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マテリアルフロー分析
- モノの流れから循環型社会・経済を考える

環境儀 NO.14

森口祐一
マテリアルフロー分析は循環型社会に向けて漕ぎ進むための羅針盤となる研究です。

 毎年7億トンあまりの資源が輸入される日本。とくに金属資源はほとんど輸入に頼っています。これらの多くは,選別され成分含有率を高めた鉱石や精錬済みの金属の形で輸入されます。日本でのモノの流れは見かけ上はここから始まります。

 しかし,輸出国では鉱石採掘のためさまざまなモノの流れがあります。山の自然は破壊され,排水が河川を汚濁し,鉱山自体も表土・岩石が掘削され廃棄されます。統計では表に出ることはありませんが,このようなモノの流れは隠れたフローとして存在しているのです。マテリアルフローの研究は,これまで経済活動の指標から抜け落ちていた「隠れたフロー」もしっかりとらえ,経済とモノ両方の流れを明らかにします。

 2004年4月20,21日の両日,経済協力開発機構(OECD)環境大臣会合がパリで開かれました。日本からは環境副大臣が出席し,日本政府の提案をもとにした「物質フローと資源生産性に関する理事会勧告」がこの機会に承認されました。

 日本では,2000年3月に廃棄物の適正な処理とリサイクルによる資源の有効利用を統合した形で循環型社会形成推進基本法(循環基本法)が制定され,2003年3月にはそれに基づいた循環型社会形成推進基本計画(循環基本計画)が閣議決定されました。この計画には,経済社会におけるモノの流れを全体的にとらえるための「物質フロー(マテリアルフロー)分析」の考え方に基づき,資源生産性(入口)・循環利用率(循環)・最終処分量(出口)の3つの指標とそれぞれの数値目標が含まれており,OECDへの提案などを通じて,物質フロー分析を政策に活用する取組みが世界に発信されています。

 国立環境研究所では,この分野での先導的な研究を行い,政策展開を支援してきましたが,新しい流れを受けてさらに研究を続けています。本号では,マテリアルフロー分析の研究の歩みを紹介するとともに,最近の成果として「循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究(中間報告)」の中から,循環型社会への転換に係わる諸施策の立案・実施・達成状況評価を支援することをめざす「産業連関表と連動したマテリアルフロー分析手法の確立」を紹介します。