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嫌気性細菌群の高度利用による有害化学物質を含有する電子産業廃水のグリーン処理(令和 2年度)
Green treatment of electronic industrial wastewater containing toxic chemicals by advanced utilization of anaerobic bacterial consortium

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
2022CD001
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
有機化学物質,メタン発酵,生物膜
キーワード(英語)
organic chemicals,methane fermentation,biofilm

研究概要

スマートフォン等の普及により半導体等の電子部品の生産量が急増しており、その製造工程から多量に排出される廃水の省・創エネルギー型処理技術の開発は急務である。本研究では電子産業廃水に含まれるイソプロピルアルコール、水酸化テトラメチルアンモニウム及びモノエタノールアミンに着目し、分子生物学的アプローチ【分解細菌群の機能特定や代謝経路の解明】とプロセス工学的アプローチ【効率的な細菌群の集積化・保持技術の開発】を補完的に組み合わせた解析・開発を行い、長期安定的に適用可能なメタン発酵廃水処理技術の確立、即ち有害化学物質の適正処理と廃水処理の低炭素化(グリーンプロセスの構築)を目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

本研究では 電子産業廃水に含まれるイソプロピルアルコール(IPA)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)およびモノエタノールアミン(MEA)に着目し、生物膜(グラニュール汚泥)を利用したメタン発酵処理法(UASB法)による有用細菌群の利用技術の開発と、先進的な分子生物学的解析手法(分解細菌群の機能の特定や代謝経路の解明)による保持汚泥の解析を組み合わせる事で、難分解かつ有害な有機化学物質を長期安定的に適用可能なメタン発酵廃水処理技術の確立を目指す。連続廃水処理試験によるメタン発酵法の適用性評価(1〜3年目)、有機化学物質の分解に関わる細菌群集と分解経路の特定(1〜3年目)、実用化に必要となる要素技術の検討と技術実装効果の試算(2〜3年目)を実施する。

今年度の研究概要

1. 有機化学物質を含む模擬電子産業廃水の連続処理試験
ラボスケールのUASBリアクターを用いた模擬電子産業廃水の連続処理試験を20℃温度条件下で行い、有機化学物質含有廃水に対する技術の適用性評価を実施する。予め、分解性に優れる糖および低級脂肪酸で馴致を行ったメタン発酵グラニュール汚泥を植種し、IPA、TMAH、MEAなどの有機化学物質を炭素源とする模擬廃水を供給して、各有機化学物質の処理特性、メタン生成特性を評価する。また、UASB法の性能維持に必要な、保持グラニュール汚泥の物理的性状(粒径、汚泥沈降指標)を経時的に測定し、各有機化学物質の処理による細菌相変化と汚泥の物性との関係性を評価する。

2. 保持汚泥の微生物生態学的な特性評
有機化学物質(IPA、TMAH、MEA)で馴致されたグラニュール汚泥のメタン生成活性の評価を実施し、保持汚泥中への分解細菌群集積の様相を評価する。各有機化学物質に加え、主要なメタン生成細菌の特異的な基質(酢酸、水素/二酸化炭素)、予測される中間代謝物質(アセトン、プロピオン酸)を基質に用いる事で、有機化学物質の各分解段階に関わるメタン化速度を評価し、メタン発酵における律速段階を把握する。また、UASBリアクターの運転期間において保持汚泥を採取し、真正細菌および古細菌の16S rRNA遺伝子を標的とした解析を行う事で、汚泥中に存在する主要な細菌群の同定を行い、処理特性や物性などとの関係性評価を行う。

課題代表者

珠坪 一晃

  • 地域環境保全領域
  • 副領域長
  • 博士(工学) エネルギー・環境工学
  • 工学,土木工学,生物学
portrait

担当者

  • 竹村 泰幸