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微小粒子の健康影響
- アレルギーと循環機能

環境儀 NO.22

小林隆弘
動物実験や疫学調査から微小粒子は肺の奥に容易に入り込みアレルギー症状、循環機能障害の症状をさらに悪化させることがわかりました。

 大気中に存在する粒子のうち浮遊粒子状物質(10ミクロン以下の粒子、SPM)は、大気汚染物質として環境基準が定められています。硫黄酸化物、窒素酸化物が規制により大幅に削減されたことに比べると、自動車排ガス由来のSPMは窒素酸化物生成とのトレードオフ関係にあるため削減が難しく、また、黄砂、花粉など自然由来のものは年変動が大きく、環境基準の達成率がきわめて低い項目とされてきました。

 ところで、SPMは小さな粒子ほど毒性が強いことが多く、健康面での影響が心配されています。いったん吸い込まれた粒子は長いこと肺や体内に留まり免疫機構などに影響を及ぼすからです。

 その微小粒子、実は自然界にはほとんど存在せず、人為的に作り出されるものが中心です。なかでもディーゼル自動車から排出される排気中の粒子(DEP)は、毒性が強いといわれる微小粒子(PM2.5:2.5ミクロン以下の粒子)の主役と見られ、SPMの健康影響を調べるためにはDEPの研究が求められていました。

 国立環境研究所では、1990年代からディーゼル排気に関する研究を始め、2001年度からは重点特別研究プロジェクトとして「大気中微小粒子状物質(PM2.5)・ディーゼル排気粒子(DEP)等の大気中粒子状物質の動態解明と影響評価プロジェクト」を行っています。今回は、この中から、DEPなどの微小粒子のアレルギーや免疫機構に及ぼす影響や循環機能に関する研究の概要やその成果を紹介します。