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都市廃棄物からの最も費用対効果の高い資源・エネルギー回収に関する研究(平成 27年度)
A study on cost-effective energy and resource recovery systems from municipal solid wastes

予算区分
BE 環境-推進費(補助金) 3K143016
研究課題コード
1416BE003
開始/終了年度
2014~2016年
キーワード(日本語)
都市廃棄物,廃棄物処理計画,エネルギー回収,費用対効果分析
キーワード(英語)
municipal solid waste, municipal waste disposal plan, energy recovery, cost-benefit analysis

研究概要

 廃棄物からの効率的な資源・エネルギー回収による低炭素社会への貢献は、これまでにも重要な課題であったが、東日本大震災以降その重要性が増大し、分散型のエネルギー供給手段としても注目されている。一方、とりわけ地方部においては少子高齢化等による人口減少が予測され、将来の廃棄物量変化にも備えた無駄のないリサイクル・廃棄物処理システムの計画が求められる。
 そこで本研究では、大小の各都市において発生する廃棄物から、経済的かつ極めて効率的に資源・エネルギーを回収する発電・熱供給と廃棄物収集のシステムについて提案するとともに、自治体が計画作成・評価に利用可能なモデルを作成することを目的とする。具体的には、マテリアルの回収や原燃料化のための前処理施設、バイオガス発電や焼却発電の施設は、規模の増大とともに効率の向上が見込まれるため、規模に対する発電・エネルギー回収効率、経済性の関係を示す施設のプロセスモデルを作成する。一方、収集は広域にするほど高コストとなるが、分別収集のモデルを作成し、施設と収集のバランスから、エネルギー効率と経済性の両面で望ましい分別数や今後整備すべき施設の種類や規模を示す。その際、既存施設の耐用年数などの制約条件を踏まえた上で、効率向上のための選択肢として、分別収集したプラスチックや雑紙類等の素材産業利用、焼却とバイオガス化を複合させた高効率発電、周辺の工場や病院、住宅等への熱供給のオプションについても評価可能なモデルを作成し、都市の規模や様々な地域条件に合わせて、高度なエネルギー利用の計画作成を可能とする。これらの成果を統合して、人口変化に合わせた経年的シミュレーションを実施可能なモデルを作成し、自治体等において中長期的にも最適な計画作成・評価を行う支援ツールとすることを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:政策研究

全体計画

 主として一般廃棄物を対象として(同様な処理施設が利用可能な産業廃棄物を含む)、廃棄物からのエネルギー回収効率を最大化する技術・システムの選択・評価に必要な施設規模別のプロセスデータを整備し、その建設・運転及び収集を含めた費用を算出して、その費用対効果を自治体の政策担当者等が評価可能なツールを作成する(参考図参照)。
 具体的にはまず、従来型の焼却発電、メタン発酵に加えて、エネルギー回収を大幅に高効率化するオプションについて検討し、その効果を算定可能なモデルを作成する。焼却とメタン発酵を複合して発電量の増加を図る複合廃棄物発電施設では、プロセス設計を行い、適切なシステム構成について検討する。廃棄物の組成別、規模別に設計を行うことで、各都市の廃棄物組成や人口規模に合わせた検討が可能なプロセスモデルを整備する。
 施設周辺への熱利用や、比較的高品質な廃棄物(高発熱量、低塩素濃度)の産業利用のモデルについては、既存の知見を活かしながら、費用対効果を総合的に評価可能なツールへの組み込みを可能な形で整備する。
 また、収集と施設の総合的な費用を最小化する、最適な施設規模について評価可能なモデルを作成する。収集モデルは、自治体担当者が容易に利用可能な簡易なモデルと、地理情報システム(GIS)を利用して、地域特性をより精密に反映するモデルを併用する。
 これらのサブモデルを組み合わせ、今後の人口変化、生産や消費パターンの変化、市民の3Rへの協力度合いなどを勘案しながら、廃棄物処理計画に直接的・間接的に関わる中長期(施設の耐用年数である30年程度)のシナリオを作成する。このシナリオを基に、都市規模別にエネルギー回収効率が高く、費用面でも優れたシステムを提案・評価する。その際、国内の異なる規模の都市や、アジア地域へも適用可能な汎用性を持たせる。更に、自治体担当者等が独自に利用して評価可能なシミュレーションツールのプロトタイプを作成する。

今年度の研究概要

(1)複合発電施設のプロセス設計とモデル化
 既存の焼却発電やメタン発酵発電に関する、施設規模別のプロセスデータを整備する。また、既存の施設で、メタン発酵と焼却施設が連携している事例や、スーパーごみ発電など、複合的な施設に関する情報を再整理する。また、提案する複合発電施設について、研究メンバーによる高効率化のための基礎的検討に加えて、焼却施設等の設計の経験を持つ外部機関への委託により、施設規模、廃棄物組成別に、実態に即した設計と評価に着手する。
(2)資源・エネルギーの地域利用モデルの作成
 国内外における廃棄物の素材産業利用や、焼却施設の廃熱の活用事例等を収集し、課題や利点を整理する。周辺熱供給のための配管敷設は国内ではあまり進んでいないが、海外では多数事例が存在する点にも留意する。
(3)施設と収集の総合的最適化モデルの作成
 エネルギー回収の高度化に求められる分別パターンを検討し、その分別収集のモデル化に必要なパラメータを抽出する。
(4)長期総合シミュレーションツールの作成と政策提言
 都市廃棄物処理の中長期的な計画策定に関して、関係者へのヒアリング調査等を実施するとともに、研究メンバーで議論し、技術や政策の他、社会や経済面等で考慮すべき項目や課題を整理する。

外部との連携

豊橋技術科学大学、神戸大学と連携して研究を進める。

課題代表者

藤井 実

  • 社会システム領域
    システムイノベーション研究室
  • 室長(研究)
  • 博士(工学)
  • 化学工学,システム工学
portrait

担当者