- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1922CD005
- 開始/終了年度
- 2019~2022年
- キーワード(日本語)
- リン,有機態リン,分子量
- キーワード(英語)
- phosphorus,organic phosphorus,molecular size
研究概要
本研究は,近年の気候変動に伴う水環境の変化,特に塩分変動によって底泥から供給されるリンフラックスの変化を明らかにするものである.水環境における物質の中でも,とりわけリンは富栄養化において最も重要な物質の一つである.植物プランクトンに最も利用されやすい形態は溶存性無機態リンであるが,有機態リンはその供給源として存在しており,近年,有機態リンが植物プランクトンの増殖に寄与していることが世界中の湖で報告されている.沿岸域にある湖沼では海域と湖沼とで潮汐による海水交換の影響を受けるため,海面の上昇は,汽水域を拡大及び,塩分を増加させる.塩分上昇によって,無機態リンのみならず,有機態リンも底泥固相から液相へと放出されるため,本研究では,塩分上昇に伴って固相から液相へと放出される有機態リンの形態と分子量やフラックスはどの程度上昇するか?それらの生物利用可能性はどの程度か?という学術的な問いについて検証を行うことを目的とする.
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
1年目 1年目には塩分上昇の際に溶出する有機態リン関する検証を行う.最初に対象となる湖沼において観測を行い,塩分の変化及び,リン濃度の変化についてモニタリングを行う.また,採取した底泥に対して,塩分を加えた溶媒を添加し,好気条件下で一定時間培養することで適切な培養時間の検証を行う.本実験では実際の湖水に塩分を添加し,塩分によって,どの程度吸脱着平衡が変化するかについて検証を行う.
2年目 底泥から溶出したリンの化合物を計測するため,31P-NMR法を用いた底泥固相に含まれるリン化合物及び,液相に含まれるリン化合物の分析の検討を行う.霞ヶ浦,宍道湖の両方において,塩分上昇に伴って溶出するリン化合物・分子量に関して本実験を行う.分子量分画には限外濾過膜(5,000 Dalton)を用いて高分子・低分子に分け,大まかな分子量の計測を行う.また,塩分で溶出したサンプルについて,好気条件下で分解実験を一カ月程度で行い,有機態リンの分解速度の計測を行う.
3年目 3年目には無機態リンの吸脱着実験を行い,2年目に行ったリン化合物の実験結果と併せて,リン吸脱着モデルに導入することで塩分上昇した際のシナリオ解析を行う.底泥から溶出しうるリンのフラックスがどの程度変化するかについて,様々な塩分条件下におけるシナリオ解析を行う.
今年度の研究概要
今年度は塩分上昇の際に溶出する有機態リン関する検証を行う.最初に霞ヶ浦において採取した底泥に対して,塩分を加えた溶媒を添加し,好気条件下で一定時間培養することで適切な培養時間の検証を行う.本実験では実際の湖水に塩分を添加し,塩分によって,どの程度吸脱着平衡が変化するかについて検証を行う.分子量分画の際には、限外濾過膜を用いて高分子・低分子に分けてそれぞれに含まれるリンの濃度を観測する。
課題代表者
篠原 隆一郎
- 地域環境保全領域
湖沼河川研究室 - 主任研究員
- 博士(環境学)
- 土木工学,工学,地理学