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特定外来生物の重点的防除対策のための手法開発(平成 28年度)
Development of control methods for priority measures against invasive alien species

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 4-1401
研究課題コード
1416BA010
開始/終了年度
2014~2016年
キーワード(日本語)
特定外来生物,化学的防除,外来アリ類,セイヨウオオマルハナバチ,ツマアカスズメバチ
キーワード(英語)
invasive alien species, chemical control, alien ants, Bombus terrestris, Vespa velutina

研究概要

外来生物法が施行されて以降、様々な外来生物の防除事業が進められる中、環境省外来生物被害防止行動計画において、限られた予算を投下するにあたり、優先的に防除すべき外来生物及び地域の選定が必要であることが議論され、防除が進みつつも低密度状態に移行し、根絶のためには新規防除手法を導入する必要がある種、及び世界自然遺産等の自然保護地域において緊急に排除する必要がある種を、優先的・重点的に防除対象とする方針がまとめられている。また、アルゼンチンアリ等の非意図的外来生物の分布が拡大傾向にあり、移送資材の検疫強化および検疫処理体制の構築が、同じく被害防止行動計画において急務とされる。特にヒアリやコカミアリなどの未侵入の特定外来生物は既に植物検疫での発見事例があり、侵入が警戒されているが、検疫発見時における対応策は整備されていない。さらに2013年には、小笠原諸島の兄島にグリーンアノールが侵入定着していることが確認され、移送ルートの特定および緊急防除が急がれている。
 本研究課題では、重点的に防除すべき特定外来生物および地域として、知床のセイヨウオオマルハナバチ、琵琶湖・伊豆沼のオオクチバス、小笠原諸島のグリーンアノール、世界遺産候補地である琉球・奄美のマングースを選定し、これまでに開発された防除手法に加えて化学的防除手法等、革新的手法を開発して対策強化を図り、各外来生物個体群の根絶確率を上げる。さらに、既に国内に侵入・定着を果たし、分布拡大の傾向にあるアルゼンチンアリの全国防除体制を構築するとともに、侵入初期のツマアカスズメバチの緊急防除手法の開発、および日本未侵入種ヒアリなどの外来昆虫類の検疫手法の確立を目指す。
 限られた予算の中でこれらの外来生物を確実に根絶もしくは封じ込めする実践的・革新的手法を完成させ、成功事例を作り出すことにより生物多様性条約愛知目標Target9の目標達成に貢献する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

水際で非意図的外来生物の侵入を阻止するために、および重要自然保護地域から緊急に外来生物を駆除するために、特に化学的手法を駆使した革新的防除技術を開発する。サブテーマ(1)では水際での早期発見技術を開発する。アリ類等の非特異的外来生物は様々な物資に紛れてくるため、輸入玄関港において、いち早く侵入を検出する技術が必要となる。有効な誘引トラップの開発を行い、水際侵入実態を明らかにするとともに、DNAバーコディングによる同定技術を開発する。
 サブテーマ(2)では緊急に対策が必要な外来昆虫類の化学的防除手法を開発する。植物防疫法で検疫処理することができないヒアリ等の未侵入種の検疫駆除手法の開発、全国各地に飛び火的に分布拡大しているアルゼンチンアリの緊急防除システムの構築、知床に侵入したセイヨウオオマルハナバチおよび対馬に侵入したツマアカスズメバチの野外薬剤防除試験の実践を図る。さらに外来生物の化学的防除に係る国内外の実例・情報収集を行い、生態リスク評価および管理手法を検討する。
 サブテーマ(3)では、小笠原における緊急防除手法開発を行う。世界遺産指定後、人と物資の移送量が飛躍的に増加したことから、サブ(1)で開発されたトラップを活用し、国内移送の外来種侵入実態を把握する。兄島に侵入したグリーンアノールの化学的防除手法を開発・実践する。
 サブテーマ(4)では、世界遺産候補の琉球・奄美における緊急防除手法を開発する。非意図的外来生物の侵入実態を明らかにするとともに、マングース根絶のための毒餌や不妊ワクチンの実用化を目指す。
 サブテーマ(5)および(6)では、オオクチバス等の化学的防除手法の開発を目指す。低密度に抑えながらも、完全に駆除できず再増加するケースが多いことから、誘引フェロモン剤を開発し、低密度個体群根絶のための手法を開発する。
 全体で得られた成果に基づき、緊急防除実践マニュアルを構築する。

今年度の研究概要

(1)港湾における外来種早期発見のためのモニタリング手法を開発し、同定等の使用法をマニュアル化する。

(2)外来アリ類の検疫処理手法マニュアルを作成する。アルゼンチンアリ監視体制を構築し、侵入生物データベースによる情報公開を行うとともに、日本各地の防除効果を判定する。セイヨウオオマルハナバチ・ツマアカスズメバチ防除効果を評価して、マニュアルを作成する。課題全体の成果を集約して、防除マニュアル集を作成し、発信する。

(3)昆虫を用いた生き毒餌のアノール防除効果及び在来種群集に対する影響を評価する。防除シミュレーションを構築して防除コスト及び期間を予測する。小笠原の非意図的外来生物インベントリーを作成し、検疫システムを整備する。船内検疫システムの運用試験、乗客アンケートを実施する。

(4)毒餌開発は化学物質の野外個体への適用を念頭にその使用に際してのマニュアルを作成する。避妊ワクチン抗原のデリバリーシステムの開発を継続し、経口ワクチン抗原としての可能性を評価する。簡易柵・混獲技術の野外実験を実施し、効果・コストを評価する。複数の検出手法を組み合わせたモデルにより地域的根絶達成コスト、期間、全島根絶達成予測を行い、防除事業に反映させる。

(5)多様な試験水域におけるオオクチバス等の低密度化を目指した総合的防除手法の検証、およびオオクチバス低密度試験水域におけるフェロモントラップの有効性の確認。

(6)オオクチバス等の化学的防除手法開発のため、?誘引物質の絞り込みを行う。これまでの試験結果から?オオクチバス等のフェロモントラップの規格を決定し、マニュアル化する。

外部との連携

共同研究者:岡部貴美子、升屋隼人、神崎菜摘 (森林総合研究所) 、戸田光彦(自然環境研究センター)、城ヶ原貴通(宮崎大学) 、中井克樹(滋賀県立琵琶湖博物館)、藤本泰文 (伊豆沼環境保全財団)

課題代表者

五箇 公一

  • 生物多様性領域
    生態リスク評価・対策研究室
  • 室長(研究)
  • 農学博士
  • 生物学,農学,化学
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担当者