- 予算区分
- BD 環境-環境技術
- 研究課題コード
- 1011BD001
- 開始/終了年度
- 2010~2011年
- キーワード(日本語)
- 生態リスク評価,内分泌かく乱物質,繁殖毒性試験
- キーワード(英語)
- Ecological risk assessment, Endocrine disrupting chemicals, Reproduction toxicity test
研究概要
ミジンコの繁殖阻害試験(OECD TG211)のデータを基にして生態系におけるポピュレーションダイナミクスを解析した例は多数あるが、母系からの影響、産仔仔虫性比の影響、スパイク曝露と連続暴露の違い、回復性試験などの結果について数理学的考察を加えて生態リスクを解析した例はほとんどない。試験法の条件設定の妥当性およびその解析法を融合させた、環境リスク評価に有効な新規手法を検討する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
無脊椎動物の内分泌かく乱化学物質をミジンコに曝露した場合、性比の変化とそれに伴う環境リスクに対する考え方を確認する。内分泌かく乱化学物質とそうでない物質との環境リスクを比較検討する場合の問題点について、かく乱作用のメカニズムを踏まえた上で精査する。例えば高感受性期について、濃度について、曝露停止後の回復性などについての検討を行う。
慢仮説性毒性試験の結果、PEC/PNECが1より大きいか小さいかの判断を基に環境リスクを評価する従来のやり方では、内分泌かく乱化学物質に関しては不十分な点がある。つまり、PECについては、環境中濃度の最高値であるが、環境中の半減期が短い物質については実際に測定されている値よりも一時的にせよもっと高濃度で存在している可能性がある。一方で、生物側では、化学物質の影響を受けやすい時期(高感受性期)がミジンコやメダカについても存在することが知られてきており、最悪のシナリオとしては高感受性期と高濃度曝露が重なった場合の環境リスクが考えられる。しかし、可能な最悪のシナリオがリスク評価として妥当であるのか、そのシナリオを描くためのデータは存在するのか、などについて考察はほとんど行われていない。逆に、一過性の曝露による影響が回復するのかどうかについて詳細な検討については、ヒト影響では存在するが環境影響ではあまり例をみない。
ミジンコの繁殖毒性試験を基本的なモデルとして、いくつかの環境条件のシナリオを反映させた試験を行い、得られる結果が、通常の結果とどの程度乖離するかどうかを確かめ、数理統計的なモデルからリスク評価を行うことによって、実際の環境中での化学物質のリスク評価に、本当に必要なデータおよび解析法について大きく資することが出来る。
今年度の研究概要
化学物質の内分泌撹乱作用の生態リスクを評価するために、性比撹乱効果(有性オス個体の過剰生産)を組み込んだミジンコの個体群モデルを作成する。性比撹乱の経世代影響を予測するために、休眠卵生産数に対する化学物質効果に着目した個体群レベル評価をおこなう。また、数理モデルによるシミュレーションに必要となる繁殖毒性試験データの収集を行う。幼若ホルモン作用をもち、すでにミジンコ雄仔虫生産誘導効果が確認されている昆虫成長制御剤をモデル化学物質として用いてOECD TG 211に準拠した繁殖毒性試験を行い、繁殖開始時期、産仔数、仔虫性比、試験個体の生死等のデータを得る。さらに、曝露シナリオの違いが産仔数や仔虫性比へどのように影響してくるのかを調べるために、平均曝露濃度は同じであるが一定濃度曝露の場合とパルス曝露の場合の2通りの曝露デザインで、OECD TG 211をベースとした実験を行う。
課題代表者
田中 嘉成
担当者
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鑪迫 典久