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海域における水質管理に係わる栄養塩・底層溶存酸素状況把握に関する研究(平成 29年度)
Monitoring and data analysis of dissolved oxygen in bottom layer and nutrients status relevant to water quality management in coastal sea

予算区分
AH 地環研
研究課題コード
1720AH001
開始/終了年度
2017~2020年
キーワード(日本語)
貧酸素水塊,新水質環境基準,栄養塩,物質循環,沿岸海域
キーワード(英語)
Hypoxia, New water quality criteria, Nutrients, Biogeochemical cycle, coastal seas

研究概要

環境省が新しい水質環境基準として海域の底層DOの設定を行いつつある。しかし総量規制対象外の海域では底層DOが測定されているとは限らず,全国の沿岸海域での貧酸素水塊発生状況は充分に把握されていない。一方,一部の沿岸海域では栄養塩が低下し養殖ノリの色落ち等が見られ,貧栄養状態になっているという指摘もある。公共用水域常時監視においては,栄養塩や植物プランクトンの指標であるクロロフィルa,それに貧酸素水塊形成に係る有機物分解によるDO消費等の,海域環境における物質循環を評価するための項目が測定されているとは限らない。以上から本課題では,前課題に引き続き上記の項目の測定に加えて,栄養塩の主成分の無機態の窒素が有機態窒素の分解により供給される度合を評価するための実験室内での試験を行う。公共用水域常時監視により底層DOや栄養塩,クロロフィル等のデータが整備されている場合には,それらの関係性,時空間分布や変遷について解析を行う。以上を通じて沿岸海域における栄養塩状態(貧栄養・富栄養)の把握,貧酸素水塊生成要因に関する知見を集積し,新規水質環境基準達成のための方策に資することを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

底層DOの現場観測や栄養塩類,BODを含む有機物指標の測定やDON分解・DIN生成試験を行い,得られたデータの整理と解析を行う。また公共用水域常時監視で得られている既存の水質データの解析においては,物質循環に係る諸項目間の関連の解析を行う。以上で得られた知見をもとに報告書を取りまとめる。

今年度の研究概要

平成29年度:前課題(過年度)に引き続き,多項目水質計を用いた底層DOの現場測定や採水試料の栄養塩類,クロロフィルaやCOD関連有機物項目や海域版BODの測定を行う。また本提案課題における新規実施事項である有機態窒素(DON)から無機態窒素(硝酸態・アンモニア態窒素:DIN)生成能を評価するための試験方法(試水ろ過方法,分解期間等)の検討を行う。
公共用水域常時監視のデータの解析については,対象調査点の選定のためにデータの充実度の確認,時系列解析が可能なように整理を行う。

備考

本研究提案は,現行のII型共同研究課題である「沿岸海域環境の物質循環現状把握と変遷解析に関する研究」(平成28年度終了)に参加している地方環境研究機関にアンケート調査を行い,研究課題として要望の多かった底層DOや栄養塩,COD・BOD関連有機物項目の測定,あるいは現場調査や測定を行わない既存の公共用水域常時監視等で取得された物資循環に係わる水質データの解析を課題として盛り込み,研究機関により実施可能な項目を選択して参加して頂くことを想定している。
前課題と現行の課題,並びに本提案課題を通じて定点観測を継続して行うことにより,底層DOやCOD関連有機物項目,栄養塩について10年近くのデータを蓄積することになり,中期的変動についてある程度の評価や全国的な濃度分布の比較検討が可能になると考えられる。
以上のことから,全国の各海域における新規水質環境基準である底層DOの低下要因と貧栄養を含む栄養塩状態を広範囲に把握することにより,沿岸海域環境における水質管理上,有益な知見を得られると考えている。

課題代表者

牧 秀明

  • 地域環境保全領域
    海域環境研究室
  • 主幹研究員
  • 工学博士
  • 生物工学
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