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ネオニコチノイド農薬による陸域昆虫類に対する影響評価研究(平成 28年度)
Assessment of environmental impacts on terrestrial insects caused by neonicotinoid insecticides

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 5-1407
研究課題コード
1416BA006
開始/終了年度
2014~2016年
キーワード(日本語)
ネオニコチノイド,ニホンミツバチ,マルハナバチ
キーワード(英語)
neonicotinoid, Japanese honey bee, bumblebee

研究概要

 近年、ネオニコチノイド系殺虫剤代表とする浸透移行型殺虫剤による生態系影響が大きな環境問題として注目を集めている。浸透移行型殺虫剤は植物の根から吸収されて、植物体内に移行するという特性をもち、日本・東南アジアでは水稲の箱苗処理剤として1990年代より広く使用されている。また欧米でも畑用作物の種子処理剤として普及してきた。本剤は、OECDテストガイドラインに基づく水生生物急性毒性試験では、極めて毒性が低いことが示されることから、生態影響の低い薬剤と判定されていた。しかし、我が国では近年になって、本系統剤による水田および周辺の節足動物群集に対する悪影響が懸念されるようになり、室内毒性試験やメソコズム試験により極めて低濃度でも水生生物に対して毒性が高いことが示されている。一方、欧米では本剤による家畜ミツバチに対する影響が注目され、現在、北米で問題となっている蜂群崩壊症候群CCDの原因物質として疑われている。また、野生マルハナバチの急速な減少についても本剤との関連性が議論されている。こうした状況の中、我が国でも家畜ミツバチに対する影響評価が進められつつある。しかし、これまでの研究は、比較的高い濃度での急性毒性、亜急性毒性試験がほとんどであり、実環境における低濃度暴露の影響評価は進んでいない。また野生マルハナバチについても、全国的にその数が減少傾向にあるとされるが、農薬との関係は不明である。その他にも地表徘徊性昆虫や捕食者等、生態系において本剤に暴露するおそれのある種に対する影響は国内のみならず世界的にも不足している。2013年5月EUがハチに対する生態リスクからネオニコチノイド農薬3剤の使用規制を発表し、日本も国内における本系統剤の影響実態を緊急に明らかにする必要がある。
 日本では、浸透移行型殺虫剤の陸域生物に対する評価は進んでいないことから、本系統剤の陸域昆虫類に対する影響実態を明らかにして、リスク評価手法の検討を行う。対象薬剤として有機リン剤など他系統薬剤との比較を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

 野生マルハナバチ類の個体レベルの急性毒性試験を行う。ミニコロニーに対する低濃度暴露による生殖影響試験を行う。花粉や蜜を介したコロニーレベルの生殖影響試験を行う。野生マルハナバチ類の分布情報の収集およびニッチモデリングによる生息適地推定を行う。国外におけるマルハナバチ類に対する生態影響情報の収集・整備を行う。

今年度の研究概要

ミニコロニー生殖影響試験および花粉や蜜を介したハウス内コロニーレベル生殖影響試験を継続する。
野外調査地域の農耕地の農薬使用履歴、周辺エリアにおけるマルハナバチの分布実態調査、サンプル収集、感染症感染率の実態調査を行う。
マルハナバチ個体群の動態に影響を及ぼす主要因分析を行う

外部との連携

国立大学法人千葉大学大学院園芸学研究科 中牟田 潔 (研究代表者)
国立研究開発法人森林総合研究所 滝 久智

課題代表者

五箇 公一

  • 生物多様性領域
    生態リスク評価・対策研究室
  • 室長(研究)
  • 農学博士
  • 生物学,農学,化学
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担当者