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2020年3月27日

東南アジア熱帯林における高解像度3次元モニタリングによる 生物多様性・機能的多様性の評価手法の開発
平成28~30年度

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-135-2019

SR135表紙画像
SR-135-2019 [14MB]

 東南アジア熱帯林における先行研究では、大面積プロットの設置による森林の多様性・動態観測、多点でのカメラトラップ法による種多様性評価、観測タワーを活用した樹冠部における生物多様性評価、大気・気象観測などが進められてきました。しかし、(1)林床と林冠をつないだ観測に対応できるタワーが1地点しかないため、環境不均一性の高い熱帯林で一般化ができない、(2)生物多様性モニタリングには大面積スケールが必要であるが、地上調査には限界があるため十分なデータが得られていない、といった問題があり、これまでの手法から得られる情報だけでは、熱帯林生態系全体のプロセスを理解するには不十分でした。これら問題点を解決し、熱帯林生態系全体のプロセスを理解するためには、林床と林冠をつないだ観測を大面積で実施し、それらの情報を統合する必要があります。

 このような背景を踏まえ、本研究課題では、(1)大気圏と相互作用をもつ森林生態系機能プロセス、(2)森林・林冠構造の複雑性、(3)哺乳類の種多様性の3点について動態と変化を広域・長期的・高解像度でモニタリングする手法の開発を進めてきました。

 その結果、森林内の光環境に応じて植物の光合成活性や生物起源揮発性有機化合物の放出量が異なること、林冠構造の中でも林冠の高さが種多様性と関連があること、熱帯林内で採取した雨水等には主要な陸生哺乳類ばかりではなく樹上に分布する野生動物のDNAも含まれていること、などが明らかになりました。

 今後、本報告書の中の知見や技術を応用することにより、東南アジア熱帯林における大面積調査の効率化を実現できると考えられます。また、生態系プロセスのメカニズムを統合的に理解する研究に発展することが期待されます。


(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 大沼学)