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農薬によるトンボ類生態影響実態の科学的解明および対策(平成 29年度)
Scientific Clarification and Countermeasure to Ecological Impacts of Pesticides on Dragonflies

予算区分
BA 環境-推進費(委託費) 4-1701
研究課題コード
1719BA015
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
ネオニコチノイド,トンボ,農薬,生態影響
キーワード(英語)
Neonicotinoid, dragonfly, pesticide, ecological impact

研究概要

近年、世界的にネオニコチノイド農薬による生態影響が議論されている。本系統剤は、植物体の根から吸収されて植物体内に移行・蓄積することで、吸汁性害虫の加害を抑制するという特性をもち、様々な農作物で広く適用されている。一方、本系統剤の広域使用が害虫以外の生物相に悪影響を及ぼしている可能性が2010年頃より世界各地で指摘されている。欧米では、ハナバチ類の減少要因として本系統剤が疑われており、EUは2013年よりネオニコチノイド系農薬数剤の使用禁止措置を継続している。国内においては、本系統剤はイネの苗箱に粒剤処理をして、処理苗を水田に植えることで害虫を防除する「箱苗施用剤」として多用されており、水田および周辺水系における水生生物に対する生態影響が懸念されている。特にトンボ類が2000年代以降急速に減少しているとされ、ネオニコチノイド農薬の普及率と相関があると指摘されている。里山生態系の象徴的生物でもあるトンボ類の減少は研究者・政策関係者のみならず、一般の関心も高く、EUを倣ってネオニコチノイド農薬の使用停止を政策に求める声が高まっている。一方、野生のトンボ類減少には農薬以外の環境要因も多数関与していると考えられ、また実際の圃場においては殺虫剤のみならず、殺菌剤・除草剤など様々な薬剤が使用されている。そのため、トンボ類の個体群動態とネオニコチノイド農薬の普及率の相関関係のみから、ネオニコチノイド農薬による影響を判断することは難しい。ネオニコチノイド農薬の規制にあたっては、定量的データに基づく生態リスクの科学的な分析が強く求められる。本課題では野外におけるトンボ類減少のメカニズムを農薬科学のみならず、群集生態学・景観生態学の観点からも科学的に検証し、要因解明を行う。さらに、農薬の生態リスク低減のための管理手法を開発し、新しい時代の農薬管理システムを行政に提言することを目標とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

農薬によるトンボ類生態影響メカニズムを明らかにするとともに、トンボ類を指標とした新しい農薬リスク管理システムの開発を行う。
 サブテーマ(1)では、日本の水田生物多様性を保全するための新たな毒性試験方法を確立する。トンボ類を含む試験生物を選定し、従来の急性毒性試験に加えて底質および食物を介した曝露影響、複数農薬による複合曝露影響、ステージ別による曝露影響など様々な生態学的観点からの曝露試験法を開発する。さらにサブ2〜5の成果をもとに新たに開発・マニュアル化した毒性試験のリスク管理政策への実装プロセスを検討する。
 サブテーマ(2)では、メソコズム試験によるトンボ類生態影響メカニズムの解明を行う。殺虫剤に加え、除草剤による水草への影響評価も行い、トンボヤゴのハビタット変化の影響も解析する。トンボ類個体群動態に対する農薬の複合影響の評価システムを開発する。
 サブテーマ(3)では、佐賀平野のクリーク(ため池)フィールドを活用したトンボ個体群の分布および動態を規定する要因・メカニズム分析を進める。過去から現在までのトンボ類多様性動態データ、農薬使用履歴、環境中残留分析データ、および景観構造データを収集し、サブ(4)と連携してトンボ個体群動態の主要因分析を行う。
 サブテーマ(4)では、サブテーマ1)〜3)で得られたデータを基にトンボ類の種多様性・個体群・分布の変動に因果的影響を与える要因を統計手法によって分析する。
 サブテーマ(5)では、各地の水田環境におけるトンボ類生息情報を収集し、サブ(4)で得られたトンボ減少要因をもとにGISによるトンボ類の生息適地マップを作製、現状比較、全国的なトンボ類動態の状況を把握する。全国的な農薬の使用量、各地の農薬濃度の測定値などの情報を統合し、農薬環境中予測濃度の地図化を図る。

今年度の研究概要

サブ1
・OECDテストガイドラインの見直し、問題点抽出
・トンボ類試験個体の安定的供給システムの検討
・急性毒性試験による感受性比較
・実環境に曝露影響評価試験法検討
サブ2
・ 水田メソコズムによる生物群集に及ぼす殺虫剤・除草剤の単独および複合生態影響の評価
・ 薬剤の環境中動態分析
・ 植物(水草など)を含めた群集動態解析法の検討
サブ3
・ 調査クリークごとのトンボ類データ整理
・ 環境中農薬分析
・ 水草を含む群集データ収集
・ 農薬使用履歴データ収集
・ 景観構造データ収集
サブ4
・国内外の既往データの収集と整理を行い、トンボ類の動態に対する農薬の因果的影響についての現状の整理と検討を行う。
・他サブテーマと協働し、農薬の因果効果推定のための野外調査デザインの設計・データベースデザインの設計・統計解析手法等の検討を行う。
サブ5
・ 各都道府県におけるトンボ類生息データを収集し、トンボ生息環境要因抽出およびGIS解析を行う
・ 農薬使用の全国統計データの収集・整備

外部との連携

(サブ1・課題代表)生態リスク評価のための毒性試験高度化 五箇公一 国立研究開発法人国立環境研究所生物・生態系環境研究センター生態リスク評価・対策研究室室長
(サブ2)メソコズム試験による生態影響評価 早坂大亮 学校法人近畿大学農学部環境管理学科講師
(サブ3)野外調査による生態影響評価 徳田誠 国立大学法人佐賀大学農学部准教授
(サブ4)生態影響の因果推論手法開発 林岳彦 国立研究開発法人国立環境研究所環境リスク研究センター生態毒性研究室主任研究員 横溝裕行 国立研究開発法人国立環境研究所環境リスク研究センターリスク管理戦略研究室 主任研究員
(サブ5)全国レベルのトンボ類分布実態調査 角谷拓  国立研究開発法人国立環境研究所生物・生態系環境研究センター生物多様性評価・予測研究室主任研究員

課題代表者

五箇 公一

  • 生物・生態系環境研究センター
    生態リスク評価・対策研究室
  • 室長
  • 農学博士
  • 生物学,農学,化学
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担当者