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土壌に含まれる可給態放射性セシウムの新規定量法の検証(平成 28年度)
Evaluation of selective extraction method for available radiocesium in soils.

予算区分
AQ センター調査研究
研究課題コード
1516AQ001
開始/終了年度
2015~2016年
キーワード(日本語)
放射性セシウム,土壌,脱離,選択的抽出法
キーワード(英語)
radiocesium,soil,desorption,selective extraction

研究概要

土壌中の放射性セシウム(rCs)のうち、土壌から植物に移行可能な形態(可給態)はごく一部であるため、農作物のrCs吸収量や森林のrCs循環を予測するためには可給態rCs濃度の把握が必要である。しかし、従来法で定量した可給態rCs濃度が同じ土壌でも農作物のrCs吸収量が大きく異なる現象が問題となっており、可給態rCsの新たな評価法が求められている。申請者はH26年度までに各種試薬を用いた土壌抽出実験を行った結果、可給態rCsの新規定量法(0.1M 安定塩化セシウム抽出)を考案した。本申請課題では、本法の妥当性と適用範囲を示すことを目的として、福島県農業総合センターが試料と各種データを保有する100検体以上の農地土壌に適用し、本法で定量した可給態rCs、従来法で定量した可給態rCs、農作物のrCs吸収量、土壌の諸性質の相関を解析する。さらに、本法の有用性を示す事例として、震災以降の未耕耘ほ場における耕起前と耕起後の土壌や、様々なK施肥や資材施用を実施した土壌について可給態rCsを分析し、農作物のrCs量との関係を調べる。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

実験1:本法の妥当性を確かめるために、以下の実験を行う。予備実験から本法が適用可能と予想される「スメクタイトを含まない土壌」の抽出を実施する。1M 硝酸アンモニウム抽出態rCsと0.1M 安定塩化セシウム抽出態rCsを定量する。両者の差がフレイドエッジサイト(FES)数の指標であるバーミキュライト・イライト含有量やrCs固定ポテンシャル(RIP)と相関していれば、0.1M 安定塩化セシウム抽出ではFES吸着態rCsが抽出されず、可給態rCsを選択的に定量可能と言える。本法が適用できない可能性がある「スメクタイトを含む土壌」についても実験1と同様の抽出と解析を実施し、本法の適用範囲を明らかにする。また、土壌の可給態rCs/Kと農作物中のrCs/Kの相関を調べる。
実験2:本法の応用例として、以下の実験を行う。土壌改良の効果を本法により簡易評価する可能性を示すために、様々なK施肥や資材(ゼオライト・バーミキュライト)施用を実施した水田土壌の可給態rCsを分析し、玄米中rCsとの関係を解析する。「震災以降の未耕耘ほ場において、耕起後栽培し、作付け一年目の農作物は作付け2年目以降よりも農作物中の放射性Cs濃度が高い傾向があるが、従来法で定量した可給態rCsは1年目と2年目で差がみられない」現象の解明を試みるために、震災以降の未耕耘ほ場において、耕起前と耕起後の土壌を採取し、本法の可給態rCsを定量する。
実験1,2は並行して進める。平成27年度は実験1の結果を解析・公表することを優先する。平成28年度は実験2の結果を解析・公表する。

今年度の研究概要

 平成28年度は、まず、実験3に基づいて新規抽出法を提案する論文を執筆・公表する。この論文を引用して、実験2および追加の実験を解析した論文をとりまとめる。実験1については公表内容について農水省消費安全局との合意に至った後、口頭発表・誌上発表・Web上で公表する。

外部との連携

福島県農業総合センターとのI型B共同研究として実施した。

備考

平成27年度は、地域環境研究センター内奨励研究および地環研等共同研究費支援費により実施した。
平成28年度は、地環研等共同研究費支援費により実施した。

課題代表者

越川 昌美

  • 地域環境保全領域
    土壌環境研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(人間・環境学)
  • 化学
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担当者