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サプライチェーンが産み出す価値と環境・資源ストレスの統合的ホットスポット分析(平成 27年度)
Integrated Hotspot Analysis of Values and Environmental and Resource Stresses Produced in the Supply Chain

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1517CD007
開始/終了年度
2015~2017年
キーワード(日本語)
ライフサイクル評価,サプライチェーンマネジメント,廃棄物処理,物質フロー分析
キーワード(英語)
Life cycle assessment, Supply chain management, Waste management, Material flow analysis

研究概要

サプライチェーンに潜在するストレス要因のホットスポット(どこに改善のための労力を集中させるべきか)を特定することで,その持続可能性を高めることが求められるが,そのための分析手法は未成熟な状況にある。本研究課題では,国産製品のサプライチェーン(国内産業および輸入原料を含む)を対象として,国内外の地域レベルおよび地球レベルで発生する環境・資源ストレスのホットスポット分析の枠組み・指標・原単位を確立する。まず,環境・資源・社会面の評価領域を定義し,地域レベルの統計や国際物質フロー分析を活用してストレス指標を開発する。将来的に需要量・生産量が増加することが想定される製品やエネルギーを対象とした事例分析に適用し,それらの潜在的なストレス要因のホットスポットを特定する。さらに,分析方法のアルゴリズムおよび原単位のデータベースを実装することで,ホットスポット分析の汎用的な枠組みを構築することを目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

国内企業を対象としたインタビュー調査を通して企業のSCMの実態を把握することにより,評価領域を選定・定義する。LCIAやSLCA,資源経済学などの分野における指標開発の状況を十分に検討した上で,それぞれの領域を評価するための領域指標を開発する。国内の指標は,各産業分類の生産地別の原単位を算定する。そのうち廃棄物処分場については,地域物質収支表を作成し,各地域の生産活動と地域別のストレスの関係を算定する。国外の指標は,特に水資源と鉱物資源に着目して,国ごとの生産活動の価値・ストレスを国際物質フロー分析と結合することで,輸入原料ごとの原単位を算定する。IDEAマトリクスと統合することでホットスポット分析の枠組みを構築し,複数の事例分析へ適用するとともに,企業SCMを支援する分析ソフトウェアを実装する。

[平成27年度]初年度は,まず国内企業を対象としたインタビュー調査を通して,SCMの現場において把握・管理されているストレス要因(環境・資源・社会面を含む)や,将来的なストレス要因への認識など,企業のSCMの実態を把握することにより,本研究課題が対象とする【評価領域の選定】に反映させる。選定された評価領域について,国内産業(国内価値・ストレス班)と輸入原料(国外価値・ストレス班)を対象に定義を明確化するともに,ライフサイクル影響評価(LCIA)やSLCA,資源経済学などの分野における指標開発の状況を十分に検討した上で,それぞれの領域を評価するための【領域指標を開発】する。その過程では,国内外で領域や指標の定義に齟齬が生じないように,共通の領域指標についても平行して検討を進める。
本研究課題において中心的に検討する,社会面の影響や,鉱物資源および水資源については,以下のような既往研究を指標開発のベースとする。社会面での評価に利用可能なSLCAのデータベースの整備は,環境面と比べて不十分であるものの,いくつかの事例が公表されつつある。ただし,社会面での評価は対象とする領域についての合意も十分ではなく,本研究課題において,プラスの側面(価値)も含めた領域指標の再定義についての議論から始める必要がある。水資源枯渇に関しては,近年,多様な指標が提案されているが,世界各国における指標(Water Stress Indicator)を算定した既往研究がホットスポット分析の目的と合致する可能性が考えられる。鉱物資源についても,可採年数や超過費用など様々な断面から多様な指標が乱立してきたが,近年になりLCIAへの適用が議論されているクリティカリティ(政治的安定度や生産国の集中度などを含む)は,輸入原料のホットスポット分析には不可欠な要素であると考えられる。

