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2014年12月17日

「AIMモデルを用いた低炭素都市実行計画づくりの事例紹介と今後の展開」(Low Carbon City Design By AIM)

(12月9日:ジャパンパビリオン)

写真:Opening Remarks


 12月9日、ジャパン・パビリオンにおいてAIM(アジア太平洋統合評価モデル)を用いて、現地の研究機関及び行政機関と協働で策定したアジアの都市レベルの低炭素社会シナリオ及び実行計画に関する研究進捗を紹介するイベントを開催しました。

 本イベントでは、特に、マレーシアのイスカンダル開発地域、プトラジャヤ、及びホーチミン市に焦点を当て、研究者が各行政機関に対して、低炭素都市の実現に向けて、科学的知見をどのように実際の行政の開発計画に組み込んでいったかといった観点からの発表に加え、北九州市、(公財)地球環境研究センター(GEC)・大阪市、東京都、プトラジャヤの行政官が、これら都市の低炭素社会実現に向けた都市間協力について発表しました。

 イベント開催中、望月環境大臣がお忙しい合間を縫って本イベント開催の意義について挨拶をして下さいました。望月環境大臣は、気候変動対策に取り組むためには、中央政府だけではなく、地方公共団体がイニシアティブをとった気候変動対策は欠かせないことについて触れ、本イベントは日本、マレーシア、ベトナムの低炭素社会づくりの知見を共有する貴重な時間であり、こういった知見がアジア、世界各国において共有され広がることを願っていると述べられました。

 イスカンダル開発地域に関しては、第1に、マレーシア工科大学(UTM)のHo Chin Siong教授から、国際協力機構(JICA)、科学技術振興機構(JST)の地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)のもと、UTM、国立環境研究所、京都大学、岡山大学が協働で策定した「マレーシア・イスカンダル開発地域の2025年低炭素社会ブループリント」についてどのようにイスカンダル開発庁をはじめとする多様な利害関係者とともに実装に向けた取り組みを進めているかを紹介しました。

 第2に、国立環境研究所藤野主任研究員が、京都市と気候ネットワークによる小学生向け環境教育プログラム「こどもエコライフチャレンジ」をもとにイスカンダル開発地域のニーズに合うように開発した「マレーシア版こどもエコライフチャレンジ」の普及に向けた取り組みについて発表をしました。

 第3に、北九州市酒井氏からは、AIMを用いて策定した「マレーシア・イスカンダル開発地域の2025年低炭素社会ブループリント」に沿い、北九州市がイスカンダルマレーシア・パシグダンの“Green and Health City”の実現に向けて取り組んでいる都市間協力について紹介しました。

 ホーチミン市に関しては、GECの木村氏から、二国間クレジットメカニズムのもと、ホーチミン市の「気候変動戦略2030」の策定、及びその実装に向けて、大阪市とGECがベトナム・ホーチミン市で進めている官民技術協力について発表しました。

 マレーシアのプトラジャヤのDato' Omairi bin Hashim氏からは、AIMを用いて策定した「プトラジャヤグリーンシティ2025」を実際の開発計画において採択し、その実現に向けた取り組みを実施していることを紹介しました。本発表において、プトラジャヤにおける温室効果ガスインベントリの編纂を行い、かつ、建築物のエネルギー効率改善によるCO2の削減に向けて、AIMによるシミュレーション、及び東京都による建築物分野の低炭素戦略の実施・モニタリングのノウハウをプトラジャヤの実情に合うように汎用させていく意気込みが示されました。

 東京都の西田氏からは、東京都の気候変動戦略の実施、及び、国際都市間ネットワークへの参加を通じた知見や教訓について紹介しました。特に、大規模事業所における排出量取引制度を実施し続けてきた成果を発表するとともに、東京都のノウハウをイスカンダルやプトラジャヤをはじめとするアジア各国にも展開していく計画について紹介しました。

 パネルディスカッションにおいて、発表者は、科学的知見、及び実際の現場での経験・教訓を踏まえ、各都市において策定された低炭素計画を実装していく際のポイントについて共有し合いました。低炭素技術を導入していくことに加え、多様なステークホルダーとの対話を通じて、信頼関係を築いていくこと、都市間協力を通じ、互いの取り組みを学んでいくことの必要性が確認されました。

 最後に、(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)の評議員で低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)事務局長の西岡秀三氏が科学的知見に基づいた政策形成、及び、域内の知識共有の構築の必要性を強調し本イベントを締め括りました。

写真:Q&A