ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

指定廃棄物の放射性Cs適性制御に資する溶出促進と嫌気性リーチングシステムの開発(令和 3年度)
Development of anaerobic bioleaching system to promote the elution of radioactive cesium in the radioactively contaminated solid wastes

予算区分
若手研究
研究課題コード
2122CD001
開始/終了年度
2021~2022年
キーワード(日本語)
指定廃棄物,セシウム,嫌気性処理,バイオリーチング
キーワード(英語)
Designated agricultural waste,Cesium,Anaerobic digestion,Bioleaching

研究概要

本研究では、福島第一原発放射性物質漏洩事故により放射性セシウムに汚染された牧草を対象として、被 災地における発生した農林系廃棄物(牧草)に対する処理性能を向上させる課題である。申請者らは新規プロセスを提案し、バイオリーチング技術を嫌気性処理システムへの導入によって、事故由来の牧草に富む放射性セシウムを溶出・除去するとともに、固形廃棄物の減量化とエネルギー回収が両立できる技術の開発を目的とする。また、連続実験等の手段を用い、事故由来の汚染牧草に対する適切な前処理技術を確立し、嫌気性バイオリーチングプロセスに導入によって、放射性セシウムの溶出性能およびバイオガスの回収効率の両方を向上させることを目指す。応募課題は、第4期中長期計画における環境回復研究プログラムに放射性物質に汚染された廃棄物等の減容化・中間貯蔵技術等の確立の課題に属し、当所研究計画との整合性があることを考えている。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

本研究の目的は連続実験等の手段を用い、事故由来の汚染牧草に対する適切な前処理技術を確立し、新たに提案された嫌気性バイオリーチングプロセスの導入によって、放射性セシウムの溶出性能とバイオエネルギーの回収効率の両方を向上させることである。
嫌気性メタン発酵技術は有機性固形物や廃水処理領域に成熟な技術である。バイオリーチングは最初的に難処理鉱を対象とし、化学的な方法で貴金属を抽出する目的に応じて開発された技術である。近年、単純なバイオリーチングを用いて放射性金属の抽出に関する研究も益々多く報告されているが、それを前処理・メタン発酵技術に融合し、事故由来の農林業系廃棄物に含有する放射性セシウムのバイオリーチング性能の促進に関する研究がまだ行われていない。嫌気性プロセスにおいて、前処理技術の導入によって難処理廃棄物の生分解性と金属溶出性の両方が促進させる研究を遂行するためには、研究者は生物発酵工学と化学工学等の研究に長期的な実践経験が不可欠である。研究成果の実用化によって、事故由来の指定廃棄物の無害化・減容化等技術の確立が推進できる。
このようなプロセスの確立には次のように着眼する。(1). 外力場を加え、細胞壁の破砕により処理対象を均質化し、細胞内の生体分子を放出させる。但し、プロセスにおけるエネルギー収支を全般的に評価することは重要である;(2). SEM-EDS、RAMAN分析等によって、セシウムイオンが植物性細胞壁の結晶に配位・結合した錯体を同定する。熱アルカリ処理手段により植物細胞壁の主成分であるリグニンとセルロースの分子構造を変え、アルカリ金属に属するセシウムイオンをカリウムやナトリウムイオンに置換し、前処理技術によって放射性セシウムの溶出を促進する可能性について評価する;(3).新規プロセスの経済性に対するLCA分析を行う。

今年度の研究概要

R3年度  前処理方法の確立:前処理は汚染牧草に放射性セシウム挙動に与える影響の解明
植物性バイオマスの嫌気性処理は、一般的に前処理によって生分解性の低い細胞壁を破砕する必要がある。これはバイオマスの糖化という。糖化前処理には物理的および化学的な方法がよく使われている。本研究においては、物理法に属する粉砕と超音波破砕、及び化学法に代表的な熱アルカリ法を選択し、効率的にバイオマスの糖化を行うと同時に、非結合型セシウムの溶出性能を向上させることを目標とし、汚染牧草の前処理実験を行う。R3年度に研究内容の設定は次である。(1).連続培養の方法を用いて種微生物叢を汚染牧草が利用できる方向に馴致する;(2).化学状態分析を用いて芳香族高分子(リグニン等)と長鎖セルロースの結晶に結合したセシウムが細胞壁中の分布特性を把握する;(3).処理プロセスに微生物叢の代謝産物の物質組成を分析し、各前処理方法によって放射性セシウムの溶出挙動を明らかにする;(4).前処理された汚染牧草を基質として当嫌気性プロセスに投入し、5ヶ月以上に連続実験を行う。上に述べた実験結果を総合し、汚染牧草の嫌気性バイオリーチングに最適な前処理手法を選定する。

外部との連携

東北大学 工学研究科 環境保全工学研究室

課題代表者

WU Jiang

  • 資源循環領域
    資源循環基盤技術研究室
  • 特別研究員
  • 工学博士
  • 工学,土木工学,生化学
portrait

担当者