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2024年3月29日

安全確保研究プログラム(課題解決型研究プログラム)(平成28~令和2年度)

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-144-2024

SR144表紙画像
SR-144-2024 [13.7MB]

 本報告書は、平成28年度~令和2年度の5年間にわたって実施した課題解決型研究プログラムの一つである「安全確保研究プログラム」の研究成果を取りまとめたものです。

 本研究プログラムで取り組んできた研究課題は、主に化学物質に対する人の健康影響に関する課題、同様に主に化学物質に対する環境影響に関する課題、化学物質や水銀などの物質の環境中の動態や曝露に関する課題、大気汚染の影響と対策に関する課題、水環境の汚濁評価と対策に関する課題などの広い範囲にわたります。それぞれの研究課題には、例えば「化学物質が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを目指す」とした持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD:World Summit on Sustainable, 2002年)で示された目標や、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約、水銀に関する水俣条約、長距離越境大気汚染条約などの国際条約などによる要請から、化学物質審査規制法、農薬取締法、大気汚染防止法、環境基本法など国内法令による要請まで多くの背景と必要性に対応して研究課題が設定されたものです。

 このようにさまざまな背景を持って構成された課題群ですが、いずれも環境要因による人と環境への影響を把握し、懸念への対策を進め安全・安心を担保する施策を進めることに共通の目標を持っていると考えられます。このことから、広い範囲の課題群全体を安全確保研究プログラムとして構成し、様々な角度からの安全確保の課題を広い分野の研究者の共同により進めることとしました。この構成は、環境省の環境研究・技術開発の推進戦略の重点課題にいう安全確保領域に対応するものでもあり、課題構成にあたっては、同推進戦略の安全確保領域に示された具体的課題を意識して、環境行政の求める具体的な課題解決への貢献を目指すとともに、それぞれの分野における学術的成果を期待すべく研究を進めました。

 非常に広範な分野の研究を含むことから多くの研究プロジェクトによる構成となり、あるいは全体を把握しにくいと思われるかもしれません。見通しをよくする努力の必要性は承知しつつ、一方で、課題の多様性は安全確保領域の一つの本質であり、人間と生物の安全に関する視点が本質的に多面的であることを反映したものとも思います。

 環境の安全確保は今後とも環境問題の最も重要な本質であり続けることは間違いないところです。多面的な安全確保を、環境問題全体の中でどのように取り組み、達成していくか、今後とも取り組みが必要であると思います。第4期中長期計画期間におけるこの課題への私たちの取り組みの成果が、今後の安全確保の課題、環境問題の諸課題の解決のための貢献となることを願っております。


(国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター センター長 鈴木規之)