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VOCと地球環境
- 大気中揮発性有機化合物の実態解明を目指して

環境儀 NO.40

横内陽子
地球環境を支配する重要な要素のひとつである大気中VOCの発生源解析と動態解明のためには、系統的な観測が不可欠です。

 地球を取り巻く大気圏には、様々な揮発性有機化合物(VOC)が存在しています。自動車排ガス中の炭化水素や工業製品として作られたフロンなどが、都市の光化学オキシダントやオゾン層破壊などの問題を引き起こしてきたことはよく知られています。しかし、こうした人為起源VOCの他に自然界からもVOCが放出されており、例えば、地球上の植物が出すVOCの発生量が年間10億トンにも及ぶこと等は、あまり知られていません。

 植物起源のVOCは人為起源VOCとは違った成分ですが、やはり大気中の反応に関わったり、成層圏オゾンを壊したりしています。また、海洋から放出される硫黄を含むVOCは雲の素になるエアロゾルを作ります。それらの存在は私たち人間や現代の動植物には都合のよいものだったはずです。しかし、そのバランスは大気汚染や気候変動によって乱されるかもしれません。国立環境研究所では、このような地球環境と深く関わっている自然起源VOCについて、人為起源VOCと同様に、その発生~変質~影響を解明するための研究を進めてきました。

 今号ではこの自然起源VOC研究への取り組みと、温室効果気体として近年、問題となっている代替フロン類の観測・解析研究について、ご紹介します。