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環境DNAを用いた回遊性魚類の移動経路の回復と生息地復元に基づく流域生態系の再生(平成 31年度)
Watershed ecosystem restoration based on the recovery of migration pass and diadromous fish habitat using eDNA

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1822CD002
開始/終了年度
2018~2022年
キーワード(日本語)
流域生態系,自然再生,ウナギ,回遊魚,環境DNA,魚道
キーワード(英語)
watershed ecosystem, nature restoration, eel, mratory fish, environmental DNA, fish pass

研究概要

ニホンウナギを始めとする回遊性魚類の移動経路の回復によって生息環境の復元を図り、淡水魚類の資源と生態系の豊かな流域を再生する。近年全国的にもニホンウナギの減少が著しい瀬戸内海地域を対象地とし、一級河川及び主要流入水系において社会実装を目指す。
回遊性魚類の資源回復のためには、本来彼らが利用していた上流域の生息適地まで各個体を分散させる事が重要である。更に、上流域の生息地の回復は、現在急務とされている温暖化適応の面において最も有効な緩和策と考えられる。この流域再生で最も肝心な点は、「回遊経路上最も致命的である構造物(以後;最終魚止め構造物)」を特定し、魚道やスリット化等の効果的な移動経路の確保を行うことである。
本研究では環境DNA分析を用いて調査地点の魚類の在/不在の判断を行い、厳密に最終魚止め構造物を特定する。また、流域ビッグデータを活用した空間情報解析を行い、構造物の改修を通して再生される生息環境の定量的な評価を行う。さらにこの生態学的な評価に加え、減災や水資源管理等の地域事情を総合的に判断し、最終的な再生地域の優先順位付けを行う。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

本研究は5ヵ年計画となっており、(1)現地調査(環境DNAサンプリング)、(2)情報統合による流域ビッグデータベースの構築、(3)空間情報解析生息地評価&候補地選定を順次4年間で実施し、主に最終の2年間で研究成果を基に対象地域における社会実装を実現する。
(1)現地調査による環境DNA分析(H30-33年);瀬戸内海地域の一級河川および主要流入河川における「主要支流」の構造物を予めGISデータ化し、その堤高・平水流量・下流域の分流履歴等のデータを基に環境DNAサンプリングの場所を絞り込み、現地調査地点とする。調査期間はH30-33の4年間に分けて行い、一年に平均5-8水系を目標に現地データを収集する。現地では採水またはフィルターろ過を行い、それらを冷蔵状態で研究所に持ち帰り、速やかに環境DNAの分析を行う。
(2)流域ビッグデータベースの構築(H30-34年);流域基盤データと環境DNA分析結果を含む生物生息情報から構成し、全データを一元的に利用可能なGIS環境(ArcGIS)で整備し流域評価を行う。解析に必要な流域基盤データは毎年追加し続け、H32年度末を目処に完成させる。
(3)空間情報解析による生息地評価&候補地選定(H31-34年);(1)と(2)の結果から最終魚止め上流の上流域を対象に、回遊魚類の生息場としての評価を行い、最終的に候補地を選定した後、(4)の段階で総括的に流域管理における提言をまとめる。

今年度の研究概要

研究初年度である2018年度は、1) 現地調査による環境DNA試料の採取と分析、および2)流域ビッグデータベースの構築を中心に研究を実施した。
1)環境DNA試料の採取と分析では、主に2018年9-10月、瀬戸内海流入流域の九州沿岸・中国地方の現地調査を行い、82地点においてステリベックスを用いた試料採取を実施した。対象河川は上記対象範囲におけるすべての一級河川(13流域)および、主要2級河川である。
2)流域ビッグデータベースの構築では、流域基盤データ(横断構造物データ・土地利用データ・河川流路データ・水質データ等)に加え、国勢調査データ、水産統計データを入手しGISデータとして全国レベルで整備した。水産統計に関する情報としては、農林水産省(漁業センサス)・海面漁業生産統計調査・遊漁採捕量調査等を入手し、各県別・流域別にGISデータ化を行った。
研究成果としては年度前半に予備解析を行い、和歌山県における「アカザ:Liobagrus reini)」、香川県における「アブラボテ:Tanakia limbata」等といった、各県レベルでの絶滅危惧淡水魚類が、既存調査データで未発見の地点から検出された。
今年度の誌上発表等の成果は以下のとおりである
【誌上発表】
亀山哲(分担執筆),安田喜憲ほか編(2019)統計学を用いた二ホンウナギの生息適地の推定〜森里川海の絆の再生による自然共生社会の実現を目指して〜,文明の世紀,pp.131-150, 株式会社インプレスPOD出版サービス,【ISBN 9784802095907】
【招聘講演】
亀山哲,今藤夏子,松崎慎一郎(2018)ウナギを育む、豊かな森川里海の絆と幸福な人の暮らし(その3)~GIS解析と環境DNA分析の統合を目指して~第14回GISコミュニティフォーラム, 2018年5月,東京
【環境教育活動】
亀山哲,岡健太,YE Feng(2018) 水生生物と川の環境〜アクアリウムから考える森里川海の繋がりと流域生態系〜, 筑協「サイエンスQ」プログラム,2019年1月,つくば市

外部との連携

本研究は、次の外部研究機関との連携および支援に基づき推進されている。国環研PJ5-3研究「絶滅危惧種を対象とした流域圏における回遊環境の保全と再生」科研費基盤A(笠井亮秀代表)「環境DNAを用いた全国の河川におけるニホンウナギの分布・生息量推定」日本財団・京都大学(山下洋代表)「森里海連環学研究プログラム-Link Agaiつなごう森里海-」

課題代表者

亀山 哲

  • 生物多様性領域
    生態系機能評価研究室
  • 主幹研究員
  • 農学博士
  • 生物学,情報学,農学
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担当者