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二次的自然「里海」の短寿命生態系におけるブルーカーボン評価に関する研究(平成 26年度)
Study on the blue carbon derived from short-lived species and their ecosystems in a coastal secondary-natural landscape "Satoumi".

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 1-1407
研究課題コード
1416BA009
開始/終了年度
2014~2016年
キーワード(日本語)
ブルーカーボン,里海,難分解性溶存有機物,炭素固定
キーワード(英語)
Blue carbon, Satoumi, persistent dissolved organic matter, carbon fixation

研究概要

 本研究では,先行して研究されているサンゴ礁やマングローブ林といった亜熱帯を分布中心とする
比較的長寿命な生物群による炭素固定ではなく,温帯を中心に分布する比較的短寿命な海藻や海草,
プランクトン−貝類等の食物網を介した炭素固定,生物の死亡後に無機化が迅速に進まず堆積物等中
に蓄積された粒子態や溶存態の難分解性有機炭素といった対象を定量化し,最終的にブルーカーボン
として評価できるのか検証する。
 具体的には各種短寿命生物のうち,一次生産および消費者の炭酸カルシウム生産に伴う炭素固定
量,それら生物の死亡後に蓄積される有機炭素量を,国内の代表的閉鎖性海域である東京湾,伊勢
湾,大阪湾を調査地とする地環研の協力を得ることで,環境要因および生活史の季節変化に対応した
計測を実施可能とするものである。必要に応じて潜水によるサンプリング,野外でのチャンバー試
験,あるいは大型水槽を用いた試験を通じて生物体および枯死体や底質の有機炭素を測定し,カーボ
ンシンク機能を明らかにする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:政策研究

全体計画

 東京湾,伊勢湾,大阪湾において想定している複数の調査地は異なる立地履歴と管理強度に整理さ
れるため,比較沿岸海洋学的なアプローチを用いて研究を実施する。
初年度は東京湾,大阪湾,伊勢湾においてそれぞれ選定された場において主に一次生産者による炭素固定速度の評価と生物量調査および有機物分解試験を実施する。次年度は東京湾では異なる一次生産者が優占する藻場における調査を実施しつつ,全調査地において貝類などへの食物網を介した炭素固定速度の評価と生物量調査を実施する。最終年度は収支とカーボンシンク機能の関係を整理し,貧酸素水塊をはじめとする突発的環境変動や外来種の侵入等の生態系への影響を評価して,カーボンシンク機能を支える場としてのレジリエンスを保つために必要と考えられる里海の立地条件や管理手法について提言を行う。

今年度の研究概要

●サブテーマ(1)東京湾の藻場が有するカーボンシンク機能の評価と立地履歴,管理強度の影響解析
アオサ藻場とアオサ類が消失した干潟の比較を通じて、大型植物および表在藻類、底生動物優占種およびそれぞれの枯死体について、種組成・現存量の季節変化を把握する。また、それらの成長、枯死、分解速度とCO2固定速度を室内・野外実験により推定する。加えて、カーボンストック量評価の精度検証を行う。

●サブテーマ(2)東京湾の干潟が有するカーボンシンク機能の評価と立地履歴,管理強度の影響解析
都市の人工干潟における二枚貝類の現存量および貝殻量調査を行う。水中、底泥中、貝殻中の有機炭素および無機炭素含有量を測定し、CO2固定量と底泥中の炭酸カルシウムを含んだカーボンストック量を推定する。一次生産者である植物プランクトンおよび底泥表層の付着藻類量を調査し、CO2固定量を推定する。

●サブテーマ(3)大阪湾の干潟が有するカーボンシンク機能の評価と立地履歴,管理強度の影響解析
二枚貝類の現存量、貝殻量を指標としてCO2固定量を見積もる。併せて、二枚貝類以外の生物の現存量とCO2固定量の関係を検討する。さらに、CO2固定量の季節変動および貧酸素化のような突発的環境変動との関係を探索する。

●サブテーマ(4)伊勢湾の干潟および藻場が有するカーボンシンク機能の評価と立地履歴,管理強度の影響解析
天然及び造成されたアマモ場において、アマモ類現存量を現地調査により把握し草体の生産による炭素固定量と枯死による放出量を推定する。併せて野外チャンバー試験により、光合成量と呼吸量を推定する。さらに、枯死分解後の挙動を分解試験により推定する。

外部との連携

研究分担機関: 公益財団法人東京都環境公社東京都環境科学研究所, (財) ひょうご環境創造協会 (兵庫県環境研究センター) ,三重県水産研究所

関連する研究課題

課題代表者

矢部 徹

  • 生物多様性領域
    生態系機能評価研究室
  • 主任研究員
  • 博士(理学)
  • 生物学
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担当者