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ISOにおける環境管理規格

環境問題豆知識

乙間 末廣

 環境問題の中心的課題がかつての産業公害から地球環境に推移しているが,産業活動が直接的あるいは間接的に大きく関与していることに変わりはない。 1991年,産業界は翌年の「国連環境開発会議(United Nations Conference on Environment and Development)」に呼応して,「持続的発展のための産業界会議(Business Council for Sustainable Development)」を開催し,産業活動による環境への負荷がより少なくなることを目指して環境管理に関する自主的な規格を確立することを決定した。これをうけ,ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)に環境管理規格のための技術委員会が設けられ,1993年から規格の作成作業が開始された。

 規格の作成作業は現在も進行中であるが,その大枠は既に固まっている。複数の規格が図にある5つの分野において発行され,それぞれ14000番台の番号が付けられることから,一連の環境管理規格はISO14000シリーズと呼ばれる。この規格の中心となるのは,環境管理のために事業者が有すべき体制及びプログラムに関する「環境マネジメントシステム規格(ISO14001)」であり,その規格適合性を外部の第三者が審査,認証するためのものが「環境監査規格」である。「環境パフォマンス評価規格」は事業者が自らの活動によってもたらされる環境負荷を継続的に改善していくための考え方及び手法について定めている。以上の3規格は事業所(サイト)に関するもので,他の2つは製品に関する規格である。「環境ラベル規格」は製品の環境への係わりをラベル情報として提示,あるいは第三者がそれを認証するときの原則等について記し,「ライフサイクルアセスメント規格」は製品のライフサイクルにわたる環境負荷及びその影響を評価する手法についての規格である。図はこれらの規格の関係を模式的に表示したもので,必ずしも厳密ではない。

 現在までに「環境マネジメントシステム規格」と「環境監査規格」,及び「ライフサイクルアセスメント規格」の一部が既に発行されている。当初の予定では,1998年末までに残りの規格も発行されることになっている。なお,この環境管理規格は製品の仕様を統一する製品規格ではなく,製品を生産するシステムを対象にするいわゆるシステム規格と呼ばれるもので,同様の規格に品質規格(ISO9000シリーズ)がある。

概念図
図 ISO環境管理規格の相互関係

(おとま すえひろ,社会環境システム部資源管理研究室長)