[平成28・29年度]次年度は,開発した領域指標について,【国内の産業分類ごと/輸入原料の品目ごとの原単位を算定】することが課題となる。国内産業と輸入原料の原単位算定は,基本的に独立して作業を進めるが,最終的なIDEAマトリクスへの統合を見据え,統括・データベース班が各種の統計コード(国内:経済センサスの産業コード,国外:貿易統計のHSコード)によってIDEAマトリクスのコードとの対応関係・変換表を整理し,各班の原単位を一括して管理する。
国内価値: 初年度に定義した社会面の評価領域・指標(雇用の確保,地域経済の活性化など)について,各産業分類の生産地別の原単位を算定する。公表されている各都道府県および市町村の地域産業連関表,工業統計調査や都道府県・市町村統計など,全国レベルの統計データ(必要に応じて組替集計を申請)をもとに原単位を算定する。
国内ストレス: 環境・資源面の評価領域・指標(環境・資源ストレス)について,各産業分類の生産地別の原単位を算定する。国内において地域偏在性の大きい資源ストレスとして,残余年数の逼迫した廃棄物処分場の問題に着目する。地域産業連関表に準じた地域物質収支表を作成し,各産業分類の産業廃棄物の排出量と地域(都道府県・市町村)間の輸送量を集計することで,各地域の生産活動と地域別の廃棄物処分場へのストレスの関係を算定する。
国外価値: 社会面の評価領域・指標(雇用,労働環境の改善など)について,各輸入原料の輸出国別の原単位を算定する。既往の原単位をもとにした国ごとの生産活動の社会的な価値を,国際物質フロー分析と結合することで,日本への輸入原料ごとの原単位として算定する。
国外ストレス: 環境・資源面の評価領域および指標について,各輸入原料の輸出国別の原単位を算定する。輸入原料に付随するストレスとして,鉱物資源および水資源に着目する。既往の指標や原単位 をもとにした資源の採掘・消費国ごとのストレスを,国際物質フロー分析と結合することで,日本への輸入原料ごとの原単位として算定する。

今年度の研究概要

[平成27年度]初年度は,まず国内企業を対象としたインタビュー調査を通して,SCMの現場において把握・管理されているストレス要因(環境・資源・社会面を含む)や,将来的なストレス要因への認識など,企業のSCMの実態を把握することにより,本研究課題が対象とする【評価領域の選定】に反映させる。選定された評価領域について,国内産業(国内価値・ストレス班)と輸入原料(国外価値・ストレス班)を対象に定義を明確化するともに,ライフサイクル影響評価(LCIA)やSLCA,資源経済学などの分野における指標開発の状況を十分に検討した上で,それぞれの領域を評価するための【領域指標を開発】する。その過程では,国内外で領域や指標の定義に齟齬が生じないように,共通の領域指標についても平行して検討を進める。
本研究課題において中心的に検討する,社会面の影響や,鉱物資源および水資源については,以下のような既往研究を指標開発のベースとする。社会面での評価に利用可能なSLCAのデータベースの整備は,環境面と比べて不十分であるものの,いくつかの事例が公表されつつある [5, 6]。ただし,社会面での評価は対象とする領域についての合意も十分ではなく,本研究課題において,プラスの側面(価値)も含めた領域指標の再定義についての議論から始める必要がある。水資源枯渇に関しては,近年,多様な指標が提案されているが [7],世界各国における指標(Water Stress Indicator)を算定した既往研究 [8] がホットスポット分析の目的と合致する可能性が考えられる。鉱物資源についても,可採年数や超過費用など様々な断面から多様な指標が乱立してきたが [9],近年になりLCIAへの適用が議論されているクリティカリティ(政治的安定度や生産国の集中度などを含む)[10] は,輸入原料のホットスポット分析には不可欠な要素であると考えられる。

外部との連携

【研究代表者】森口祐一(東京大学、教授)

【研究分担者】 醍醐市朗(東京大学、准教授)

          福島康裕(東北大学、准教授)

          中谷隼(東京大学、助教)

          松八重一代(東北大学、准教授)

          菊池康紀(東京大学、講師)

          栗島英明(芝浦工大、准教授)

          工藤祐樹(産総研、主任研究員)

備考

当課題は、重点プロジェクト1「国際資源循環に対応した製品中資源性・有害性物質の適正管理」および重点プロジェクト3「地域特性を活かした資源循環システムの構築」にも関連

課題代表者

中島 謙一

  • 資源循環領域
    国際資源持続性研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(工学)
  • 工学,材料工学
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