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沿岸海洋生態系に対する気候変動の複合影響評価研究(平成 28年度)
Assessment of multiple effects of climate change on coastal marine ecosystem

予算区分
KZ その他公募 文科省気候変動リスク情報創生プログラム
研究課題コード
1216KZ001
開始/終了年度
2012~2016年
キーワード(日本語)
海洋生物,気候変動,地球温暖化,海洋酸性化
キーワード(英語)
marine organism, climate change, global warming, ocean acidification

研究概要

海洋沿岸生態系は極めて高い生物多様性や生物生産性を有しており、生態系サービスの観点からも人間社会にとって数多くの恩恵を提供している。一方で、地球温暖化や海洋酸性化といった地球規模的要因や、土地開発に伴う土砂流入や過剰な漁業等といった局地的な要因により、沿岸生態系は地球上で最も深刻かつ急速に劣化している生態系の1つとして、その保全に向けた対策が急務となっている。しかし、その劣化には様々な時空間スケールを持つ要因が複雑に絡み合うため、地域で対策を講じれば環境劣化を防止または軽減できる局地的な撹乱要因と、地球規模的現象に起因するため地域での対策では環境劣化を回避できない撹乱要因を明確に区別して、どのような時空間スケールで対策を講じるべきか、主たる対策は適応策なのか緩和策なのかを定量的に把握・予測しておく必要がある。

本課題では、地球温暖化や海洋酸性化といった地球規模的現象が今世紀末までの沿岸生態系に及ぼす影響を複合的に予測し、併せて結果の不確実性を定量的に示すことで、将来に向けて人間社会が海洋保護区の設置を含めた生態系保全や、地球温暖化に伴う水温上昇の影響に応じた養殖域の移動に向けたガイドラインを提示することを目的とする。対象海域として、大陸からの土砂流入等の局地的な生態系の撹乱要因が相対的に少ないか存在するとしてもその要因を特定しやすく、地球温暖化に伴う水温上昇による生息域の高緯度側への移動が世界で最も顕著に見られる、つまり地球温暖化や海洋酸性化といった地球規模的な要因による生物影響を特定しやすい日本沿岸を選定する。

沿岸生態系の地球温暖化影響についてはモニタリング観測の結果に基づく研究例があるが、同じく地球規模的な現象である海洋酸性化の生物影響に関する研究は近年始まったばかりであり研究例が少ない。さらに、地球温暖化と海洋酸性化の複合影響に関しては観測だけでは同定が困難であり、モデルを用いた現状把握と将来予測に関する研究が不可欠である。本課題では、海洋生態系のモニタリングとモデリングにおけるそれぞれ世界最先端のグループが生物影響評価指標とシミュレーション結果を持ち寄り、両者が有機的に連携することで、地球温暖化と海洋酸性化の複合影響について、結果の不確実性と共に定量的に評価し、上述の目的を遂行する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

日本近海において過去に行なわれたモニタリング調査や飼育実験の結果を踏まえ、海域(亜熱帯域、温帯域、亜寒帯域)ごとの重要な沿岸固着生態系(サンゴ礁・藻場)とそこに生息する魚類、貝類、甲殻類、ウニ等の分布や健康度に関する評価指標を作成する。この評価指標と、本プログラム等で得られる高解像度・高時間頻度の気候データ、また、第5次気候モデル相互比較研究計画(CMIP5)から得られる予測シミュレーションの結果とを組み合わせ、地球温暖化や海洋酸性化が2100年までにこれらの生物にどのような影響を及ぼすかを定量的に評価する。将来予測結果の妥当性は、2010年代までのシミュレーション結果を、それぞれの生物の分布や健康度に関する現在までの実測値と比較することで検証する。CMIP5では複数モデルによるシミュレーション結果を利用して、モデルの違いによって生じる評価結果の差異を、将来予測結果に内在する不確実性として検証する。その上で、地球規模的な環境変化である地球温暖化と海洋酸性化のそれぞれが将来の日本近海の沿岸生態系の分布や健康度に及ぼす影響を個別に評価し、結果の妥当性と不確実性を定量的に把握し、4年目以降に行なう、東アジア地域を含む地球温暖化と海洋酸性化の複合効果の評価につなげる

今年度の研究概要

前年度までに日本近海の亜熱帯・温帯・亜寒帯に対して個別に行った地球温暖化・海洋酸性化の複合影響評価・予測のダウンスケーリングを進めるとともに、国立環境研究所と共同で、各生物の分布・多様性・機能に関する生物指標のさらなる精緻化を行う。これらの海域において、温暖化・酸性化に対する海洋生物の「避難地」や「ホットスポット」を選定する。
さらに、前年度までに得られた水温や海洋酸性化に関する各種評価指標に加え、他の物理環境に関する指標を用いて多変量での予測を行う。また、北海道大学が行うダウンスケーリング結果を用いて国立環境研究所で予測を精緻化し、地球規模的現象に対する海洋生物の「避難地」や「ホットスポット」を評価し、保護区等、保全戦略に関する指針を策定する。

外部との連携

プログラム全体代表:京都大学防災研究所、課題代表:北海道大学

課題代表者

山野 博哉

  • 生物多様性領域
  • 領域長
  • 博士(理学)
  • 地理学,地学,理学
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担当者