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2018年3月30日

二次有機エアロゾルの生成プロセス

コラム4

 大気に浮遊する粒子をエアロゾル粒子と呼びますが、このうち粒径が2.5μm以下のものをPM2.5と呼んでいます。エアロゾル粒子は、光を散乱・吸収したり雲の形成に関わったりすることで気候に影響を及ぼします。また、特にPM2.5は肺の奥まで届くことから人間の健康に影響を及ぼします。エアロゾル粒子には、ススや花粉などのように排出源から直接排出される粒子(一次粒子)のほか、ガスとして排出された物質が大気中での化学変化によって揮発性の乏しい物質へと変化し、それらの凝縮によって生成する粒子があります(二次粒子)。揮発性有機化合物(VOC)の化学変化で生成する二次有機エアロゾル粒子はPM2.5の主成分です。二次有機エアロゾル粒子は、複雑な化学プロセスを経て生成するため、とくに理解が遅れています。

 図3は、研究所のスモッグチャンバーでVOCの一種であるトルエンを用いた実験の結果を示しています。トルエンと一酸化窒素はいずれも都市大気中に存在するガス状の汚染物質です。化学反応によってトルエンの酸化が進むにつれ、一酸化窒素(NO)が二酸化窒素(NO2)に変換され、その後オゾンや二次有機エアロゾルが生成していることが分かります。光化学反応により有機物は酸化あるいは分解されます。一般に、有機物の酸化が進むほど生成する有機物の揮発性は低下します。例えば、炭素を二つ持つ有機物を酸化が進む順に並べると、エタン(気体)、アセトアルデヒド(気体~液体)、そして酢酸(液体~固体)となります。トルエンの酸化によって生成する生成物は、その詳細については十分には分かっていませんが、エタンの例と同様にトルエンよりも低い揮発性をもつと考えられます。既存の粒子上に揮発性の低い酸化生成物が凝縮することで、粒子が成長すると考えられています。

 研究所では、2005年ごろから液体クロマトグラフ質量分析計による二次有機エアロゾルの化学分析を開始しました。トルエンの酸化で生成するエアロゾル粒子をフィルターに捕集すると、捕集された物質は黄色い色をしています。私たちの化学分析の結果、黄色い物質はニトロフェノール類であることが明らかになりました。さらに、名古屋大学との共同研究により粒子の光学特性の測定を行い、トルエン由来の二次有機エアロゾルが空気中に浮遊したままでも光吸収性がある(色がついている)ことを明らかにしました。

 エアロゾル粒子が光吸収性をもつことは、太陽放射のエネルギー収支などを見積もる上で大切な情報であり、気候変動の研究とも密接に関わってきます。ニトロフェノール類は森林火災由来の二次有機エアロゾルの成分としても知られており、現在、光吸収性の粒子状物質(ブラウンカーボン)として世界的に注目を集めています。

図3 スモッグチャンバーで測定された二次有機エアロゾルの生成
都市の大気中の主要な汚染物質であるトルエンと窒素酸化物に光を当てるとオゾンと二次有機エアロゾルが生成します。