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「ダイオキシン類対策高度化研究」について

研究プロジェクトの紹介(平成12年度開始ダイオキシン類対策高度化研究)

伊藤 裕康

 ダイオキシン類(塩素化ジベンゾ-p-ジオキシン類,塩素化ジベンゾフラン類およびコプラナーPCB 類)は環境中に広く存在し,食品や大気を通じて人体に蓄積することが知られ,ガン原性,催奇型性等と関係していると考えられている。また,ある種の野生生物における生殖機能障害はこうしたダイオキシン類によって引き起こされているとの可能性が指摘されており,ヒトを含む生物種の存続への危機意識が高まってきている。このようなダイオキシン類に対する危機意識は,我が国ばかりでなく先進国の国民に共通したものである。このため,我が国においても,国民の安心が得られるよう,ダイオキシン類汚染問題に対する総合的な環境対策の実施が社会的要請となっており,その科学的基礎として,先端的な科学技術を活用した研究によって,新たな計測手法を用いた問題物質の常時的な検出や簡易な検出,環境動態,特に地球的な規模での移動と分解及び生体影響の評価,更にはダイオキシンの社会的受忍性に関する研究を緊急に実施する必要がある。このような目的で本研究は以下のサブテーマによって実施される。

 サブテーマ1は,「新たな計測手法に関する開発研究」で,(1)ダイオキシン類分析にかかわる標準物質に関する研究では,新たな計測手法の開発において,また各種の異なる公定法等の検定において,分析値の信頼性を保証するための共通標準物質の精度管理を含めた評価研究を行う。(2)ダイオキシン類の簡易計測法の開発に関する研究では,現行のダイオキシン類の計測法で用いられている煩雑なサンプリング,抽出,多段階のクリーンアップ操作によって夾雑物を除去する前処理やキャピラリカラムガスクロマトグラフ/高分解能質量分析法は,環境試料の微量測定ができるが,1週間以上の分析に時間がかかることや,分析のコスト(1検体20万円以上)が高い等問題点が多いため,低価格の低分解能 GC/MS およびバイオアッセイを用いた簡易計測法の開発を行う。また,(3)では,ダイオキシン類の新たなオンサイト測定法に関する研究で,発生源でのサンプリング,計測を可能とする排ガスのリアルタイムモニタリング手法および移動型ダイオキシン測定手法の開発を行う。

 サブテーマ2は,「ダイオキシン類の暴露量及び生体影響評価に関する研究」で,(1)ダイオキシン類の暴露量,体内負荷量の評価に関する研究では,ヒトに於けるダイオキシン類の暴露量,体内負荷量を評価するため,血液,組織,胎盤等のダイオキシン類濃度の測定と体内動態・負荷量の推定を行う。(2)生体影響指標の適用可能性の検討および新規指標の検索・開発に関する研究では,ダイオキシン類の暴露を鋭敏に検地する生体影響指標の検索と開発を行う。(3)ダイオキシン類に対する感受性の決定要因に関する研究では,ダイオキシン類に対する感受性の種差,個体差を決定する要因を分子レベルで明らかにする等としている。また,平成13年度からは,臭素化ダイオキシン類の分析手法の開発で主に環境試料を対象に,高分解能GC/MS および LC/MS を用いた臭素化ダイオキシン類,臭素/塩素混合ダイオキシン類および臭素系難燃剤の分析手法の開発を行う。臭素化ダイオキシン類の暴露量,体内負荷量の評価に関する研究で,臭素化ダイオキシン類,および臭素/塩素混合ダイオキシン類について,ヒトにおける暴露量,体内負荷量の評価を行う等が追加される予定である。

(いとう ひろやす,化学環境部計測管理研究室)