dam & van Breemen, 1995 in Ecol. Modelling)、より詳細なプロセスモデルでの検証と予測の精度向上のためには、既存の窒素循環モデルにおいても同位体レベルの検証を推し進めていく必要がある。

 本研究では、主として同位体予測を行うためのモデル作成と、同位体予測の検証のための観測データの収集が大きな目的である。観測は本研究で1から行うことはせず、筑波山を始めとする渓流水質などの窒素同位体情報が既存である観測サイトを活用して、植物、土壌、ガスなどの窒素同位体の補足データを取ることに依って効率的に生態系モデルの検証を推し進める。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

助成期間において、モデリング(およびプログラミング)と観測の両面から同位体予測モデルの構築を推進する。主な研究成果として、以下の3点について達成を目指す。

(1)窒素安定同位体の計算スキームをモデル化して生態系モデルVISITに実装する
(2)森林生態系の包括的な窒素および窒素同位体観測データを進め、統合的な検証データの取得を行う
(3)取得データを用いて作成したモデルの検証を進める

 実施内容(2)においては、国環研が観測を実施している筑波山(茨城)、天塩研究林(北海道/北大)、富士吉田研究林(山梨)および京大、農工大などが中心なって観測進めている桐生演習林(滋賀)などのサイトを利用する予定である。これらのサイトは都市域からの距離が様々であり窒素負荷の程度が異なる。各サイトにおいて、植生(葉、幹、根)、土壌(リター層、土壌層)などの生態系モデルの要素について窒素の安定同位体比を包括的に測定し、検証データとする。複数サイトで、渓流水における窒素同位体比の観測データが既に取得されている。実施内容(1)において、窒素流出を含むすべての森林生態系要素について、VISITモデル中で安定同位体比を計算できるスキームを導入し、検証(3)を行う。

今年度の研究概要

昨年度に引き続き、森林生態系の窒素安定同位体比の観測を継続するとともに、VISITモデルの作成を行い、取得データを用いた検証を行う。

外部との連携

東京農工大、北海道大学、静岡大学、琉球大学

関連する研究課題

課題代表者

仁科 一哉

  • 地域環境研究センター
    土壌環境研究室
  • 主任研究員
  • 博士(農学)
  • 林学,農学,コンピュータ科学
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