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2016年11月7日

COP22、始まる

 11月7日(月)、マラケシュ(モロッコ)(図1)において、気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)がいよいよ始まりました。昨日の快晴とは打って変わって、今日のマラケシュは雨模様です。モロッコは、北アフリカ北西部にあり、マラケシュはモロッコの中央部の都市です。

 気候変動COPは、1年に1度開催され、開催地は国連5地域が順番に担当することになっています。今年はアフリカグループの番です。

図1:マラケシュ(モロッコ)の地図 (Google mapより)

 マラケシュでは、2001年に、気候変動COP7が開催され、京都議定書の詳細ルール(運用細則)である、マラケシュ合意が採択されました。気候変動交渉を長く担当したりフォローしたりしている人にとっては、思い出深い地のようです。筆者が国立環境研究所に入って、気候変動交渉のフォローを始めたのは2002年なので、今回初めてマラケシュに来ました。

写真1:COP7の記念切手を拡大したもの。会場内に展示されていました。

 今日の午前中、COP22の開会総会が開催されました。同会合において、モロッコのメズアール外務大臣がCOP22議長に選任されました。ロワイヤルCOP21議長(フランス環境エネルギー海洋大臣。2016年2月、COP21で議長を務めたファビウス前外相の辞任に伴い、COP21議長に就任)からメズアールCOP22議長へと、木槌の引き継ぎが行われました。

写真2:木槌(決議採択の時などに議長が使うもの)の引き継ぎ。中央がメズアールCOP22議長

 木槌の引き継ぎの後、ロワイヤルCOP21議長は、「木槌の他にも、メズアールCOP22議長に“小さな”プレゼントがあります」と言って、スマイリーが描かれた大きな地球のかたちをしたボールをプレゼントしました。

写真3:ロワイヤルCOP21議長からメズアールCOP22議長への“小さな”プレゼント(写真出典:ENB)

 その後、COP22出席者たちは、パリ協定の目的の実現に欠かすことのできない、二酸化炭素を出さない技術への移行のシンボルとして、太陽を模したランプを照らしました。

写真4:太陽を模したランプを照らすCOP22出席者たち。このランプは座席に置いてありました。(写真出典:気候変動枠組条約事務局のFacebookアカウント)

 ロワイヤルCOP 21議長は、パリ協定が発効し、同日時点で100の国と地域が批准していることに触れ、パリ協定をまだ批准していない気候変動枠組条約締約国に対して、2016年中に批准するよう呼びかけました。同議長は、COP 22は「アフリカのCOP」であると評し、今回の会合で、アフリカに気候の正義をもたらそうと述べました。

 このレポートの読者の皆さんは、「気候の正義」という言葉には、あまりなじみがないかも知れませんね。気候正義は、パリ協定の根底にある精神といってもよいかも知れません。国際社会には、自分で温室効果ガスの排出を削減する余地がほぼなく、そして、温暖化影響を強く受けてしまう人たちがたくさんいます。これは、不正義に他なりません。国際社会は、これを正す観点、すなわち、気候正義の観点から、2℃目標の達成を目指して温暖化対策をとっていくことを決め、パリ協定に盛り込んだのです。

写真5:ロワイヤルCOP21議長

 メズアールCOP22議長は、「パリ協定が短期間で発効したこの動きを止めることなく、実行に移していかなければならない」と述べました。

写真6:メズアールCOP22議長

 エスピノサ気候変動枠組条約事務局長は、パリ協定の目的の達成は所与のものではないと述べました。そして、適応への支援、損失と損害のメカニズムに関する進展、そして温室効果ガスの低排出型の開発を可能にするため、どの程度の資金供与がもたらされるかの見通しが必要であると指摘しました。

 エスピノサ気候変動枠組条約事務局長は、COP16(カンクン(メキシコ)、2010年)の議長を務めました。前年のCOP15(コペンハーゲン(デンマーク)、2009年)では、京都議定書第1約束期間後の国際制度をどうするかについてのコペンハーゲン合意が、一部の国の猛反対に遭って正式に採択できませんでした。議長として、混乱した気候変動交渉を立て直し、多国間主義に希望の光を当て、その後のパリ協定につなげた重要人物の一人といって良いでしょう。

写真7:エスピノサ気候変動枠組条約事務局長

 リーIPCC議長は、COPからの要請に応じて作成することになった、1.5℃目標に関する特別報告書が承認されたことなど、科学に基づいた、パリ協定の実施に貢献するIPCCの作業計画について述べました。

写真8:リーIPCC議長

 今日から2週間、ここマラケシュでは、パリ協定の詳細ルールに関する交渉が行われます。パリ協定の概要と今回何について議論されるかは、昨日の記事をご覧下さい。会場や現地の雰囲気も含めて、現地から皆さんにお伝えしていきます。

参考資料:

文・写真(写真3と4を除く):
久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)


※全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)ウェブサイトより転載