ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

エピジェネティック活性をもつ化学物質の影響把握と新たな環境リスクの予防策(平成 29年度)
Detection of chemical substances with epigenetic activity to protect environmental risk by the adverse outcome pathway approach

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1518CD003
開始/終了年度
2015~2018年
キーワード(日本語)
エピジェネティクス,化学物質管理,毒性発現経路,エピミュータジェン
キーワード(英語)
epigenetics,chemicals management,adverse outcome pathway,epimutagen

研究概要

本研究課題では、「エピミュータジェン」の存在を把握するために、第一目標として、既存の発がん物質及び環境媒体中高濃度高頻度に検出される環境化学物質等から100物質を情報科学的に選定する。100物質を短期間で測定できるアッセイ系を構築する。100物質の影響を検出するために、エピジェネティック制御機構のうち、DNA(CpG)メチル化、ヒストン修飾変動の2指標をエンドポイントとした高速・精緻な検出系を開発する。これによって、ハイスループットで確実なエピジェネティクス変動物質の検出を実施するとともに、発生・分化、発がんに関与する化学物質の再整理を行う。第二目標として、エピミュータジェンの環境リスクへの予防策の開発を行う。すなわち、量反応関係解析からの最小影響量の算定、バイオインフォマティクス解析による毒性影響予測の解析を行い、最小影響量とヒト、生物への影響曝露との差を提示する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

細胞アッセイを基盤とした、エピジェネティック制御のメカニズム指標による網羅的な検出系を確立する。その後、化学物質の量反応関係を網羅的に解析し、構造活性相関解析を行う。これらのデータを用いて、毒性影響の予測解析を行う。そのために、本研究課題を二つのテーマ(目標)に分ける。
テーマ1.メカニズムベースの細胞アッセイ法の確立とハイスループットスクリーニングの実施
分担課題1) DNA(CpG)メチル化変動を指標とした次世代影響検出法の開発と影響解析
分担課題2) ヒストン修飾変動を指標とした次世代影響検出法の開発と細胞・個体レベルの比較検証
テーマ2.エピミュータジェンの環境リスクへの予防策の開発
分担課題3)環境中の遺伝毒性物質、非遺伝毒性物質及びエピゲノム毒性物質の影響比較と予測
システムの構築
H27 1.GFP標識メチル化結合蛋白質及びヘテロクロマチン形態の変動のセンシング蛋白を導入したES細胞を蛍光イメージング法によってハイスループットに解析する手法を確立する。2.遺伝毒性物質、非遺伝毒性物質及びエピミュータジェンの影響比較手法の確立を行う。
H28以降 1.確立したハイスループット手法を用いて化学物質のスクリーニングを行う。2..遺伝毒性物質、非遺伝毒性物質、催奇形成物質、生殖発生毒性物質及びエピミュータジェンとの影響比較を行い、予防策の開発を目指す。

今年度の研究概要

メカニズムベースの細胞アッセイ法の開発においては、引き続き、エピジェネティック陽性物質及び放射線に関する毒性影響を解析し、時間軸、濃度軸、量反応関係によるエピジェネティック制御の変動と影響の顕在化の時間的溝を解析する。メチル化DNA配列の解析を行いグローバルなメチル化変動を調べ、化学物質特異的位置があるかどうかを検証し、ヒストン修飾変動との関係性を検討する。化学物質が複数のエピゲノム修飾に対して与える影響が考えられる場合のために、修飾ごとに異なる蛍光色素で可視化する細胞を作製し、瞬時に影響の違いが把握できる複合評価システムを構築する。影響のあった物質について、個体レベルでのエピジェネティック制御の変動を解析する。遺伝毒性物質、非遺伝毒性物質、化学物質以外の環境要因とエピゲノム毒性物質の影響比較と予測を行うために、化学物質100種を既存の健康影響及び生態影響から情報科学の手法を活用して選定し、量反応解析のためのハイスループットによるアッセイを実施する。
エピミュータジェンの環境リスクへの予防策の開発では、陽性対照物質を用いてメチル化、アセチル化及びDNA損傷の3指標の相互関係をバイオインフォマティクスの解析により検討する。ベイジアンネットワークの計算力向上のための改良を実施し、毒性情報に関するデータを収集し、既存遺伝毒性と非遺伝毒性の毒性との違いを解析する。また、ベイジアンネットワークで得られたネットワーク構造や確率値を用いた判別解析を検討し、初期のイベントと顕在化する毒性影響との関係を明確に予測できる手法を検討する。さらに、低メチル化アリル検出とウルトラディープ解析の組み
わせによるヘテロな細胞集団で特定の遺伝子を発現する細胞の検出法を用いて、発生の初期と後期におけるDNAメチル化状態の変化を高感度に検出する方法の高度化を行う。

外部との連携

分担研究機関:京都大学、東京大学、明治大学、理化学研究所、早稲田大学

課題代表者

曽根 秀子

担当者