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南大洋季節海氷域における糞粒様渦鞭毛虫の動態と生態学的役割(令和 2年度)
Dynamics and ecological roles of fecal pellets-like dinoflagellates in the seasonal ice zone of the Southern Ocean

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
2023CD003
開始/終了年度
2020~2023年
キーワード(日本語)
南大洋,季節海氷域,渦鞭毛虫,生物ポンプ
キーワード(英語)
Southern Ocean,seasonal ice zone,dinoflagellate,biological pump

研究概要

南大洋における海氷融解期の海氷縁辺域は大規模な植物プランクトンブルームが生じることから、食物網や物質循環の視点からその重要性が指摘されているが、設営的な困難さから研究の空白域となっている。この領域に挑戦した漂流系観測において、申請者らは糞粒様沈降粒子の平均約3割が渦鞭毛虫であることを見出した。これまで単に沈降する糞粒と見なされてきたものが摂餌と遊泳力や走性、生理活性を有する生物である場合、その動態によっては季節海氷域における炭素循環像がミスリードされてきたことになる。本申請課題では季節海氷域における糞粒様渦鞭毛虫の生態と生態系内における役割解明を目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

これまでの分析データから糞粒様渦鞭毛虫は夏季の表層混合層より下層に沈降していることが明らかになった。本研究課題では、季節海氷域における物質循環を把握するため、糞粒様渦鞭毛虫およびその糞が表層から亜表層に沈降した後、炭素深層隔離に繋がるのか?亜表層の動物群集に消費されて消失するのか?に焦点を当て、以下の通り観測・研究を進める。

2020年度
・米マクレーン社の時系列採水システムRemote Access Sampler (RAS-500)を購入し、年度後半に動作試験を実施。
・これまでに取得した沈降粒子試料を用いて形態的な特徴に基づいていくつかのタイプに大別し、それぞれをDNA解析で確認することで、顕微鏡下で同定・定量する手法を確立するとともに、単一種で構成されているかを確認。
・対象海域の海色衛星データと南極観測で蓄積されたクロロフィルデータを再整理して、漂流系の投入地点、およびセンサー類の設置深度を検討

2021年度
・漂流系観測: 機材の調達・整備を行い、12月から1月に現場観測を実施。
・その他: 2020年度同様に観察・同定手法の確立、蓄積されたデータの再解析を進め、それらの公表を進める。

2022年度
・漂流系観測: 年変動する環境要因と生態系構造・物質循環との関係を把握するため前年度 と同様の観測(経過を見て一部変更する可能性あり)を実施。
・分析・解析: 2021年度に得られたサンプルの分析およびセンサーデータの解析。

2023年度
・分析・解析: 2022年度の観測で得られた試料およびセンサーデータの分析・解析を前年度 と同様に実施。
・成果公表: 対象海域における渦鞭毛虫の生態と炭素循環における役割を評価し、国内外の 学会で発表を行うほか、論文を公表する。

今年度の研究概要

・時系列採水システムの動作試験実施(真壁)。
・既存の沈降粒子試料を用いて形態的な特徴に基づくタイプ別に分類し、それぞれをDNA解析で確認。また、顕微鏡下で同定・定量する手法を確立するとともに、単一種で構成されているかを確認 (黒沢、佐野)。
・対象海域の海色衛星データと南極観測で蓄積されたクロロフィルデータを再整理して、漂流系の投入地点、およびセンサー類の設置深度を検討(高尾)
・昨年度実施した漂流系実験の沈降粒子試料を分析し、2021年度の自動採水システムを導入したフルスペック観測の詳細を検討 (真壁・佐野・黒沢)。
・これまでに蓄積してきた漂流系センサーデータの解析 (高尾・真壁)。

外部との連携

研究代表者: 真壁竜介(国立極地研究所)
研究分担者: 黒沢則夫(創価大学)、佐野雅美(国立極地研究所)

課題代表者

高尾 信太郎

  • 地球システム領域
    大気・海洋モニタリング推進室
  • 主任研究員
  • 博士(環境科学)
  • 生物学,物理学
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