ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

イオン性化学物質の生物濃縮特性の解明と予測手法の開発(令和 2年度)
Elucidation and development of prediction methods of the bioconcentration characteristics of ionic chemicals

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
2022CD010
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
汚染質動態,モデリング,イオン性化合物,生物濃縮,代謝,結合
キーワード(英語)
pollutant behavior in environment,modeling,ionic chemicals,bioconcentration,metabolism,binding

研究概要

イオン性物質の生物濃縮の予測精度の向上は世界的な課題であり、新たな予測手法の開発が求められている。本研究ではイオン性物質の生物濃縮について、分子レベルでの科学的根拠に基づいた予測手法を開発することを目的とする。そのために、暴露実験、タンパク結合・代謝実験、ドッキングシミュレーションを行い、イオン性物質の生物濃縮特性を明らかにする。生物濃縮特性を特徴づけると考えられるタンパク結合定数、代謝速度定数を説明変数とし、人工知能を適用して多種多様なイオン性物質に対する高精度な予測手法を開発する。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

1 生物濃縮特性の解明
(a)暴露実験・野外調査(2020年度〜2022年度)
生物濃縮を支配するパラメータである動力学パラメーターおよび生理学的パラメータを実験的に明らかにする。生分解性の低い物質、生物濃縮が疑われる物質を対象として暴露実験を行う。また、2の網羅的探索から高濃縮性と予想された物質群を対象に暴露実験、野外調査を行い、見落とされた有害物質となっていないか実態を明らかにする。
(b)タンパク結合実験・ドッキングシミュレーション(2020〜2021年度)
ヒトアルブミンをモデルタンパクとして結合実験を行い(1年目)、その後、ニジマスの血液からアルブミンを精製、分取して結合実験を行い、タンパク結合定数を明らかにする(2年目)。タンパクとの結合特性を解明するために、まずはヒトのアルブミン等を対象にドッキングシミュレーションを行い、結合ポケット、アミノ酸残基との結合エネルギーなど物理化学的な特性を明らかにする(1年目)。つぎに、ニジマスのアルブミンをアミノ酸配列に基づいてPC上に再現し、ドッキングシミュレーションを行う(2年目)。
(c)肝S9を用いた代謝実験(2021年度〜2022年度)
イオン性物質の代謝速度定数や代謝物を明らかにするために、ニジマス肝S9を用いて代謝実験を実施する。また、肝臓におけるイオン性物質の代謝速度を科学的に説明するため、各種薬物代謝酵素(CYP1A等)と対象物質との親和性(結合エネルギー)についてドッキングシミュレーションを行う。イオン性物質の代謝速度を生化学的・物理化学的な側面から解き明かし、結合エネルギーなどを変数として代謝速度定数を予測する新たな手法を開発する。
2 イオン性化学物質の生物濃縮予測手法の開発(2020年度〜2022年度)
イオン性物質に対する高精度の生物濃縮予測手法を確立するために、別に実施する暴露実験の結果と文献調査から生物濃縮係数および動力学パラメーターをとりまとめ、解析用のデータセットを作成する(1、2年目)。このデータセットを用いて機械学習を行い、高精度の予測手法を開発する(3年目)。さらに、開発した予測手法をもとに医薬品や界面活性剤など100物質程度を対象にシミュレーションを行い、高濃縮性が予想される物質を抽出する。高濃縮性として抽出された物質を対象に暴露実験・野外調査を行い、濃縮性が高いか否かを検証し、生態リスクを評価する。

今年度の研究概要

主として、イオン性化学物質の生物濃縮予測手法の開発を担当し、イオン性物質に対する高精度の生物濃縮予測手法を確立するために、本研究で別に実施する暴露実験の結果と文献調査とから、生物濃縮係数、取り込み・排泄速度定数、代謝速度定数をとりまとめ、解析用のデータセット作成を進める。

外部との連携

研究代表者:熊本県立大学、小林 淳

関連する研究課題

課題代表者

櫻井 健郎

  • 環境リスク・健康領域
    リスク管理戦略研究室
  • 室長(研究)
  • 博士(工学)
  • 工学,化学
portrait