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低高度孤立峰を利用した多角的観測に基づく非線形気象化学過程のシームレスな理解(令和 5年度)
Seamless understanding of nonlinear meteorology-chemistry processes based on multifaceted observations using low-altitude isolated peaks

予算区分
23H05494
研究課題コード
2327CD001
開始/終了年度
2023~2027年
キーワード(日本語)
エアロゾル雲相互作用,PM2.5,霧水,液体クロマトクラフィ質量分析法,チャンバー実験
キーワード(英語)
Aerosol cloud interaction,PM2.5,Fog water,Liquid chromatography mass spectrometry,Chamber experiment

研究概要

エアロゾルと雲は大気中で相互に作用しながら気象と環境に様々な変化をもたらす一方で、一連の素過程は非線形で多くの未解明パラメータを含むため、エアロゾルと雲の相互作用を介した気象・環境影響に関する理解度は依然として低い。本研究では、代表的な雲底高度(1000 m程度)に山頂をもつ孤立峰である筑波山などを活用してエアロゾルと雲の多角的な連続直接観測を実施し、(1) 実大気環境で3桁から10桁の範囲で変動するエアロゾル二次生成・氷晶核活性・雲底下洗浄に関する諸特性を抑え、(2) 反応実験システム・雲生成チャンバー・降雪降雨生成装置による室内実験と、(3) 流体・物理・化学過程がシームレスに結合した数値モデルにより、エアロゾルと雲の相互作用がもたらす大気の物理・化学現象(気象・環境変化)の包括的かつ完全な理解を目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

野外観測ではまず、筑波山頂観測所を整備する。SMPS(走査型モビリティパーティクルサイザー)、CCNC(雲凝結核計)、FM-120(フォッグモニター)、MPS(気象粒子スペクトロメータ)、LPM(光学式ディスドロメータ)、マイクロレインレーダーなどを山頂に整備して観測を開始する。また、エアロゾルと雲水を採取し、無機・有機成分に関する詳細な成分分析を実施する。また山麓にある気象研究所においてSMPS、CCNCの連続測定により山頂・山麓の同時観測を実施する。さらに、気象研究所では氷晶核計を用いた連続観測を実施する。POPC(偏光光散乱式粒子数計測装置)とエアロゾルのフィルタ採取、蛍光顕微鏡などを用いて、山頂の氷晶核粒子数濃度とその成分同定に関する観測的研究に着手する。 
室内実験ではまず、雲生成チャンバーを用いて、モデル粒子および大気エアロゾルを用いて雲凝結核能、氷晶核能とその成長過程に関する室内実験を行う。また、反応実験システムを用いて二次粒子生成・成長過程のシード(種粒子)に対する感度について実験を行い、エアロゾル粒子の成長過程を決めるうえで重要な因子を明らかにする。
 数値実験ではまず、従来のモデルを用いてエアロゾル・放射・乱流相互作用、エアロゾル・雲・降水相互作用に関する様々な実験を展開する。そして、これまで得られた気象、環境に関するさまざまな観測データでモデル再現性を検証し、また観測データの変動要因に関する解析を実施する。局地気象モデルにより、山岳をとりまく気流の流れによって形成される雲の特性を明らかにする。また、流体・物理・化学過程がシームレスに結合した数値モデルの開発に着手する。

今年度の研究概要

野外観測において、筑波山頂観測所でエアロゾルと雲(霧)水の同時期での連続採取を通年で行い、その有機成分の液体クロマトクラフィ質量分析計を用いた分析を開始する。また、室内実験において、反応実験システムを用いて二次粒子生成・成長過程のシード(種)粒子の酸性度に対する感度について、今年度はイソプレンのオゾン反応系の実験を行う。

外部との連携

研究代表者:梶野瑞王(気象庁気象研究所・主任研究官)
研究分担者:日下博幸(筑波大学・教授)、折笠成宏(気象庁気象研究所・室長)、三隅良平(日本大学・教授)、山下克也(防災科学技術研究所・主任研究員)
研究協力者:飯沼賢輝(沖縄科学技術大学院大学・リサーチサポートスペシャリスト)、野尻幸宏(国立環境研究所・客員研究員)
      

課題代表者

猪俣 敏

  • 地球システム領域
    地球大気化学研究室
  • 主席研究員
  • 博士(理学)
  • 理学 ,化学
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