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平成28年度 農薬による生物多様性への影響調査業務
(平成 28年度)
Research of ecological impacts of pesticides

予算区分
MA 委託請負
研究課題コード
1616MA003
開始/終了年度
2016~2016年
キーワード(日本語)
ネオニコチノイド,農薬,メソコズム,生物多様性,群集,リスク評価
キーワード(英語)
neonicotinoide, pesticide, mesocosm, biodiversity, community, risk assessment

研究概要

現在、日本における化学物質が生物へ及ぼすリスクの評価は、経済協力開発機構(OECD)により整備されたテストガイドラインに準拠し、水域生態系の食物連鎖を代表する特定の標準試験生物を用いた急性毒性試験 [ 藻類:Pseudokirchneriella subcapitata、甲殻類:オオミジンコ(Daphnia magna)、魚類:コイ(Cyprinus carpio)又はメダカ(Oryzias latipes)] の結果に基づいて判断されている。しかし、これらの試験はいずれも独立して実施されており、食う−食われる等の生物間相互作用や群集の変動性(variability)、復元速度(resilience)などの把握、及び評価ができない等、多くの課題を抱えている。このため、生物多様性保全と農業の持続的なあり方との両立を検討するためには、「生物多様性の保全を考慮に入れた、より現実的な化学物質の生態リスク評価体制・システムの構築」が急務である。そのひとつの方向性として、室内でおこなわれる急性毒性試験(低次試験)で得られたリスク評価の妥当性について、野外環境下でおこなわれる試験(高次試験)により検証するという包括的な評価システムの構築があり、高次試験の有効なツールのひとつが、メソコズムを含む実験生態系試験である(Campbell et al. 1999 )。そこで、本業務では、地域の生物多様性に配慮した農薬やその使用方法の選択を支援するためのツールとすることを目指して、農薬による生物多様性への影響を地域レベルで科学的に評価するための試験法を開発するため、止水式メソコズム試験の試験条件やその評価方法を検討するための調査をおこなう

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

農薬による生物多様性への影響を地域レベルで評価するための試験法開発

今年度の研究概要

? 止水式メソコズム試験の実施<地方における試験(以下「地方試験」という。)>
農薬による生物多様性への影響を地域レベルで評価するための試験法の実用化を目的として、生物群集の異なる地域の間で試験結果がどのように変化するのか調査し、我が国全体で活用可能な試験結果の解析・評価方法を具体的に検討するため、地方試験を4箇所程度で実施する。地方試験の実施は、都道府県の農業試験場・大学等において行うことを想定しており、具体的な実施箇所については、環境省担当官と協議の上、決定すること。請負者の費用負担については、試験用機材(水質調査・試験採取に係る器具を除く)の調達及び発送以外に発生しないことを想定しているが、地方試験の実施者と調整の上、決定する。
対象農薬及び試験方法(生物調査及び水質調査の方法を含む)等は、過去に実施された試験(下記参考資料参照)や各地方における試験結果が比較可能となるように共通化することを基本とするが、その地方に特有の事情により変化させる場合もあり得ることを勘案し、環境省担当官と協議の上、決定する。
また1箇所あたりの地方試験の規模としては、対象農薬数は2剤程度、複数の濃度区(2濃度区程度)を設定し、1濃度区当たりの反復数は2、対照区の反復数は4程度とする。
なお、土壌及び水質に係る農薬濃度分析については、環境省が別途発注する分析業者が実施するため、分析業者と連絡調整の上、採取した検体が地方試験の実施者から分析業者へ送られるように調整すること(試料採取に係る器具の調達と配布及び試料の送料は分析業者が負担)。なお、分析結果は分析業者から請負者及び地方機関の実施者に送付されることとする。
地方試験の生物調査及び水質調査のデータについては、地方試験の実施者が解析できるよう、請負者が地方試験の実施者に説明するとともに、サポートする

? 試験方法の検討にかかる課題について考察
過年度業務及び?の止水式メソコズム試験で得られた結果を踏まえ、農薬の環境影響の評価の再現性を確保するため、1) 試験対象生物種及びモニタリング手法の妥当性、2) 作用機序の異なる農薬が生物群集に及ぼす影響やその後の回復性の評価に必要な農薬濃度や試験期間の設定のあり方及び3) 出現頻度の少ない種や大分類による評価を可能にする解析・評価方法のあり方等、止水式メソコズム試験法の開発に向けた課題について考察の結果を取りまとめる。

? 実用化に向けた試験結果の解析・評価方法の検討
?の止水式メソコズム試験で得られた結果を基にして、生物群集の異なる地域の間で解析の結果がどのように変化するのかについて比較検討を行って、再現性が担保されているかどうか検討を行う。
また、解析の結果を踏まえ、既存の解析方法では検出できない現象をその他の解析方法により補うことも含めて、複数の農薬を比較する際の具体的な評価方法について、評価事項、評価時点等の整理を行う。
さらに、「平成27年度農薬による生物多様性への影響調査業務」の結果として取りまとめられた、現場で活用することを可能とする「メソコズムを用いた生態系に対する農薬リスク評価マニュアル」(以下「マニュアル」という。)(案)に、現場での実施可能性の観点から記述を加除する。特に、作業者の手間を勘案して、試料の採取や分析頻度は極力下げ、代わりに、これまでの業務成果から、測定しなくても十分であることを示すための記載を追加する。また、結果の解析の方法については、直感的に理解しやすいものとし、過年度業務の結果からわかりやすい事例をケーススタディとして記載する。マニュアルの作成に際しては、地域で環境保全型や、農業現場の実態に詳しい専門家および実務者から意見を聴取し、改善を加えることにより、実際に現場で使用できるマニュアルとする

外部との連携

宮城大学、新潟大学、福井県農業試験場、広島県立総合技術研究所、佐賀大学

課題代表者

五箇 公一

  • 生物多様性領域
    生態リスク評価・対策研究室
  • 室長(研究)
  • 農学博士
  • 生物学,農学,化学
portrait

担当者

  • 降幡 駿介