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2018年3月28日

環境モニタリング:適切な対策を裏づける科学の力

NIES国際フォーラムレポート

パソ森林保護区内の林冠回廊(キャノピー・ウォークウェイ)
写真1:パソ森林保護区内の林冠回廊(キャノピー・ウォークウェイ)。

環境モニタリング—変わりゆく世界の熱帯生態系

東南アジアにはは熱帯林から、湿地、プランテーションまで多様な陸域生態系が広がっています。これらの生態系における温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、二酸化窒素など)の吸収・放出量気候変動や人為活動の影響を受けやすく、東南アジア地域や全球の温室効果ガス収支に大きな影響を与えます。しかし、東南アジア地域内の現在の温室効果ガスの収支と、これらの収支が将来においてどう変化するするのかは、人口増加や、気候変動、そして自然と人類間の関わり方などによって大きく変化するため、不確実性が高いです。今後、より正確にこれらの収支を定量的に評価することは排出削減目標を立てるために、そして効果的な緩和・適応策を推進するにあたって大変重要な課題です。このセッションで共有される観測、実験、モデル研究といった多角的なアプローチによる研究発表は、異なる時空間スケールを超えて互いの科学的知見を橋渡しします。

このセッションでは、10名が登壇しました。

  • 梁乃申氏 国立環境研究所 地球環境研究センター
  • Samsudin Musa氏 マレーシア森林研究所
  • Mazlan Hashim氏 マレーシア工科大学
  • Ahmad Makmom Abdullah氏 マレーシアプトラ大学
  • Kho Lip Khoon氏 Malaysian Palm Oil Board
  • Elizabeth Philip氏 マレーシア森林研究所
  • Lulie Melling氏 Sarawak Tropical Peat Research Institute
  • Mohan Kumar Sammathuria氏 Malaysian Meteorological Department
  • Poonpipope Kasemsap氏 カセサート大学(タイ)
  • 平田竜一氏 国立環境研究所 地球環境研究センター
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
登壇者
写真2~11:登壇者たち
登壇者

本セッションでは様々なバックグラウンドを持つ研究者を迎え、熱帯林を調査対象としたものを中心に、観測からモデル研究まで多岐に渡りました。国立環境研究所がパソ森林保護区で進めてきた研究の紹介をはじめ、熱帯林の管理システム、リモートセンシングに基づいた熱帯における開花のモデル研究、マレーシアの酸性雨への影響評価に向けた熱帯林の土壌の酸性化に関する研究、熱帯泥炭地における炭素と窒素の生態系、REDDプラス(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減)の適用とそのマレーシアのNDC(*)への貢献、サバ州北部の森林の気象タワーにおける二酸化炭素測定、タイにおけるゴム生態系の炭素循環に関する学際的な研究、ボルネオ島の熱帯泥炭地の重要性と温室効果ガスフラックスの評価について、様々な研究活動や成果について紹介されました。

*NDC:Nationally Determined Contribution;直訳すると「国が決定する貢献」となりますが、各国が定める温室効果ガス排出削減目標を意味します。パリ協定で決定した目標について、今後は達成に向けた努力をしていくことが求められています。

見出し:さらなる協働に向けて

セッションのまとめでは、国立環境研究所は今後も協働の体制を拡大するとともに、熱帯生態系と気候変動、人口増加、そして緩和策と適応策の間の相互作用に関する最新の研究成果を共有するために、マレーシアと近隣の熱帯諸国の研究機関と科学者をまとめるために努力していくことを表明しました。

会場の様子
写真12、13:モデレーターのHarun氏(マレーシア森林研究所)と三枝氏(国立環境研究所 地球環境研究センター)

次号が最終号となります。最終号では、今回のフォーラムのまとめを提示します。

(文・杦本友里(研究事業連携部門)・芦名秀一(企画部国際室))
(写真・成田正司(企画部広報室))