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サプライチェーンを通じた資源利用と環境影響の解析と資源利用の高度化・高効率化研究(平成 28年度)
Detection of resource consumption and its environmental impacts, and system design to increase resource efficiency through the supply chain

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1416CD006
開始/終了年度
2014~2016年
キーワード(日本語)
物質フロー分析,リサイクル,サプライチェーン,金属,ライフサイクルアセスメント
キーワード(英語)
Material flow analysis, Recycle, Supply chain, Metal, Life cycle assessment

研究概要

本研究は、『サプライチェーンを通じた資源利用と環境影響の計測・解析方法』の確立を目的として、枠組み設計に加えて、事例研究を通じて、持続可能な資源管理のための技術開発課題、システム開発課題を抽出する。事例研究では、エネルギー技術等の導入・普及に伴い世界各国での需要拡大が予想されるニッケル等とその随伴元素を含めて物質管理を論じる。本研究の特色は、物質フロー・サプライチェーン分析による俯瞰的な特性情報と物質の資源性・有害性および個別のプロセスでの物質の分配挙動等の解析により得られる微視的な特性情報をもとに、日本の産業構造と国際サプライチェーン、更には、資源利用に伴う環境影響情報を統合して記述・解析する事であり、完成により、科学技術政策や環境技術政策等の幅広い分野への情報還元が期待できる。

サプライチェーンを通じた資源利用と環境影響の計測・解析方法の枠組み設計に加えて、事例研究を通じて以下の3つの特性情報を明らかにした上で、持続可能な資源管理に資する技術・システムの提言を目指す。また、情報伝達のための効率的なグラフィックデザインの作成に努める。
(1) 物質の資源性・有害性特性: サプライチェーンを通じた物質の『化学状態フロー』を作成すると共に化学物質の生成メカニズムを解析する。具体的には、物質のライフサイクルの各プロセスにおけるサンプル(鉱石、製品、廃棄物など)中の元素の化学状態および物質の生成メカニズムを実験的・文献学的アプローチにより解析・抽出する。更に、ライフサイクルアセスメント(LCA)のインパクト評価などを参考にしつつ資源的価値だけでなく人体への健康影響等も加味した資源性・有害性の統合評価を実施する。
(2) 物質の分配挙動等のプロセス特性: 資源性物質の有効利用と有害性物質の拡散の防止のために、化学熱力学解析や実験的アプローチにより製錬、廃棄物処理およびそれらの中間処理(分離・選別・濃縮)の各プロセスにおける元素の分配挙動、更には、元素の回収可能性および不純物の除去可能性・除去限界を明らかにする。
(3) 物質フロー・サプライチェーン特性: 対象元素のサプライチェーンの俯瞰的把握と共に、サプライチェーンを通じた資源利用に伴う環境影響を同定する。更に、上記(1)と(2)から得られる資源性・有害性特性とプロセス特性、更には、文献調査等に基づく先行研究・事例の調査をもとに選定した持続可能な資源管理に資する資源利用の高度化・効率化技術(含むシステム)を想定して、技術導入による改善効果の計量分析(シナリオ分析)を実施する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

物質・プロセス解析Gr.による【課題(1)】物質の資源性・有害性特性と【課題(2)】元素の分配挙動等のプロセス特性の解析、物質フロー・サプライチェーン解析Gr.による【課題(3)】資源利用と環境影響の計測・解析手法の枠組み設計と事例研究(現状把握とシナリオ分析)を柱に研究を遂行する。更に、円滑な情報共有と解析結果の帰還により、【課題(4)】資源利用の高度化・高効率化を支える技術・システムの選定を進めると共に、結果をもとに【課題(5)】伝わるインフォグラフィックスの設計を意識する事で、研究成果の効果的な情報発信と社会への還元に努める。上記課題を含めた資源利用と環境影響の議論に必要な学術基盤・専門性は多岐に渡る事から、各分野に精通した研究者との共同研究の体制を組織すると共に、アドバイザリーボードを設置する事で、議論の深化と国際的議論の牽引を目指す。

