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捕獲鳥獣の適正かつ効率的な処理システムの構築に関する研究(平成 29年度)
Establishment of appropriate and efficient disposal system for captured wildlife

予算区分
BE 環境-推進費(補助金)
研究課題コード
1617BE001
開始/終了年度
2016~2017年
キーワード(日本語)
捕獲鳥獣,ニホンジカ,イノシシ,エゾシカ,指定管理鳥獣,廃棄物処理システム
キーワード(英語)
captured wildlife,Japanese deer,wild boar,Yezo deer,designated species,waste treatment system

研究概要

 近年、有害鳥獣の捕獲圧が低下し、ニホンジカ等大型鳥獣により農林業・生活環境・生態系に深刻な被害をもたらしている。大型鳥獣の生息数変化は生態系や農業への影響が懸念される反面、駆除した個体の処理方針が定まっていないために駆除計画の策定・推進に慎重な自治体が多いのが現状である。福島県では原子力発電所の事故に伴い、放射性物質への曝露が懸念されるイノシシ等の対応に迫られている。家畜感染症に罹患した個体と同様、汚染の拡散・二次的な健康被害を防ぎ、速やかに生活・自然環境への影響を削減するためには、駆除から処理までの一体的な鳥獣類管理体制の構築が喫緊の課題となっている。一方で、自治体における捕獲鳥獣の処理では、未だ廃棄物処理システムとの接続が不十分であり、焼却施設への受入れにあたっての施設への収集輸送、住民の理解、炉投入時のサイズ超過、埋設処分の際の環境安全性に対する懸念等が課題である。こうした懸念を払拭し捕獲鳥獣等を安定して処理するためには、自治体の部局横断的な連携により、一般廃棄物処理システムを活用した体制整備が求められる。以上のことから本研究では、大型鳥獣を一般廃棄物処理施設で受入れるための技術上の課題を明らかにし、既存の廃棄物処理システムへの円滑な接続のための検討を行う。有害鳥獣等の適正かつ効率的な処理・活用に係る体系的なシステムの研究を行う。地域的な有害鳥獣の必要捕獲数と収集輸送、食肉・堆肥としての活用、廃棄物処理システム側の受入れ容量のバランスを考慮した駆除計画のあり方を提示する。その上で、燃焼炉への投入を含む作業安全性を確保し、自治体等の施設を効果的に活用するための大型鳥獣の減容化プロセスを検討する。既存の廃棄物処理システムに減容化プロセスを包含した、駆除から処理までの一体的な事業スキームを提示する。福島県における捕獲イノシシの処理においては、放射性物質への対策も合わせて提示する。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

(1)捕獲鳥獣の発生分布と収集運搬ロジスティックスに関する研究
指定管理鳥獣(イノシカ・ニホンジカ)等について、駆除計画策定状況と駆除数のトレンド、駆除鳥獣の活用や処理フロー等を明らかにする。地域内での駆除鳥獣の発生分布と集積場・清掃工場の位置から、効率的な収集運搬手段、減容化拠点の配置、処理必要量を求める。
(2)捕獲鳥獣の高温生物処理に関する検討
捕獲鳥獣の効率的な減容化処理技術の実証的検討を行う。高温生物処理は体液も含めた個体全体を処理でき、切断等の減容化に比べ作業安全・衛生リスクの低減と排水処理費用の削減という利点がある。反面、部位毎の分解性の違いや処理の安定性が懸念されるため、鳥獣の減容化特性の解明及び、円滑な減容化のための発酵微生物群の導入について検討する。焼却処理への搬入と作業者の安全確保に配慮した作業指針を策定する。
(3)放射性物質に汚染されたイノシシの高温生物処理に関する検討
原子力発電所事故由来の放射性物質に汚染されたイノシシ等の鳥獣は、捕獲・減容化・処理処分において、放射線防護や汚染拡散防止に配慮する必要がある。放射性物質の含有実態を踏まえ、高温生物処理による減容化における放射性物質の挙動を解明し、移送・減容化・焼却での作業安全確保と放射性物質の拡散防止に配慮した作業指針を策定する。
(4)自治体等による総合的な適正処理システムの構築
上記の成果を踏まえ、鳥獣管理計画と一般廃棄物処理システムの接続を意識した包括的な処理システムの設計手法を提案する。既存の市町村(及び一部事務組合)単位又は広域自治体単位の処理システム導入を念頭に置いた、コスト評価及び資金調達を含む事業スキームを検討する。安定した処理システムを背景とした有害鳥獣等の捕獲推進を以て、鳥獣の適正な管理に資する。

今年度の研究概要

前年度とは異なる複数の調査地を設定し、捕獲数やその変動要因、搬出実態等を調査する。捕獲鳥獣の個体差を考慮し、重量ベースのマテリアルフローを検討する。各処理過程におけるコスト・処理能力・キャパシティ等の情報、全国の捕獲奨励金の設定状況、地域レベルでの各処理フローの具体的な事例等について調査し、より現実的な事業スキームを提案する。鳥獣捕獲に精通する有識者に加え、自治体担当者や捕獲者等のステークホルダーによるワークショップを開催し、課題や解決策を整理する。
現場を模した室内実験により、筋肉・脂肪等の複数部位ごとの発酵減容化の進行度を定量的に評価する。現場から持ち帰った菌床を用いた減容化の進行度の評価手法を確立する。菌床からの臭気発生ポテンシャルを評価し、また減容化プロセスを数理モデルにより表現することで、減容化施設の設計および運転に資する技術的な情報を提供する。円滑に高温での減容化をすすめるために必要な発酵微生物群の開発と運転管理手法を開発する。
福島県内において捕獲されたイノシシの筋肉及び各臓器の放射性セシウム含有実態を把握し、減容化に必要な施設規模と運転期間等の設定に必要な情報を集積する。放射性セシウムに汚染されたイノシシの高温発酵における個体の減容化過程とセシウムの消長について明らかにする。減容化過程における放射性セシウムの飛散、作業環境保全、周辺環境影響を評価する。

外部との連携

北海道大学、福島県

課題代表者

山田 正人

  • 資源循環領域
    廃棄物処理処分技術研究室
  • 室長(研究)
  • 京都大学博士(工学)
  • 工学,生物工学,化学工学
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担当者