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人為的環境撹乱要因の生物多様性影響評価と管理手法に関する研究(平成 26年度)
The study for biodiversity impact assessment and management of artificial disturbance to environment

研究課題コード
1115AA053
開始/終了年度
2011~2015年
キーワード(日本語)
生物多様性条約,外来生物,遺伝子組換え植物,感染症,地球温暖化,生態影響
キーワード(英語)
The Convention of Biological Diversity, Alien Species, GMO, infectious disease, global worming, ecological impact

研究概要

COP10で採択されたポスト2010年目標(愛知ターゲット)においては、2020年までに外来生物の制御・根絶、生息地の劣化の抑制、温暖化影響の緩和が目標として掲げられ、同じく、COP/MOP5では遺伝子組換え生物の拡散による生物多様性影響の防止が議定書に盛り込まれている。これらの国際的動向とそれに呼応する国内対策を支援するための具体的データと対策手法を提示することが本課題の目的である。
 生物多様性の減少を招くとされる生物的要因(侵略的外来生物・遺伝子組換え生物)、および物理的要因(温暖化)の影響の実態を解明し、有効な管理施策を検討する。各要因がもたらす地域レベルもしくは広域レベルでの影響を生物多様性と生態系機能の評価軸によって統合的に評価するとともに、外来生物の防除、野生生物感染症の検疫、遺伝子組換え生物の分布拡大阻止、温暖化による植生変化に対する適応策など具体的対策手法を検討する。得られた研究成果を外来生物法、カルタヘナ法および農薬取締法などの関連法規の政策的運用に反映させ、最適な管理計画の実現を目指す。
 具体的に以下の3つのサブテーマを推進する。
サブテーマ1.侵略的外来生物による生物多様性影響評価と管理
外来生物の在来生物に対する影響を遺伝子、個体群、群集、生態系の各レベルにおいて評価する。目に見えない外来生物(野生生物感染症など)のモニタリング手法を開発する。外来生物の侵入経路・分布拡大プロセスを生態学的要因および経済学的・社会学的要因から解明する。GIS情報を駆使して、外来生物の生息適地を推定し、リスクマップを作成する。新規な防除技術を開発する。数理生態学的な手法によって、外来種の分布拡大予測モデルおよび、効率的防除戦略シナリオを導出する数理モデルを開発する。最適な管理計画の策定を試みる。

サブテーマ2.遺伝子組換え生物による生物多様性影響評価と管理
GMセイヨウアブラナが在来ナタネ類と交雑するリスクを評価するために、送粉昆虫によるGMセイヨウアブラナの花粉流動を明らかにする。雑種性が疑われる個体が発見された、GM個体と在来アブラナが混生する集団とその周辺環境下で実際に雑種形成が起きているのかを詳細な遺伝子分析を通じて確認する。雑種が確認された場合には、経年調査をおこない累代して雑種繁殖が起きているかを解析する。得られたデータを基に、組換え遺伝子の地域レベル・全国レベルの分布拡大モデルを開発する。

サブテーマ3.温暖化による生物多様性影響評価と管理
チベット高原を実験フィールドとして、気候変化および放牧・鉄道工事などの生息地かく乱が植物の分布、個体群動態、季節相、多様性に及ぼす影響の長期モニタリングを行ない、気候変化に伴う植物種の標高方向への移動状況(速度と量)、侵入種の有無と侵入速度、高山植物種の減少または絶滅を評価する。また、代表的な生態系において、高山植物の微環境や動物の生息地の物理環境(気温・土壌温度・降水・日射など)データの収集、整理と解析を行う。上記のすべてのデータを利用し、確率モデルやニッチモデルなどによって、代表的な植物種や群落または動物の温暖化による分布の変化を予測する。

今年度の研究概要

サブテーマ1 
外来アリ類については、検疫時における簡便な燻蒸法を検討し、侵入ルートを把握するために、港湾地域を中心にモニタリングを行う。セイヨウオオマルハナバチでは、野外における薬剤散布の生態影響を明らかにする。アルゼンチンアリでは、全国的に防除活動を展開し、防除ネットワークを構築する。対馬で侵入が確認されたツマアカスズメバチについては化学的防除の可能性を検討する。

サブテーマ2 
前年度に引き続きGMセイヨウアブラナの生育密度が高い地域について、セイヨウアブラナの空間分布を調査する。調査地周辺の昆虫を採取し付着花粉よりDNAを抽出して除草剤耐性遺伝子を検出する。昆虫採取については調査地域を100程度のメッシュに分けて、各メッシュ当たりの捕獲努力を一定にして実施する。

サブテーマ3
気候変動が高山生態系の生物多様性に及ぼす影響を把握するため、チベット高原の中部地域における長期モニタリング・移植実験の観測を継続し、植物の個体群動態の定量化を図る。過去から現在にかけてのサンゴ分布データの収集を進め、海水温と群集や代表種など指標の高度化を行い、気候変動モデルに反映させる。

外部との連携

筑波大学、中国科学院チベット研究所; 北京師範大学

課題代表者

五箇 公一

  • 生物多様性領域
    生態リスク評価・対策研究室
  • 室長(研究)
  • 農学博士
  • 生物学,農学,化学
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担当者