 統括(研究代表者、NIES): これまでに得られた熱力学解析やMFAに関する知見6)をもとに、課題?~?に主体的に取り組むと共に、グループ間の情報の共有と帰還、全体の取りまとめを行う。特に、効果的な情報発信を実施するための“ツタグラ”デザインの設計(課題?)に努める。なお、課題?については、専門的スキルが求められるため、外注を含めて専門家(サイエンティフィックデザイナー,コード開発者)を交えての議論と推進を想定している。更に、アドバイザリーボード(研究協力者)を組織して多角的な議論および効率的な研究推進を目指す。なお、外部研究協力者としては、Resource panel の一員である森口祐一 氏(東大)、製錬工学の専門家である長坂徹也 氏(東北大)に加えて、資源経済学、リサイクル工学など各分野の専門家、アジアにおける現地調査の経験者、及び、産業界からの有識者を想定している。
 物質・プロセス解析Gr.: NiやCo更にはその随伴元素等を対象として、物質の資源性・有害性特性およびプロセス特性の解析を実施する。X線吸収微細構造(XAFS)法等の分析を専門10)とする藤森(分担者、京大)は、物質の化学状態および生成メカニズムの解析(課題?)を実施する。また、鉄鋼製錬を専門11)とする三木 (分担者、東北大)、及び、非鉄金属製錬を専門12)とする竹田修(分担者、東北大)は、リサイクル・廃棄物処理および関連プロセスにおける元素の分配挙動・元素の回収可能性・物質の除去限界の解析(課題?)を実施する
 物質フロー・サプライチェーン解析Gr.: サプライチェーンを通じた資源利用と環境影響の計測・解析(課題?)を実施する。申請者は、これまで開発を進めてきたWIO-MFA,GLIOが有するサプライチェーン構造に環境影響情報(環境負荷物質の排出や土地改変に伴う影響など)を加味して枠組みを再構築することで、計測・解析手法の枠組み設計を行う。また、計量経済学の専門家13)である松八重(分担者、東北大)と連携する事で、産業連関分析の手法を利用してNi等を対象とした事例研究を実施することで、サプライチェーンを通じた資源利用と環境影響の同定と共に技術導入等に伴う波及効果の解析等を実施する。

今年度の研究概要

以下の役割分担のもとで、研究を推進する。また、一体的な成果の出力を意識して、特に、ニッケルとその随伴元素に着目して解析と検討を実施する。

<統括> 3つの特性情報(物質の資源性・有害性特性、プロセス特性、物質フロー・サプライチェーン特性)を踏まえて、持続可能な資源管理に向けた課題抽出および提言をまとめる。加えて、資源利用の高度化・高効率化に向けた具体的な検討として、ニッケルを含有する静脈資源等を取り上げて、循環利用の障壁や改善策を提示する。さらに、効果的な情報発信のためのツールとして、グラフィックデザイナー・コード開発者を交えて、動的な可視化ツールの作成および効果的なインフォグラフィクスの作成に取り組む。
<物質・プロセス解析Gr.> 基幹プロセスにおける元素の分配傾向および回収可能性、ライフサイクルを通じた物質の化学状態フロー、そして、資源の散逸形態等に関する解析・精緻化と検証を実施する。分配挙動の解析については、模擬実験による検証(例えば、フェロニッケル製造におけるPの分配)なども検討する。これらの結果をもとに、静脈資源の循環利用の促進など、資源の散逸を低減するための技術改善を含めて、回収技術および適正管理・処理技術の検討を行う。
<物質フロー・サプライチェーン解析Gr.> 物質フロー・サプライチェーンを解析することで、サプライチェーンを通じた資源利用、資源利用に伴う環境影響(土地改変量など)、さらには資源の散逸の可能性を明らかにする。これにより、日本を含めた世界全体での資源需給動向の変遷、資源利用の拡大に伴う課題を抽出すると共に、静脈資源のリサイクルを含めた資源利用の高度化・高効率化の観点から改善策の検討を行う。加えて、これらの事例研究を通して、計測・解析手法の枠組みを詰めていく。

外部との連携

外部との共同研究(分担)
・三木貴博(東北大学大学院工学研究科、准教授)
・松八重一代(東北大学大学院工学研究科、准教授)
・竹田修(東北大学大学院工学研究科、准教授)
・藤森崇(京都大学地球環境学堂、助教)
・林英男(東京都立産業技術研究所、主任研究員)
・富田誠(東海大学教養学部芸術学科、専任講師)

備考

本研究は、循環型社会研究プログラムにおけるプロジェクト1およびプロジェクト2に関連

課題代表者

中島 謙一

  • 資源循環領域
    国際資源持続性研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(工学)
  • 工学,材料工学
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