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植物の環境ストレス診断法の確立と高度化に関する研究(平成 28年度)
Study on establishment and advancement of the environmental stress diagnostic method of the plant

予算区分
AH 地環研
研究課題コード
1517AH001
開始/終了年度
2015~2017年
キーワード(日本語)
遺伝子発現,オゾン,環境放射線,植物モニタリング,ストレス診断
キーワード(英語)
Gene expression, Ozone, Environmental radiation, Phytomonitoring, Stress diagnosis

研究概要

植物を用いた環境影響評価によって環境情報の充実と大気環境の保全に取り組むため、分子的メカニズムに基づく野外におけるストレス診断手法を実地検証して確立し、その高度化を図ることを目的とする。
わが国では多くの大気汚染問題(二酸化硫黄、二酸化窒素等)が改善されてきたが、光化学オキシダント(オゾン)については、逆に汚染の高濃度化、広域化が進んでおり、人間の健康はもとより、森林や農作物など植物への深刻な悪影響が強く懸念されている。本共同研究グループでは、中長期的なオゾンによる植物被害の実態把握を行うと共に、遺伝子発現解析等による植物のオゾンストレス診断手法を開発し、実際のオゾンによる植物被害調査への利用を拡大してきた。一方、平成23年3月の福島第一原発からの放射性物質の漏出が生態系や人間社会に対する脅威となっているため、開発したストレス診断手法を用いて低線量環境放射線の植物への影響の評価を試みている。
本共同研究では、これまでに抽出されたストレス特異性の検出等に関する技術的な問題点を解決するため、新規バイオマーカーの選定等によって診断の精度を上げ、オゾン、放射線による植物のストレス診断に適用することが目標である。また、市民の理解を深めるために研究結果の普及を図るとともに、各地域の特性を考慮しながら、今後の大気環境の保全についての提言を試みる。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

 参加各機関において、毎年7〜8月に共同で植物被害実態調査を実施する。対象とする植物としては、国環研の供給した単系統のアサガオを共通植物として使用する。さらに、一部機関ではオゾンによる被害が指摘されているブナ、ホウレンソウ等も使用する。並行して、野外で生育させたアサガオの葉を、光化学オキシダントによる被害が観察される前(5〜6月頃)に採取する(無傷葉)。また、7〜8月頃に光化学オキシダント濃度が上昇した翌日に、各調査地点において被害が発現しなかった葉(無被害葉)及び被害が発現した葉(被害葉)を採取し、無傷葉と合わせてオゾン応答遺伝子の発現解析を行う。オゾンによる被害を的確に反映し、診断に使用できるような新規遺伝子を選定する。代表機関では各機関で実施した光化学オキシダント調査結果とオキシダント濃度等の情報を収集し、とりまとめる。最終年度には、各地における光化学オキシダントの状況とその影響について考察し、代表機関が中心となって地域における大気環境保全のありかたについて提言の取りまとめを試みる。
 上記無傷葉は環境放射線の影響評価にも用いるので、各地における無傷葉採取時の環境放射線の線量を測定する。別途高線量地域で採取された試料と合わせ、低線量の環境放射線の影響評価に使用できる遺伝子の発現や構造を解析し、環境放射線量との関係を調査すると共に、放射線影響評価の新規指標遺伝子の候補を探索し、発現解析法について検討する。放射線の影響評価に使用できる新規指標遺伝子の候補について発現・構造等の解析を行い、最終年度には放射線の影響評価に使用できる指標遺伝子の候補について有効性を検討する。

今年度の研究概要

<地環研等>
1)参加各機関において、7〜8月に共同で植物被害実態調査を実施する。対象とする植物としては、国環研の供給した単系統のアサガオを共通植物として使用する。さらに、一部機関ではオゾンによる被害が指摘されているブナ、ホウレンソウ等も使用する。
2)野外で生育させたアサガオの葉を、光化学オキシダントによる被害が観察される前(5〜6月頃)に採取し(無傷葉)、国環研に送付する。また、7〜8月頃に光化学オキシダント濃度が上昇した翌日に、各調査地点において被害が発現しなかった葉(無被害葉)及び被害が発現した葉(被害葉)を遺伝子解析用に採取し、国環研に送付する。
3)無傷葉は環境放射線の影響評価にも用いるので、各地における無傷葉採取時の環境放射線の線量を測定する。
4)代表機関では各機関で実施した光化学オキシダント調査結果とオキシダント濃度等の情報を収集し、とりまとめる。

<国環研>
1)各機関より送付されたサンプル葉におけるオゾン応答遺伝子の発現や構造を解析する。また、オゾンによる被害を的確に反映し、診断に使用できるような新規遺伝子の選定を行う。
2)一部機関と国環研において、アサガオ以外の植物の新規オゾン応答遺伝子の塩基配列情報収集等を行い、一部については発現解析を行う。
3)低線量の環境放射線の影響評価に使用できる遺伝子の発現や構造を解析し、環境放射線量との関係を調査する。
4)放射線影響評価の新規指標遺伝子の候補を探索し、発現解析法について検討する。

外部との連携

埼玉県環境科学国際センター(代表)、神奈川県環境科学センター、静岡県環境衛生科学研究所、名古屋市環境科学調査センター、鳥取県衛生環境研究所、福岡県保健環境研究所

課題代表者

青野 光子

  • 生物多様性領域
  • 副領域長
  • 博士(理学)
  • 生物学,生理学,生化学
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