- 予算区分
- 革新型研究開発(若手枠)
- 研究課題コード
- 2123BA011
- 開始/終了年度
- 2021~2023年
- キーワード(日本語)
- プラスチック汚染,劣化試験,環境動態
- キーワード(英語)
- plastic pollution,weathering test,Environmental behavior
研究概要
数ヶ月程度の試験でプラスチックの微細化までを再現するには、劣化を促進させる設定が必要である。本研究でははじめに、海洋環境を模した促進劣化試験を行い、その促進程度を表現する指標と係数を作成する。具体的には、海岸上、波打ち際、沖合の3つの環境を対象として、紫外線強度と温度を高めた「促進劣化条件」での劣化試験を行い、それぞれについて微細化により小片が生じるまでの劣化の進行を表す最も適当な指標を探索する(指標の例:ポリマー分子量、結晶化度、融解エンタルピー、ラメラ長、等)。加えて、非促進の「海洋環境条件」における劣化試験でも指標を測定し、促進劣化条件における促進の程度(加速係数)を求める。これにより、新規素材についても数ヶ月の促進劣化試験を行うだけで、その海洋環境条件での微細化速度を見積もる手法が作成できる。
次に、実際の環境中の海洋プラスチックについて、劣化・微細化のポテンシャルを評価する。具体的には、指標を用いた劣化状況の分析、さらに試料に含まれる添加剤の網羅分析により、劣化を抑制する添加剤の含有状況を分析する。加えて、検出された添加剤を含むプラスチックを作成し、サブテーマ1で作成した促進劣化試験により劣化・微細化速度を導く。その結果をもとに海洋プラスチック試料のデータ(劣化状況、添加剤の含有状況)を解釈することで、海洋プラスチックで起こる劣化・微細化について、タイムスケールの情報が得られる。
本研究で作成する手法は、短期間での海洋条件におけるプラスチック微細化の試験を可能にし、海洋でマイクロ・ナノプラスチックを生成しにくい素材の開発等に貢献できる。また海洋プラスチックについて、劣化・微細化プロセスのタイムスケールが明らかとなることで、その動態を把握し、生態系へのリスクを評価する基礎となる知見が得られる。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
サブテーマ1において、海岸上、波打ち際、沖合の3つの環境を対象として、それぞれにおける複合的要因を加味した条件でのプラスチックの劣化・微細化を表現する指標を探索し、劣化促進条件における加速係数を求めることで、劣化・微細化の速度を4ヶ月程度の劣化試験で見積もる手法を作成する。作成した手法をサブテーマ2に提供する。
サブテーマ2では、海洋プラスチックについて、指標を用いた劣化の状況の評価と、劣化抑制に働く添加剤の網羅分析を行うことで、劣化のポテンシャルを測る。加えて、検出した劣化抑制に働く添加剤を含むプラスチックについて、サブテーマ1の試験により劣化・微細化速度について測定する。これにより、海洋プラスチックで起こる劣化・微細化についてタイムスケールの情報を得る。
今年度の研究概要
サブテーマ1において、促進劣化条件での劣化・微細化試験を行い、マイクロ・ナノプラスチックが生じるまでの劣化の進行を反映できる指標を検討する(4ヶ月程度)。加えて、海洋環境条件での劣化・微細化試験を開始し、劣化指標を継時的に分析する(1年間程度)。
サブテーマ2では、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)を用いた分析の環境を整える。