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令和5年度複数化学物質に係る生態影響評価手法等検討業務(令和 5年度)
Contract study on the ecotoxicity testing for the development of assessment of chemical mixtures in FY2022

研究課題コード
2323BY009
開始/終了年度
2023~2023年
キーワード(日本語)
混合物,相対毒性強度,生態毒性試験,グルーピング
キーワード(英語)
mixture,relative potency factor,ecotoxicity test,grouping

研究概要

化学物質の影響評価やリスク評価は、これまで個別の化学物質を対象として進められてきており、一般環境中で想定されるような、複数の化学物質に同時にばく露された場合の影響(化学物質の複合影響)の評価手法については、あまり検討が進んでいない。このような評価手法を確立するためには、化学物質の複数同時ばく露が野生生物に対して及ぼす影響を明らかにすることが重要である。
本業務は、環境リスク評価における複合影響評価のあり方の検討に資することを目的として、複数の化学物質による生態毒性評価に係る実験的な検討を行うとともに、複合影響評価に係る段階的評価の枠組みの下で、生態影響に係る高次有害性評価を試行するものである。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

(1)複数の化学物質による生態毒性評価に関する実験の検討、試験の実施
下記の試験対象物質について、魚類、甲殻類及び藻類を用いた毒性試験を実施し、生死、発達、生長又は繁殖に関わるエンドポイントへの作用・影響の有無及びNOEC(最大無影響濃度)・LOEC(最小影響濃度)又はECx(x%影響濃度)等のデータ収集を行う。
ア)試験対象物質
 試験対象物質は、化学物質審査規制法(以下、「化審法」という)の優先評価化学物質に指定されているなど、生態リスクが懸念されている、混合物や類似物質群(たとえば、令和4年度に対象としたサルファ剤、過去の業務において一連の信頼できる実験データが不足していた物質群など)のうち3種以上を1組以上選定する。ただし、生物によって化学物質に対する感受性が異なるため、すべての生物が共通の化学物質の組み合わせを用いるとは限らない。最終的に環境省担当官の確認を経た上で決定する。
   • 化学物質の作用機序について一定の知見が得られていること。
   • 文献又は報告書等により主作用もしくは副作用の相互作用により、ヒト健康影響又は生態影響において重篤な影響が引き起こされた、またはその可能性が示唆されている物質群もしくは、国内の環境中での曝露濃度と各生物の無毒性濃度とのマージンが最も小さい(リスクが高い)と考えられる物質群の組み合わせとする。
 選定した対象物質の試薬については、十分に純度の高い試薬(おおむね95%以上)を請負者が調達する。
イ)試験生物
慢性毒性試験、亜慢性毒性試験又は急性毒性試験を採用する。試験対象生物は、魚類はメダカ(Oryzias latipes)又はゼブラフィッシュ(Danio rerio)、甲殻類はオオミジンコ(Daphnia magna)又はニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)、藻類はムレミカヅキモ(Pseudokirchneriella subcapitata)とする。試験には、試験実施施設で自家繁殖させた履歴が明らかで、かつ、健康な個体を用いることとし、請負者が調達する。

ウ)試験の方法及び条件等
試験の方法及び条件等は、魚類はOECD GUIDELINE FOR THE TESTING OF CHEMICALS No.212 Fish Short Term Toxicity Test on Embryo and Sac-Fry Stages又は同No.203 Fish, Acute Toxicity Test、甲殻類は同No.211 Daphnia magna reproduction test、同No.202 Daphnia sp. acute immobilization test、又は「生物応答を用いた排水試験(検討案)(排水(環境水)管理のバイオアッセイ技術検討分科会)のニセネコゼミジンコを用いた繁殖試験、藻類はOECD GUIDELINE FOR THE TESTING OF CHEMICALS No. 201 Freshwater Alga and Cyanobacteria, Growth Inhibition Testに準拠する。
ア)にて選定した物質について、?各物質単独でのばく露、?各組み合わせによる同時ばく露、の両方を実施する。

