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湿地の多面的価値評価軸の開発と広域評価に向けた情報基盤形成(平成 31年度)
Multi-dimensional evaluation of ecosystem services of wetlands and establishment of Japanese wetland database

予算区分
BE 環境-推進費(補助金)
研究課題コード
1719BE002
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
生態系サービス,湿地,生物多様性データベース
キーワード(英語)
ecosystem services, wetland, biodiversity database

研究概要

湿地の生物多様性の損失は21世紀に入ってもなお進行しており、大きな社会的損失を招いている。本研究では、重要な湿地を緊急かつ効果的に保全・再生するための科学的基盤を、実践的に構築する。
自然再生を効果的に進める上では、広域的な湿地の分布と生物多様性のデータを活用し、優先順位を考慮して計画を立案する必要がある。本研究では既存データと現地調査の結果を統合し、全国の湿地の植物・植生情報を網羅したGISデータベースを作成する(サブテーマ3)。
さらに本研究では、湿地の多面的な機能や生態系サービスを評価する手法を開発する(サブテーマ2)。霞ヶ浦流域をモデルとし、農業生産、水質浄化機能、湖沼での漁業等の生態系サービスを評価し、相互のトレードオフやシナジーを分析する。
一方で、湿地生態系の現状把握や自然再生の評価では、効果的・効率的なモニタリングが不可欠である。本研究では市民参加による湿地生態系モニタリング手法を開発する(サブテーマ4)。市民参加型調査には、科学的知見の普及といった長所が期待できる一方、精度の管理等の課題がある。本研究では博物館と連携することにより、実践的に調査手法を改善する。
これらの成果を統合し、関東地方において実際に湿地再生事業を計画・実施・評価する(サブテーマ1)。指標種のハビタットモデルとサブテーマ3で作成した湿地データベースを活用して対象地と方法を検討し、再生事業とサブテーマ4で開発した市民参加型調査を展開する。その上で、サブテーマ2で開発した手法による湿地生態系の多面的な機能・サービスの評価を行い、関係者で共有し、取り組みの改善を図る。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

最終目標:本研究では、湿地を対象とした効果的な保全・再生戦略立案の基礎となる「日本の湿地データベース」「水生植物データベース」を作成するとともに、湿地の生態系機能・サービスを評価する手法を確立し、それらを利害関係者の合意形成を含む自然再生事業の実践に適用する。成果を重要湿地選定やモニタリングサイト1000(陸水生態系)などの湿地保全・監視政策に寄与する知見としてとりまとめるとともに、愛知目標後の戦略目標の策定に向けた提言を行う。
●サブテーマ1は、サブテーマ1〜4の成果と広域で湿地を利用する指標種のハビタットモデルを活用し、河川周辺の休耕田の湿地化など小規模な自然再生事業を立案・実施するとともに、生物多様性保全のみならず治水や水質浄化といった生態系機能・サービスにもたらすがもたらす効果を評価する。
●サブテーマ2では霞ヶ浦流域の里・川・湖システムを対象として、土地利用と栄養塩負荷の関係の解析、水質の水産資源量および湿地の生物多様性の関係分析を行い、シナジーを実現するための提案を行う。また、生態系機能と生物多様性の関係やそれぞれの生態系機能と植生(多様性や構造)の関係を明らかにし、機能の向上・維持に向けた湿地管理の方策を検討する。
●サブテーマ3では文献調査と現地調査にもとづき、低層湿原、高層湿原、マングローブ林を含む塩性湿地までを対象に、各湿地のポリゴンデータと植物相・植生データを含む日本の湿地データベースを作成する。成果はサブテーマ1で活用するだけでなく、日本の生物多様性の現況把握の基盤として広く活用できるものとする。
●サブテーマ4では湿地生態系の主要な環境要因と植生を効果的に調査する手法を実践的に開発し、マニュアル化する。さらに得られた植生調査データから湿地植生としての健全性を評価するため、日本産維管束植物全体を対象に、水域および湿地への依存度を階級化した水生・湿生植物データベースを作成する。

今年度の研究概要

サブテーマ1では、湿地の生物分布情報と生態系機能情報を統合し、関東地方における保全・再生効果の高い湿地域を推定する。自然再生事業地での市民参加型調査を実践し、湿地保全・再生政策に寄与する提言をとりまとめる。
サブテーマ2では、生態系機能・サービス間のトレードオフが生じる機構の理解を踏まえ、流域内で複数の生態系機能や生物多様性保全を両立させる生態系管理方策を提案する。
サブテーマ3では、データベースの項目や内容の追加・調整を行い、全国版湿地GISデータベースを完成させる。完成したデータベースを公表する。
サブテーマ4では、市民参加型調査を継続するとともに、参加者への教育効果の評価を踏まえ、普及用の資料を作成する。前年度作成した、「日本産水生・湿生植物データベース(仮称)」を活用した湿地植生の健全度評価を行う。

外部との連携

東邦大学、北海道大学、新潟大学との共同研究

課題代表者

西廣 淳

  • 気候変動適応センター
  • 副センター長
  • 博士(理学)
  • 理学 ,生物学
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担当者