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発刊に当たって

理事長(当時) 合志 陽一

 国立環境研究所は昭和49年3月に,国立公害研究所(当時)としてつくばの地に産声をあげて以来,わが国唯一の公害研究の専門機関として,光化学スモッグをはじめとする大気汚染の問題,霞ケ浦の水質問題など,多くの公害問題の実態の把握,発生機構の解明,影響評価などの研究に取り組んできました。さらに,公害問題から環境問題へ,また地域的な環境問題から地球規模の環境問題へとその研究対象を拡大させ,平成2年,国立環境研究所に改組改称し再出発いたしました。そして,平成13年4月には行政改革の一環として,独立行政法人国立環境研究所として自由な運営方式で新しい道を歩み始めることになりました。

 この間,多くの研究成果を専門の学術雑誌に研究論文として発表し,また学術団体の主催する学会などで報告をしてまいりました。これらの研究成果はそれぞれの研究分野で高く評価され,環境科学分野での学術の振興に寄与してきたと自負しております。また,研究所の出版する特別研究報告,研究報告,資料集,年報などの刊行物を通して関連研究者,環境行政担当者などへ成果の広報普及を図ってきたところです。

 しかしながらひるがえって考えてみるに,私ども国立環境研究所における研究活動について,国民の皆様にご理解をいただくための努力をどれほど払ってきたかという点においては,いささか不十分であったとのそしりを免れるものではありません。いまや環境問題は,研究者や環境行政担当者だけが理解すればよいものではなく,多くの国民の皆様の関心事であり,私ども研究を専門とする機関には,正確な,そして最先端の情報をだれにでもわかる形で提供することが求められていると認識しております。そういう意味では,従前の刊行物は必ずしも,多くの国民の皆様の要請にお応えできるものではありませんでした。

 このような認識のもとに,国立環境研究所ではよりわかりやすい出版物の刊行をめざし,このたび「国立環境研究所の研究情報誌『環境儀』」を発刊することにいたしました。この『環境儀』は,当研究所が実施している多くの研究の中から重要かつ大いに興味ある研究を選び出し,その背景や成果について最新の情報をお知らせしようとするものです。とりわけ,その研究を担当した生身の研究者の姿を知っていただくことに重点を置いています。研究所に勤務する研究者の一人ひとりが,研究の推進にとってかけがえのない存在であることを知っていただきたいからです。

 地球儀が地球上の自分の位置を知るための道具であるように,『環境儀』という命名には,われわれを取り巻く多様な環境問題の中で,われわれは今どこに位置するのか,どこに向かおうとしているのか,それを明確に指し示すしるべとしたいという意図が込められています。『環境儀』に正確な地図・航路を書き込んでいくことが,環境研究に携わる者の任務であると考えています。

 国立環境研究所の研究活動の一端をご理解いただく上で,本誌が有効であることを願っております。

2001年7月