エ)エンドポイント
エンドポイントは、魚類の場合はふ化率、ふ化後生存率、全生存率、甲殻類の場合は産仔数、藻類は生長速度とする。また、魚類の場合は外観・行動の異常等についても観察を行い、所見を記録する。

オ)試験結果の算出及び統計解析
各エンドポイントは、適切な解析手法によりNOEC・LOEC又はECx等を求める。各エンドポイントの測定結果やその他のデータは、図表等に取りまとめる。

(2)生態影響に係る高次の有害性評価及びリスク評価の試行
(1)と同様に化審法の優先評価化学物質に指定されているなど、生態リスクが懸念されている混合物や類似物質群の生態影響を対象として、化学物質の複合影響評価に係るWHO/IPCSフレームワークのTier 2に相当する有害性評価を試行する。令和2年度および令和3年度の本業務の成果を踏まえ、さらに必要な検討を行うことにより、上記物質群のそれぞれについてTier 2に相当する生態リスク評価の実施に向けて有害性評価の方法等をとりまとめる。さらに、環境中における同時測定データが得られた物質群について、Tier 2に相当する生態リスク評価を試行する。

ア)生態影響に係るTier 2有害性評価の進め方
生態影響に係るTier 2有害性評価では、共通の影響に着目した評価の可能性を検討する。複合影響評価の試行として、入手可能な知見の整理を行いつつ、評価の試行としての妥当性を考察する。
評価対象物質群の生態毒性に係る情報を広く収集し、3栄養段階に分けて整理した上で、生物種及びエンドポイントに留意しつつ総合的に俯瞰し、どのような関係性が見出せるかを検討する。特定の生物群に対する共通の影響が見出せた場合は、これに着目して各物質の毒性の相対的な強度(relative potency)を検討する。知見が得られなかった物質については、他の物質の毒性情報に基づき、補間、類推等を行う。
十分な情報が得られた場合は、相対強度係数(relative potency factor)の設定を検討する。これらの関係が明確には見出せない場合は、Tier 2有害性評価としてどのように知見を集約し、複数化学物質を対象とするリスク評価をどのように行うべきかについて考察する。

イ)情報収集の範囲
ケーススタディとして、化審法スクリーニング評価における情報収集の範囲を基本とする。

ウ)信頼性評価の方法
得られた知見の信頼性評価は、専門家による査読を行い、ワーキンググループにて実施する。ワーキンググループは非公開で開催(2回、web会議、半日開催を予定)し、ワーキンググループの開催に当たり専門家の日程調整、資料の作成、ワーキンググループの運営を行う。信頼性評価の考え方は、化審法リスク評価に準じるが、同評価における信頼性評価の全項目を網羅する必要はない。本ケーススタディにおける既存知見の精査は、共通の影響に着目した有害性評価の可否の検討を含め、Tier 2評価としての妥当性を判断する観点から行う。

エ)生態影響に係るTier 2リスク評価の試行的実施
令和4年度までの本業務においてTier 2有害性評価に係る検討を進めた物質群について、環境中濃度の測定値等を参照することにより、生態影響に係るTier 2リスク評価を試行する。試行結果をとりまとめるとともに、評価における課題等について考察する。

(3)複合影響評価ガイダンス(仮称)の作成に向けた課題の抽出
(1)及び(2)の検討を踏まえ、環境行政において実施する環境リスク評価において参照されるべき「複合影響評価ガイダンス(仮称)」の課題を整理し、提案として提示する。

(4)検討会等への報告
 業務(1)〜(3)の結果については、環境省が別途発注する「令和5年度化学物質複合影響評価手法検討調査業務」において開催する「化学物質複合影響研究班」(年2回、web会議にて開催)に報告するため、環境省担当官の指示に従い資料を作成の上、電子メール等で環境省担当官に提出する。また、請負者は同会議全てに出席し、必要に応じて資料に関する説明、質疑応答を行う。

(5)報告書の作成
 (1)〜(4)の成果を取りまとめた報告書(A4版,50頁程度,3部)を作成する。

今年度の研究概要

同上

関連する研究課題

課題代表者

山本 裕史

  • 環境リスク・健康領域
  • 領域長
  • Ph.D.
  • 化学,生物学,土木工学
portrait

担当者