平成6年度国立環境研究所予算案の概要について
立川 裕隆
国立環境研究所の平成6年度予算案として,約70億円が計上され,前年度当初予算額約65億円に対して約5億円の増額,約7.1%の伸びを示した。また,環境庁全体では約673億円が計上され,約36億円の増額,約5.7%の伸びを示した。今回は6年度国立環境研究所予算案の主要点について紹介する。
1.環境情報提供システム開発調査に係る経費 … 民間環境保全活動や地方公共団体等における環境行政を推進するために必要な情報提供体制の整備を行う。6年度は,民間環境情報の情報源情報を整備する(情報源情報調査)。
2.特別研究費 … 平成5年度,9課題の特別研究を実施しているが,1課題が5年度で終了し,6年度から新たに「廃棄物埋立処分に起因する有害物質暴露量の評価手法に関する研究」を9年度までの計画で開始する。これは,廃棄物埋立処分について,有害物質負荷量及びその環境影響を評価する手法の構築に関する研究を行うものである。
3.開発途上国環境技術共同研究費 … 開発途上国における適正な環境保全・対策技術の普及を図ることを目的として,6年度から新たに次の2課題を10年度までの計画で開始する。
・開発途上国における自然利用強化型適正水質改善技術の共同開発に関する研究
(共同研究相手方:タイ国)
・開発途上国における石炭燃焼に伴う大気汚染による健康影響と疾病予防に関する共同研究
(共同研究相手方:中国)
4.地球環境研究交流推進等経費 … 地球環境研究あるいは地球環境モニタリングを推進するため,地球環境研究者交流会議の開催,各種研究分野の客員研究官等の招へいを行うとともに,新たにスーパーコンピューターを用いた地球環境研究に関する国際ワークショップを開催する。
5.データベース経費[地球環境研究センター] … 国立環境研究所地球環境研究センターは国連環境計画(United Nations Environment Programme)の地球資源情報データベース(Global Resource Information Database)事業の協力センター(GRID-つくばセンター)に指定されている。6年度は,資料収集,ソフトウェアの整備等を引き続き行うとともに,新たに環境データとして取り込むこととなった衛星データの変換プログラムの開発,加工・配布,アジアベクトルデータ(州・県境界図)の作成を実施する。
6.地球環境モニタリング経費 … 5年度に引き続き各モニタリングの実施・充実を図るとともに,7年度に迫った衛星ADEOS(Advanced Earth Observing Satellite)の打ち上げに備えて,衛星のセンサーから送信されるオゾン層の状況等に関する情報の処理・解析のための計算機の整備とソフトウェアの開発を行う。また,新たにミリ波観測器による高高度成層圏オゾンのモニタリングを開始するとともに,国連環境計画(UNEP)の地球環境モニタリングシステム(GEMS)/水環境プロジェクト(WATER)(世界各国における河川・湖沼等の汚染状況を把握するためのプロジェクト)のナショナルセンターとしての業務を行うなど,国際的なネットワークへの貢献を図る。
目次
- 研究組織とはどんな組織か巻頭言
- 環境科学と行政論評
- アジア太平洋地域における温暖化対策の研究プロジェクト研究の紹介
- “Zooplankton community responses to chemical stressors: A comparison of results from acidification and pesticide contamination research” Karl E. Havens and Takayuki Hanazato: Environmental Pollution, 82, 277-288 (1993)論文紹介
- 地球環境問題における国家の態度はどのように決まるのだろう?研究ノート
- 春を待つチェサピーク湾のほとりから海外からのたより
- 第9回全国環境・公害研究所交流シンポジウム
- 「第13回地方公害研究所と国立環境研究所との協力に関する検討会」報告
- 国立環境研究所設立20周年記念行事
- 国立環境研究所環境情報ネットワーク(EI−NET)ネットワーク
- 表彰・主要人事異動
- 編集後記