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新規POPsを含有する廃棄物の環境上適正な管理に関する研究(平成 28年度)
Study on the Environmentally Sound Management of Wastes Containing Newly Listed POPs

予算区分
BE 環境-推進費(補助金)
研究課題コード
1618BE002
開始/終了年度
2016~2018年
キーワード(日本語)
残留性有機汚染物質,臭素系難燃剤,ポリ塩化ナフタレン
キーワード(英語)
Persistent organic pollutants, Brominated flame retardants, polychlorinated naphthalenes

研究概要

 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)は12物質を対象に2004年に発効し、その後、臭素系難燃剤(PBDEs、HBCDs)やポリ塩化ナフタレン(PCN)等塩素系製剤が対象に追加されてきた。デカブロモジフェニルエーテルについても廃絶対象物質への追加が予定されている。POPs含有廃棄物の適正処理については、バーゼル条約の下で「POPs廃棄物に係るテクニカルガイドライン」の策定が進められているが、廃プラスチック中POPs含有量や分別可否等について国際的に科学的知見が不足しているため、処理対象とするPOPs濃度(LPC)には2つの値が暫定的に採択されている状況である。国内では環境省が「臭素系難燃剤含有廃棄物処理に関する技術的留意事項」を作成中であるが、その実態は正確には把握されておらず、結果として処理方策が現在でも明確化されていない。今後、建築物の解体等に伴ってHBCD含有断熱材やPCP・PCN処理木材が本格的に発生することが想定されるため、処理方策の策定が急務である。本研究では、環境政策上重要である新規POPsについて、製品ライフサイクル静脈側における環境排出と制御に関する実測調査を積み、ハザード検出や予測モデル研究と絡め、そのリスク評価と環境上適正な処理方策について検討する。そして、環境省において現在検討中の「POPs含有廃棄物の技術的留意事項」およびバーゼル条約の下の「テクニカルガイドライン」策定に資するデータの提示ならびに政策貢献を最終目標とするものである。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

 本申請課題では、新規POPs条約対象物質のうち、用途や使用実績、規制時期、分離分別のし易さ等が異なる臭素系難燃剤(PBDEs、HBCDs)および塩素系製剤(PCN、PCP)を研究対象の中心に据え、二つのサブテーマに分けて研究を実施する。
 サブテーマ(1)は、臭素系難燃剤を対象に製品中含有量データの集積に最優先で取り組み、難燃剤含有樹脂の循環利用の国内実態を把握し、分別方針の違いによるLPC設定のケーススタディに繋げる。使用済み製品の処理・処分施設を対象とした実測調査を積み、製品ライフサイクルの静脈系プロセスにおける難燃剤関連物質の排出・分解メカニズムを定量的に明らかにする。併せて、再資源化が難燃剤の室内曝露量、リサイクル過程における環境放出量、廃棄時の含有濃度に与える影響を明らかにするため、リサイクル現場に応用可能な室内曝露評価モデルを構築する。また、開発してきた焼却シミュレータを改良して、再資源化物を焼却処理した際にダイオキシン類の発生量へ与える影響について予測し、既存の焼却での課題の有無を確認する。
 サブテーマ(2)は、塩素系製剤を主な対象とし、国内フローの精緻化、国内外の規制情報の整備から着手する。今後、廃棄フローに流入すると想定される処理木材(枕木、家屋土台、木柱など)に含まれるPCNやPCP等の防腐・防蟻処理剤の含有量を測定し、処理木材中の濃度分布およびインベントリを把握する。一部の異性体にダイオキシン様毒性の存在が確認されているPCNについては、ダイオキシンを検出する生物検定法によりPCN各異性体の毒性を評価し、LPC設定の根拠となる毒性データを取得する。また、化学分析と生物検定法をタイアップさせ、処理木材の焼却処理過程でのPCNやPCPの挙動および副生成するPCNやダイオキシン類の影響を確認する。

今年度の研究概要

(1)電気・電子機器や繊維製品等の難燃化製品および再生品など規制難燃剤を含有している可能性のある部材について幅広くスクリーニングおよび化学分析を実施し、バーゼル条約締約国会議で示された暫定LPCを超過する製品や非意図的混入事例を整理する。家電リサイクル施設にて再資源化された樹脂ペレット中の難燃剤の種類や含有量を調査するとともに、再資源化物のその後の利用実態を明らかにする。HBCD含有廃棄物を原料の一部とした固形化燃料(RPF)製造に伴うHBCD排出の実態を調べる。難燃剤を含む製品からの放出量を把握するとともに、部材の性状評価を行って放出量に関する影響因子を明らかにする。焼却シミュレータの計算に必要な熱力学パラメータを整備する。
(2)PCNおよびPCPの国内フロー(過去の製造実績や処理対象量等)の精緻化、国内外の規制情報を整備する。PCN(75異性体)については国際的に定められた分析法がないため、まずは処理木材中PCN分析のための適切な前処理方法について検討し、PCB等による妨害を受けない分析法を確立する。枕木、家屋土台、木柱など、塩素系製剤による処理が想定される木材試料を収集し、PCN、PCP、クロルデン等の防腐・防蟻剤の含有量測定に着手する。また、一部の異性体にダイオキシン様毒性の存在が確認されているPCNについては、生物検定法を用いて、より多くのPCN異性体のダイオキシン様毒性に対する相対毒性強度(2,3,7,8-TCDD Relative Potency: REP)のデータベースを構築する。

外部との連携

佐賀大学

課題代表者

梶原 夏子

  • 資源循環領域
    試験評価・適正管理研究室
  • 主幹研究員
  • 博士 (学術)
  • 化学
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担当者