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地域の水環境保全に向けた水質改善・評価手法の開発プロジェクト(平成 29年度)
Project to develop water quality improvement and assessment methods for aquatic environment conservation

予算区分
AA 課題解決型
研究課題コード
1620AA047
開始/終了年度
2016~2020年
キーワード(日本語)
水質保全,富栄養化,水循環 ,健全性,衛生指標,コベネフィット環境技術
キーワード(英語)
Water quality conservation,Eutrophication,Water cycle,Soundness,Public health index,Co-benefit environmental Technology

研究概要

 アジア地域の開発途上国では、社会経済的な制約等から水環境保全技術(排水処理技術)の導入が遅れており、水質汚濁(富栄養化)や感染症などのリスクが増大している。また国内においても、水域における底質の悪化をはじめとする環境問題が顕著化している。また、排水処理に伴う多大な電力消費・余剰汚泥等の発生や不適切処理・放流の結果生じる水域からの温室効果ガスの発生など解決すべき問題は多い。一方、水環境管理の観点から、排水処理技術の導入等による有機物や栄養塩の濃度に基づく量的な規制が行われてきたが、必ずしも放流先の水域での分解特性、水利用特性等を管理に反映できていなかった。社会経済的な制限下で、実効的な水質改善・管理を行うためには、適地型技術の開発と、処理水及び水域の複合的評価手法の開発・適用による保全・管理技術の評価と最適化を総合的に推し進めていく必要がある。本研究プロジェクトでは、これらの技術開発、評価手法開発とそれらの統合化により、地域や水域の特性等に応じた水質改善・管理手法を提案することを目的とする。
 本プロジェクトは、主として複数の水環境保全技術の開発に主眼を置いたサブテーマ1とと地域や水域の特性を包含した評価手法を開発し、保全・管理技術の評価に反映するサブテーマ2から構成される。サブテーマ1の地域特性に応じた水環境保全技術の開発、サブテーマ2の水域の炭素・窒素の代謝特性の把握や微生物学的な解析などの多様な指標に基づく健全性評価、排水インベントリ等に基づく技術評価・水資源への影響評価とそれらの統合化により、地域・水域の特性や社会経済環境等に応じた水環境改善技術や水域の管理手法を提案する。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

H28〜H30年度:地域特性や社会経済環境に応じた複数の水環境保全技術の開発・実証と技術評価を行う。排水や処理水の影響下にある水域における炭素・窒素化合物等の代謝特性や指標となる微生物群の評価など多様な指標に基づく水域の複合的評価手法の開発とリスク評価(衛生学的リスク、温室効果ガスの発生、富栄養化など)を行う。H31〜H32年度:水域の複合的評価手法の開発と水環境保全技術の開発・実証のとりまとめを行う。地域特性や水域の健全性を考慮した管理手法および適地型水質保全技術を提案し、その導入効果を検証する事で、国内やアジア地域の新興国における健全な水域の保全に貢献する。

今年度の研究概要

サブテーマ1:適地型水環境保全技術の開発
 生活排水を処理対象とする適地型排水処理技術(好気性ろ床法)のタイにおける性能実証評価試験を継続し、基本的な処理性能評価(水質、余剰汚泥発生量など)を行う。また、集合住宅における排水の排出パターンを調査するとともに、処理プロセスへの影響評価を行う。民間企業の社宅に実規模導入される装置の詳細設計と試運転を行う。
 メタン発酵処理技術の化学物質含有排水処理への適用性評価を継続し、今年度は特に水酸化テトラメチルアンモニウムの処理特性の評価を行う。
 微生物電気化学的な手法の適用による底質からの栄養塩放出抑制効果に関する検証を淡水湖沼底泥について行う。具体的には、底泥間隙水中のリン酸イオン濃度の低減効果が認められた霞ヶ浦底泥を対象に、微生物燃料電池(SMFC)を設置した場合としなかった場合の直上水の水質への影響比較を行う。また電極周辺の底泥および間隙水の質的な変化を微小電極の適用により評価する。

サブテーマ2:多様な指標に基づく水環境及びその保全技術の評価手法の開発
 水域の多様な指標に基づく水質評価については、排水・処理水それらの影響下にある環境水の有機物や微生物学的な特性評価(細菌相、藻類、衛生指標菌の解析)を国内および開発途上国を対象として行う。具体的には、国内の下水処理場の各処理プロセス、及び処理水放流後における河川水での水質特性(有機物、安定同位体比)の季節変化を把握すると共に、雨天時における河川水及び湖水の水質特性への影響など、異なる条件下での処理水の影響について検証を進める。また、様々な下水処理方式がその放流先に与える影響についても評価を行う。
 生活排水(下水)による水質汚染の微生物学的な側面からの評価を行うために、バンコクのカナル水を対象として細菌の16S rRNA遺伝子および真核生物の18S rRNA遺伝子を標的とした網羅的微生物相解析を行う。また、汚染が深刻なカナル水から高頻度に検出された病原菌を含むCampylobacteraceae科の細菌の環境水中での挙動を明らかにし、健康リスクへの評価の可能性について検討を行う。
 実装に適した水環境保全技術(排水処理技術)を評価・選定する手法を開発するために、前年度開発を進めた人口分布に基づく排水インベントリーの算定手法を精緻化し、既存の下水処理区毎に生活排水および汚濁負荷の処理機能評価を行うためのインターフェースの開発を進める。同時に、算定結果の信頼性を高めるための検証方法を検討する。

外部との連携

タイ カセサート大学、コンケン大学、バンコク首都圏庁、岐阜高専、群馬大学、金沢大学、新潟薬科大学 その他 民間企業

課題代表者

珠坪 一晃

  • 地域環境保全領域
  • 副領域長
  • 博士(工学) エネルギー・環境工学
  • 工学,土木工学,生物学
portrait

担当者