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気候変動影響検出を目的としたモニタリング体制の構築(令和 2年度)
Establishment of a monitoring network for climate change impact detection

予算区分
AZ 気候変動適応
研究課題コード
2022AZ001
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
高山帯,定点カメラ
キーワード(英語)
alpine zone,time lapse camera

研究概要

我が国は亜熱帯から亜寒帯に属する多様な自然環境を有す。それぞれの自然環境において、たとえば高山植物の衰退、湖沼における結氷頻度の低下と生態系の変化など、地域・地方固有の気候変動影響の観測事例が報告されているほか、ライチョウなど高標高域の限られた領域に孤立した種は生息環境の変化により絶滅が危惧されている。このように各地方では気候変動の影響とされる様々な変化が生じており、モニタリング体制の整備が喫緊の課題である。しかしながら生態系や自然環境のモニタリングは直接踏査による観測が主な方法であり、地環研にとっては多大な労力と時間を要していることに加え、これまで地方独自のツールや方法でモニタリングが行われてきたため、地域間での比較を困難なものとしてきた。よって、自律型かつ簡便・安価な観測手段と統一的な解析手法による広域・多点展開が必要である。そこで、本研究では長野県・静岡県における高山帯や高標高域の湖沼の生態系を対象として、画像計測による変化抽出と気象観測を開始し、生態系応答と変化メカニズムの解明を第一の目的とする。特に高標高地帯は気象観測の空白域であり、既存の気象観測点による測定値の外挿では限界があるため、現場レベルでの気象観測を行う。第二の目的として、画像計測と気象観測を気候変動の影響検出に必要最低限な観測項目として、これらを組み合わせた観測・解析方法を手順化し、他地域での利用を可能とする。本研究では湖沼の氷結、水生植物の異常繁殖など様々な観測対象を対象とすることから、機械学習などの新しいアプローチを取り入れた新たな解析手法を開発する。第三の目的として現地の公共団体等に協力を呼びかけ、結氷記録やフィルム写真など死蔵されている過去の記録を発掘し、長期間の変動抽出を行う。フィルム写真はデジタル化した後、最新の写真との比較を行い、変化抽出を行う。そのため、旧時期写真の撮影位置の特定と新旧写真の合わせ込み、変化箇所の検出を効率的に行うため機械学習アプローチを取り入れる。調査地は多様な気候条件が揃う静岡県・長野県における湖沼や高山帯とし、12ヶ所の観測を行う。特に両県をまたぐ南アルプスは絶滅危惧種のライチョウの生息南限域でもあり、早急なモニタリング体制の構築が必要とされる。最終的には他の自治体などが容易に導入できるモニタリング方法の確立、簡便な画像解析ソフトの公開、更に過去記録の発掘による長期変動の把握を組み合わせ、地域スケールでの気候変動影響モニタリングの手順化を目指す。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

・国立環境研究所は定点カメラの開発・設置および画像データの収集と解析を担当する。
・長野県環境保全研究所は長野県側の観測機材設置に係る許認可申請、気象観測の実施及びカメラメンテナンス作業ならびに長野、静岡両県の植物調査を担当する。
・静岡県環境衛生科学研究所は静岡県側の観測機材設置に係る許認可申請、気象観測の実施及びカメラメンテナンス作業を担当する。
・モニタリング結果の相互比較・手法の評価、モニタリング手順の取り纏めは3機関が共同で行う。
現在想定している観測候補地は、諏訪湖、仙丈ヶ岳、鹿嶺高原、天城山・千枚岳・茶臼岳の周辺地域等である。

今年度の研究概要

・観測候補地の現地確認・機材設置場所の決定及び機材設置にかかる許認可申請
・植生を始めとした生態系の情報収集及び現地予備調査
・観測機材の準備、試験運用の開始
・画像解析ソフトウェア(変化抽出)の基本設計

外部との連携

長野県環境保全研究所
静岡県環境衛生科学研究所

課題代表者

小熊 宏之

  • 生物多様性領域
    生物多様性保全計画研究室
  • 室長(研究)
  • 工学
  • 農学
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